『Aシリーズ』は、1月に投入した『Eシリーズ』に次ぐ第2弾APUで、AMDのStarシリーズプロセッサーと、RADEON HD5600相当のGPUを1チップに統合した製品となる。
AMDは同製品をまずノートPC市場向けに投入。『Aシリーズ』を搭載したノートブックPCは500~999ドル(日本円で4万円台後半から8万円台前半)のメインストリーム市場と呼ばれる価格帯の製品になるという。本レポートでは、AMDの製品説明会を元に、『Aシリーズ』の特徴について紹介していきたい。
●8、6、4という競合他社の7、5、3の数字をひとつずつ進めたサブブランド
『Aシリーズ』は、ノートPC向けに以下のラインアップを用意している。
モデル ナンバー | 製造 プロセス ルール | TDP | CPU コア 数 | CPUクロック (最大/ベース) | L2 キャッシュ | 最大メモリー設定 |
A8-3530MX | 32nm | 45W | 4 | 2.8GHz/1.9GHz | 4MB | DDR3-1600/DDR3L-1333 |
A8-3510MX | 32nm | 45W | 4 | 2.5GHz/1.8GHz | 4MB | DDR3-1600/DDR3L-1333 |
A8-3500M | 32nm | 35W | 4 | 2.4GHz/1.6GHz | 4MB | DDR3-1600/DDR3L-1333 |
A6-3410MX | 32nm | 45W | 4 | 2.3GHz/1.6GHz | 4MB | DDR3-1600/DDR3L-1333 |
A6-3400M | 32nm | 35W | 4 | 2.3GHz/1.4GHz | 4MB | DDR3-1600/DDR3L-1333 |
A4-3310MX | 32nm | 45W | 2 | 2.5GHz/2.1GHz | 2MB | DDR3-1333/DDR3L-1333 |
A4-3300M | 32nm | 35W | 2 | 2.5GHz/1.9GHz | 2MB | DDR3-1333/DDR3L-1333 |
モデル ナンバー | 内蔵GPU | RADEONコア数/ SIMDエンジン数 | GPUクロック |
A8-3530MX | RADEON HD6620G | 400/5 | 444MHz |
A8-3510MX | RADEON HD6620G | 400/5 | 444MHz |
A8-3500M | RADEON HD6620G | 400/5 | 444MHz |
A6-3410MX | RADEON HD6520G | 320/4 | 400MHz |
A6-3400M | RADEON HD6520G | 320/4 | 400MHz |
A4-3310MX | RADEON HD6480G | 240/3 | 444MHz |
A4-3300M | RADEON HD6480G | 240/3 | 444MHz |
今回発表された『Aシリーズ』はノートPC向けのみだが、AMDはデスクトップPC向けのラインアップも計画していることを明らかにしており、近く発表される可能性が高い。
AMDのジョン・テイラー氏によれば、AMDはノートPC向けのラインアップとしてA8、A6、A4という3つのシリーズを用意しているという。Intelの第2世代Coreプロセッサ・ファミリーで言えば、Core i7、Core i5、Core i3に相当する製品だと考えるとわかりやすいだろう(8、6、4がそれぞれ7、5、3をひとつずつ上げた数字であることに注目)。
実際にはA6の価格でCore i3と競合!? |
原稿執筆時点ではプロセッサー単体の価格帯はわかっていないが、AMDではノートPC全体の価格で499~599ドル(日本で4万円~5万円程度)の価格帯がA4、599-699ドル(日本円で5~6万円程度)の価格帯がA6、699ドル以上(日本円で6万円以上)の価格帯がA8という想定をしているとのことだった。
ただし、この価格分けは米国市場のもので、デジタルチューナーなどの付加機能が多数実装されている日本のノートPCの場合にはもう少し価格帯が上がってしまうので注意が必要だ。
dGPUとiGPUの組み合わせでグラフィックの名前が変わる |
●DirectX11/OpenCLに対応した単体GPU並の3D性能を持つGPU内蔵が最大の特徴
『Aシリーズ』の特徴をまとめると以下のようになる。
①32nmプロセスルールを採用したことでGPUを統合できた
②クアッドコアCPU
③内蔵GPUはdGPUのメインストリーム(RADEON HD5600クラス)と同等
④DirectX11/OpenCLに対応
AMDの競合となるIntelの主力製品である第2世代Coreプロセッサ・ファミリーと比較すると、特に③と④の点で、Intelを大きく上回っている。
実際に公開されたベンチマーク結果は以下のようになっており、いずれの結果でも内蔵GPUの性能はIntelの内蔵GPUを上回っており、この点が『Aシリーズ』の大きなアドバンテージになっていることがわかる。
Intel内蔵GPUとの比較では大きく上回る |
CPU処理が多いPCMark Vantageでは下回っている |
『DiRT3』では平均2倍の3D性能をマーク |
さらに、Intelの内蔵GPUが対応していないDirectX11やOpenCL(CPUによる演算ではIntelも対応している)に対応している点は見逃せない。ただし、CPUで処理するベンチマークプログラムであるPCMark Vantageでの結果がIntelの製品よりも劣っていることは、AMDが公表したベンチマーク結果でも見て取れる。
つまり、CPUそのものの性能はIntelのクアッドコアに比べると劣っている可能性が高い。この点は留意しておく必要があるだろう。
しかしながら、最近3DゲームではDirectX11に対応しているタイトルが増えつつある。DirectX11対応のタイトルではテッセレーションなどの手法に対応しており、少ない負荷でより高い表示品質を実現することができる。また、OpenCLに対応したビデオ変換ソフトウェアなども増えつつあり、内蔵GPUを利用してビデオのトランスコードなどが可能。
これらの特徴をCore i搭載ノートPCで実現するには、GeForceなどのdGPUを搭載したノートPCを手に入れる必要があり、かつdGPUの搭載は消費電力の増大を意味する。そうした意味で、dGPUを搭載しなくてもDirectX11/OpenCLに対応し、かつ高い3D描画性能を手に入れられるというバランスの良さが『Aシリーズ』を搭載したノートPCの大きな魅力だ。(後編に続く)
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