美崎「アプリの紹介は基本的にしていません」 |
遠藤諭(以下遠藤) 本って一番読んでほしいところってあるじゃないですか? (『iPhoneバカ』、『iPadバカ』を手に取りながら)これで一番言いたかったことってなんですか?
美崎栄一郎(以下美崎) iPadってなんに使えるかわからない、電子書籍の端末なんですか? ってよく聞かれるんですけど、実際にはほかの用途のほうが便利ですよね。それで、実際にこんな感じで使えますよってことをいろいろ書いているんです。アプリの紹介は基本的にしていません。
遠藤 いまだとアクティビティー・ベースド・コンピューティングとか、アプリケーションからアクティビティーみたいな流れがあると言われていますけど、要はアプリケーション志向ではなくて、気持ち志向とか、やりたい志向みたいな感じですか?
美崎 やりたいこと志向で書いてますね。iPadを持っていない人でも読めないといけないし、iPadを持っている人もおもしろいと思ってもらわないといけないから、そのためにはアプリの紹介だと弱いんです。
遠藤 iPadを持ってない人がいきなりアプリの話をされても、ちょっと……みたいな感じですよね。
美崎 そうですね。これだけ読んだらとりあえずiPadでこんなことできるってウンチクも語れるように書いてます。
遠藤「会議にメンバーがひとり増えたようなもの」 |
遠藤 あ、うちの(アスキー総研の)『MCS Elements』が紹介されている。買ってくれたの?
美崎 自腹で買って、自分でおもしろいなと思ったものだけ紹介しています。
遠藤 ありがとうございます、紹介していただいて。
美崎 MCS ElementsにiPhoneユーザーの分布が出ていたんですね。iPhoneユーザーは都市部に多くて、さらにどこの都市に多いということまでデータとして、しかもクロスで拾えるので、この本(iPhoneバカ)を売るときに、すさまじくよかったです。
遠藤 せっかく本の紹介から入ったのに、うちのアプリの紹介みたいになって恐縮ですけど、MCS Elemntsはもともと『MCS(メディア&コンテンツ・サーベイ)』という商品で、1万人規模の調査データで、うん十万円するんですよ。ある日、UEI(ユビキタスエンターテインメント)の清水さんって名物社長が、いきなり電話かけてきて「MCSをアプリにできないか?」って言われたんです。そのとき僕は「えっ?」とすぐには理解しなかったんだけど、出してみたら相当に売れているわけですよ。iPadが持っているタッチとスクロールという操作で、データベースと人間の間にあったギャップをなくすことが何を意味するかというのを、形にして見せたわけなんですね。有名な広告プランナーの方がMCS Elementsを“データエンターテイメント”って言ってくれたんだけど、その業界を経験して体感で身に付くような数字が触っているうちに出てきちゃうわけです。たとえばこれって、会議にメンバーがひとり増えたようなもので、会議の決定的なデータミスや、宿題が発生して案件が数週間先送りになるようなことが解消されるんですね。できれば本体を買ってほしいんですけど。60万円ぐらいするんだけど(笑)。
美崎 60万円のは会社のお金でなら買えるんですけど(笑)。たとえば私の本を作るときのように、60万円使ったら印税が全部飛んじゃうってときに、1万円以下(7400円)のMCS Elementsでも、いろんな分析ができるわけです。
遠藤 iPad版に入っているのはホント一部なんだけどなぁ(笑)。
美崎「いかに文字を打たないで済ますかがコンセプト」 |
遠藤 『iPhoneバカ』のコンセプトは?
美崎 僕はiPhoneで文字を打つのが大嫌いなので、いかに文字を打たないで済ますかということをメインに書いていますね。できるだけタップとか連携とかでいくという感じで。ただ、Siriについてはショートワードを使えば使えるけど、もうちょっと待ったほうがいいから、一応こんなものもあるよ……までで、実際の活用術までは書いてないです。だけどSiriは何度もタップしたり、ボタンを押さなくてもいいので、1年後に日本語版が出たら便利でしょうね。
遠藤 文字入力させないというのは非常にいいコンセプトですね。文字を入れさせないというのは、ある種iPhoneのすごい基本的なハートに通じていると思うんですよね。人間と機械の間にはまだなにかがあって、そのしこりを音声でやるのか、表情でやるのか、それとも唇を読むようになるのかはわからないんだけども、そういう方向に行くのはもう当然なので、そういう意味で文字を入れないで過ごそうよというのはめちゃめちゃ正しい。いいねボタンとか象徴的ですけど、そのうちボタンが10個ぐらいあって、その組み合わせだけでメッセージできるようになるかもしれないですよね。
美崎「iPadバカってユニークワードでだれも使っていない」 |
遠藤 “バカ”ってつけたのは、“空手バカ一代”みたいになにか深い意味があるんですか?
美崎 “iPadバカ”って、ユニークワードでだれも使っていないんです。マーケティング的な考え方なんですけど、iPadの本だと“iPadなんとか仕事術”とか、“iPad情報なんとか”という本が多いんですけど、結局なんの本なのかよくわからないんですよね。
遠藤 “バカ”のほうがわからないんじゃないですか?
美崎 僕のいままでの本って結構タイトルが長いのが多くて、長いタイトルの本って間違えられやすかったり、つぶやくのにめんどうじゃないですか。“iPadバカ”なら、“ア”を打って“iPad”まで出てきて、“バ”を打って“バカ”まで出てくるし、バズも起こりやすかったりするので。
遠藤 いまや広告コピーも長いものはダメで、「角ハイボール」みたいな短くてコピーなのかなんなのかわからないほうが伝達するという時代だから、そういう意味ではすごい妥当ですよね。でも“バカ”には“バカ”なりに込めた意味ってあるんじゃないですか?
美崎 徹底的に使い倒したって人が書いたという意味と、あと、ジョブズが言っていた「Stay hungry,stay foolish」というのにかけて、それをそのまま“バカ”ってワードに込めてました。なので『iPhoneバカ』のあとがきには、その話を書いてます。
美崎「マイ避難訓練をiPhoneでやる」 |
美崎 震災をまたいで、震災のときにiPhoneってライフラインになったので、一番最後の章では緊急時にiPhoneをどうやって使うのかということを書きました。
遠藤 普段から使わないとダメだよね。
美崎 なので自分で1回避難訓練しようって。マイ避難訓練をiPhoneでやるっていうことを書いたんです。地震のときでもスカイプからメタルの電話にはかけられるんですね。どんな場所でもだいたいかけられるんです。ただスカイプをやったことないと緊急時に使えないので、普段に全部1回やっておこう、避難訓練しておこうということを書いているんです。
遠藤「パーティーに出かけるときのサブマシンがiPhone」 |
遠藤 タブレットというかiPadは持ち歩いているんですか?
美崎 普段はスマホだけですけど、大きい画面で見たいときはタブレットです。いつもカバンのなかにタブレットは入っているんですが、打ち合わせで見せるときはタブレットで、スケジュールとかを確認するときはiPhoneですると。
遠藤 全然使い方が違うわけですね。
美崎 同じデータをiPhoneとiPadのどちらでも見られるわけですが、それはサイズによってメリット、デメリット必ずあるので。
遠藤 iPhone、iPadの使い分けの話は僕も同じですよ。要するにiPadはプレゼン性が出てきたときかな。iPadでクリエイティビティーと言いたいところだけど、残念ながら僕はまだパソコンでやっていて。でも最近講演行くときはiPadしか持って行かないんですよ。で、iPhoneはどういう立場にあるかというと、(7インチAndroidタブレットを持ちながら)これをほとんどつねに持ち歩いていて、パーティーとかこれを持ち出すと失礼な場合とか、休日でこれすら持ちたくないときがiPhoneなんです。
美崎 そこで決まるって感じですよね。たとえば子どもの野球の試合に行くのはiPhoneしか持って行かないわけで。
遠藤 最低限のことが絶対できるのがスマホのすごいところですよね。やっぱりパソコンのほうが便利でも、最悪スマホでも原稿書けるわけじゃない。最低保証してくれるのがスマホ。
美崎「“ソニタブバカ”を出すんですけど(笑)」 |
編集部 美崎さんがAndoridを使っているのが意外でした。
美崎 iPadバカを書いているから、ほかのタブレットと比べてどうですか? とか聞かれるわけですよ。それで自分でも試してみないといけないと、『GALAPAGOS』を買い、ソニタブ(『Sony Tablet』)を買い……。使ってみて結局グーグルのサービスを使うなら、Androidのほうが便利だなと思ったけど、カスタマイズすればiPhoneでもiPadでも同じサービスは使えるので、結局どっちがどうかというのはやり方と、どういうニーズで使うのかによるなと思いましたね。
遠藤 そんなこと言って、来年“Androidバカ”って本、出すんじゃないの?
美崎 “ソニタブバカ”を出すんですけど(笑)。
遠藤 出すんだ!(笑)
美崎 どうしてかって言うと、iPhoneとかiPadだけじゃなくて、日本のメーカーさんにもがんばってほしいんですよね。
遠藤 まあねえ。このままいくと、アマゾン、アップル、グーグルで終わっちゃいかねないですからね。
美崎 ソニータブレットはまあ賛否ありますけど、いままでの国内の端末よりかは全然いいレベルに来ているので、どうやって使うのかということがわかれば使う人も増えてくるし。それとやっぱり競合が出てこないとおもしろくないですからね。iPhoneが新しいOSで一番よくなったのは、ニュルッと通知センターが出てくるようになったことですが、それはAndroidのスマホが出てきたからですから。
遠藤 まだスマートフォンもタブレットも、まるで進化の途中なんですよね。iPhoneのシンプルでわかりやすいところ、Androidはちょっとマニアックだけれど少しずつ洗練されてきて、それぞれ指向している方向性も少し違っている。そのあたり、すべて「バカ」のシリーズで理解できると楽しそうですね。
iPhoneバカ 1800アプリためした男のすごい活用術 |
iPhoneバカ 1800アプリためした男のすごい活用術
著者:美崎栄一郎
出版社:アスコム
価格:1365円
発売日:11月28日
書籍公式サイト
-
1,365円
-
1,365円
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります