RocketHybrid 1220 |
●メーカー:HighPoint(販売:ディラック)
●URL:http://www.dirac.co.jp/highpoint/rh122x/rh122x.html
●実売価格:9000円前後
当たり前の話だが、SSDの最大の魅力はHDDにはない高速なアクセス速度。一方、HDDは2TBで6000円前後という圧倒的なGB単価の良さがSSDにはない魅力だ。HDDの大容量とSSDの速度を併せ持つドライブがあったら……。そんな夢を叶えてくれる魔法のインターフェースカード、それが『RocketHybrid 1220』だ。
『RocketHybrid 1220』はPCIエクスプレス×1接続でSATA3ポート(6Gbps)が2つ。ここにSSDとHDDを接続して、SSDの速度とHDDの大容量という特性をもつ1ドライブの“ハイブリッドドライブ”を構築できる。
ハイブリッドドライブとは、フラッシュメモリーをキャッシュとして使うことでHDDを高速化するドライブ。最近では、昨年7月シーゲートから登場した、500GBのHDD容量と4GBのフラッシュメモリーを搭載した『Momentus XT』(2.5インチ、SATA2)が記憶に新しい。このように一般的にはひとつのドライブにHDDとフラッシュメモリーを2つ搭載するのが“ハイブリッドドライブ”だが、本製品はフラッシュメモリー部分をSATA接続のSSDを使用し、ハイブリッドドライブにしようというコンセプトだ。
製品の内容物はこちら |
本体のほかにSATA3対応のSATAケーブル2本とドライバーCD、スリムPCユーザーにはうれしいロープロファイル用ブラケットを同梱する。ちなみに、『RocketHybrid 1220』は内部用SATAが2ポートだが、姉妹品『RocketHybrid 1222』(9000円前後)は外部用eSATAが2ポート。ドライブが内蔵できない場合は外付けという選択肢もある。
カードのBIOSが起動したらセットアップ開始 |
本製品はRAIDカードと同じようにBIOSが搭載されているため、マザーのBIOS起動後に、カード自体のBIOSの割り込みがある。今回はSSDにインテル『SSD 510』(120GB)、HDDは日立GSTのSATA3対応2TBドライブ『Deskstar 7K3000』(HDS723020BLA642)を使用した。
カードのBIOSメニューでSSDとHDDを選択 |
ハイブリッドドライブの設定はRAIDカードでRAIDアレイを組むように、ドライブをカーソルキーで選択。
チップはRAIDチップでおなじみのMarvell製 |
搭載チップはRAIDチップではメジャーなMarvell製で、本製品用に開発された特殊なチップのようだ。ここでポイントとなるのが、アレイの組み方に“Safe”モードと“Capacity”モードという2つの設定がある点。“Safe”モードではハイブリッドドライブの容量はHDDと同じ容量。“Capacity”モードでは、ハイブリッドドライブの容量はSDDとHDDの容量の合算となる。
“Safe”モードはHDD容量が全体容量となる |
“Capacity”モードではSSD+HDDの容量が全体容量 |
“Capacity”モードを選択すると、自動的にAHCI動作に設定される。マザーのBIOSからもAHCI動作の起動ドライブ候補として確認できる。
“Capacity”モードでは自動でAHCIモードで動作 |
マザーBIOSからもAHCI動作を確認 |
組んだドライブはマザーのBIOSからOSをインストールする起動ドライブとして選択できる。ドライバーは不要で、ウィンドウズ7(64ビット)のインストール時にそのままドライブとして認識できた。
デバイスマネージャーでも確認 |
“Capacity”モードで組んだハイブリッドドライブはデバイスマネージャーからは“MARVELL HyperDuo 0 ATA Drive”とMarvell~と表示されるのもRAIDカードと同じふるまいだ。
では、実際にどれだけの性能が出るのか、起動ドライブ以外に設定して『CrystalDiskMark3.0』(64ビット版)を回してみた。
『Deskstar 7K3000』(2TB)単体 |
HDD単位では順次読み込み速度毎秒160MB、順次書き込み速度毎秒141MBを記録。HDDはランダムアクセス速度が毎秒約50MBほどと遅い。
“Capacity”モード『Deskstar 7K3000』+『SSD 510』 |
まずは“Capacity”モードで計測したところ、HDD単体時と比べて劇的に高速化した。しかし、『SSD 510』単体の性能と比べると順次読み込み速度で毎秒90MBほど速度が遅い。ほか、順次書き込み速度は毎秒50MB、ランダム読み込み速度は毎秒30MB、書き込み速度は毎秒50MBほど遅くなった。
“Safe”モード『Deskstar 7K3000』+『SSD 510』 |
“Safe”モードで組んだ場合は、順次書き込み速度以外はある程度HDD単体時よりも速くなったが、“Capacity”モードよりもだいぶ遅い。“Safe”モードでは、速度は振るわない代わりに、キャッシュにしているSSDが壊れた場合でもHDD内のデータは保持される。“Capacity”モードは速度が出るのだが、SSDが壊れた場合にはHDD内のデータまで失ってしまう。ちょうど、RAIDのミラーリングとストライピングの関係に似ている。恐らくデータ処理も“Capacity”モードでは、SSDとHDDに分散書き込みと分散読み込みをしているため速度を出している代わりに、アレイが壊れるとデータも失われるのではないかと推察する。対して“Safe”モードではSSDをキャッシュとしてのみ利用しているため、データが保持できるのではないかと思われる。
ところで、キャッシュにしているSSDを変えれば速度は変わるのだろうか? そこで、『Deskstar 7K3000』とSATA3対応のSSD、Crucial『RealSSD C300』(64GB)の組み合わせに変えてテストしてみた。
“Capacity”モード『Deskstar 7K3000』+『RealSSD C300』(64GB) |
『SSD 510』(120GB)ではSSD単体の性能の約7~8割ほどに落ち着いたのに対し、『RealSSD C300』では、ほぼSSD単体で計測した値と変わらないフルスピードが得られた。接続するSSDが高速だと、ある程度の速度で頭打ちになっている可能性があるのかもしれない。とはいえ、9000円で手持ちの大容量HDDを高速SSD並みの速度で使えるようになる夢のカードであることは間違いない。ソフトなどをインストールするシステムには高速起動できるSSDを、データには大容量のHDDとをいう定説を一気にひっくり返す定番製品になりそうだ。
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