10月28日、NVIDIAは、3Dゲームで使われている高画質テクノロジーについてのカンファレンスを行なった。カンファレンスでは、『Crysis2』や『Battlefield 3』など、DirectX11対応ゲームを例に、実際にゲームで採用されている新技術を解説した。
物体のディテールを細かく表現する“Tessellation+Displacement Mapping”
この技術は、3Dゲームに登場する立体図形の面をより細分化し、そこに凹凸を加えるもの。いままで、単純な立体にテクスチャーを貼り付けて表現していたような物体でも、より立体感があるリアルな表現ができる。Crysys2では岩肌など実物でも凹凸が多い物体に使用している。
使用前 |
使用後 |
岩肌の表現にも採用 |
凹凸のある物体を表現する“Parallax Occlusion Mapping”
『視差遮蔽マッピング』とも呼ばれ、凹凸のある物体で表面の“見える”部分と、凹凸に隠れて“見えない”部分を描きわける。たとえば、Crysis2で出てくる石畳や車のワダチなど、細かくボコボコとした地面が続くような場合に用いられる。
Crysis2 DirectX9版 |
Crysis2 DirectX11版 |
DirectX9版では、平らな地面にワダチのようなテクスチャーが貼り付けられているだけだが、DirectX11版では、本物のようにボコボコとした凹凸ができている。
物体の映り込み表現“Real-Time Local Reflections”
金属など光沢がある物体に、ほかの物体から発する光を映り込ませる技術。左側の金属の壁に右側のエイリアンの赤い目や身体の輪郭がぼんやりと映り込んでいるのがわかる。
壁に物体の光が反射 |
映画のようなフォーカスボケ表現“Custom Shape Based Bokeh DOF”
カメラのフォーカスを変えることで、焦点を当てている人物や物体以外はボケさせて、視覚的に物語の主役を印象づける手法。映画のような臨場感を堪能できる。
映画のようなボケ表現 |
海面や水しぶきがリアルな“improved Water Rendering/Interactive Water”
海面の波の動きや光の反射をリアルに表現するのが“improved Water Rendering”。従来の海面の表現に比べると格段にリアルさが違う。
リアルな海面の動き |
水面に物を投げて起こる水しぶきや水面の荒れを表現するのが“Interactive Water”。水しぶきがどのように跳ねるのかもGPUの演算で作り出す。
水しぶきや水面の荒れも自然 |
物体との距離によって影の表現を変える“Realistic Shadows with Variable Penumbra”
物体と投影された影の距離によって影のボケ具合を調整する技術。物体の影は、投影された影と物体の距離が近いと輪郭がハッキリし、逆に遠いと輪郭がボケる。柵の影の下部と上部ではボケ方に違いがいがあるのがわかる。
影のボケ具合を調節 |
ほか、空間に奥行きを出す“Contact Shadows”や、カメラワークが速い状態で周囲の物体がブレて見える“HDR Motion Blur”などCrysis2に搭載された3D技術が紹介された。
3Dゲームがさらにリアルになる超注目の新技術“Enlighten”
3Dゲームの空間において、物体をよりリアルに表現するうえで、重要な要素のひとつが光の当て方、つまり“ライティング”だ。太陽光のような空間すべてを照らす広域な光源、“Global Illumination”と呼ばれる光の処理は3Dゲームでは演算量が大きすぎてリアルタイムに計算するのは難しい。そのため、空間にある物体すべてにスポットライトに照らされたような濃い影ができていた。しかし、“Enlighten”という技術を使うことで、物体に反射した光が別な物体を照らすような処理をリアルタイムで行なえるようになる。
肉眼に近い影の自然な暗さ |
たとえば、このコンテナが積み上がっている空間は、従来であれば、右のような単一方向からのスポット光で影ができているだけだった。しかし、“Enlighten”を使うことで、左のように黄色コンテナに当たった光がさらに隣の緑色のコンテナの影を照らして若干明るく照らす処理をリアルタイムでできるようになる。
“Enlighten”がゲームで使われるようになれば、3Dゲーム空間全体が実物に近い見た目になることだろう。もし、“実物と見分けがつかない3Dゲーム空間”というものが登場するならば、この“Enlighten”はそれを支える基幹技術となるに違いない。
“Enlighten”の演算処理はライトの伝播計算にCUDAを使用することで、マルチコアCPUの5倍の性能が出るという。また、GPUで処理することで、CPUを介さずにCUDAコアからそのままGPUへ演算結果を伝えられるため処理効率もいい。さらに“OptiX”を使うことで、シーンのロード時間を短縮できるなど、NVIDIAが持つGPUでの演算技術と“Enlighten”には高い親和性があるとのこと。
まとめ
GPUの進化は留まるところを知らず、より実物に近い3Dグラフィック表現がクリエイターの手間をかけずにつくれるようになってきた。とはいえ、最前線で活躍するゲーム開発者は、未だ“自分たちのつくりたいものにハードウェアが追いついていない”という感触をもっている。その需要に応えるべく、より表現力の高い3D技術はこれからも発展していくだろう。
Crysis2やBattlefield 3といったDirectX11で動くゲームは、従来の3Dゲームとは物体のリアルさがワンランク違う。本記事で触れたような技術が使われていることを頭に入れてプレーすると、すごさが実感できるのではないだろうか。
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