週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

ソーシャルネイティブとは何か? ビンボーでもそれなりにハッピーなオレたち

2011年02月10日 07時00分更新

文● 遠藤諭 編集●Web担サカモト

 Twitterやfacebookといった海外勢のソーシャルメディアの隆盛が著しい。日本独自のSNSであるミクシィやグリーも広い年齢層に普及し、欠かせないコミュニケーションプラットフォームとして定着した。ケータイもiPhoneやAndroidといったスマートフォンへと移行しつつある。

 それでは、生まれたときからこれらのネットサービス、デバイスに囲まれて育ったこどもたちはどんな大人になるのだろう? ゆくゆくは日本の中心になるであろう彼らを知るためのカギが、本日発売の新書『ソーシャルネイティブの時代 ネットが生み出した新しい日本人』だ。発刊にあたり、著者であるアスキー総合研究所所長の遠藤諭にコメントを寄せてもらった。

ソーシャルネイティブの時代 ネットが生み出した新しい日本人

「ビンボーハッピー」が日本のトレンドになる

 『週刊アスキー』の昨年12月14日発売号の特集記事で、“2011年新製品徹底大予測”というのがありました。その記事のために取材されたときに、私は「来年はますますビンボーになるでしょう」などと言ったのですね。ところが、編集さん、ライターさんと話をしていると、「我々の周りにいる若人は必ずしも不幸ではないように見える」という話になったのです。

 世の中は不況の真っただ中にあるけど、ネットやテクノロジーをうまく活用して、低燃費で割とラクチンで楽しい生活をしている人たちがいるんじゃないか? そうしたライフスタイルのことを、「ビンボーハッピー」と呼ぶことにしたのですが、その7つ道具というのを定義したのですよ(記事ではスペースの関係でそこまで入らなかったのですが)。

・無料コンテンツ(YouTube、ほとんどのサイトやサービス)
・ファストファッション(ユニクロ)
・リアルのバーチャル化(ノンアルコールビール、電子タバコ、ラブプラス)
・シェア(共有)
・グルーポン(共同購入)
・iPhone(スマートフォン)
・ソーシャルメディア(SNS、ツイッター)

 ということなのですけど、これの中でも「iPhone」と、「ソーシャルメディア」は必須だろうという話になった。コミュニケーション手段だからというだけでなく、これらによって行動様式や考え方まで決まると考えたのです。ということで、週刊アスキーの「2011年新製品徹底大予測」というお題に対する私の答えは、

「ビンボー人が増え続けるので、iPhoneは売れるし、ソーシャルメディアも流行る」

という結論だったのです(誌面上の表現はもう少し違ったのですが)。もちろん、iPhoneもソーシャルメディアも、7つ道具としてあげたものも、必ずしもビンボーな人たちだけが使っているわけではないのですが……。ビンボーでもハッピーになれるには、これらが必須であるということです。

 昔は、お金がかかったことがこれらの道具をうまく使うことでほとんど無料になってきていますよね。その中でも大きく変化したのが、コンテンツと友達関係の維持に使っていたお金と時間ではないでしょうか? 昔は、飲み会や合コンがないと友達関係もままならなかったわけですが、いまはSNSとiPhoneでより豊かな人間関係というものが構築できる。コンテンツも、ネット上には無料のものがほぼ無尽蔵にあるといってよいでしょう。

 

裏テーマは「オタク論」と「ナード論」?

 ちょうどこの話をしていたときに、アスキー総研の『MCS(メディアコンテンツサーベイ)2011』という調査をもとにした本を書こうとしていたんです。そこで、この「ビンボーハッピー」にフォーカスしながら、これからの日本人はどこに行くのかということを書いたのがこの『ソーシャルネイティブの時代』という本です。

 「ソーシャルネイティブ」というのは、たとえば、1990年頃生まれの人たちは、物心ついた頃にはネットや携帯電話があった人たちです。彼らは、社会とコンタクトを取ることが増える大学生になったときには、ミクシィやグリーというものが十分に定着していた。「ソーシャルメディア」を最初から経験していて、事実、大学生のミクシィ利用率が非常に高いというのはよく知られていることです。彼らは、いわば「ソーシャルネイティブ」ともいうべき人たちで、今後、こういう日本人が増えていくし彼ら抜きにはマーケティングも広告も成り立たなくなるはずなんです。

 第1章は、いまの日本人が「デートをしていない」、「マンガ・アニメを異常に消費している」というお話となっています。これは、アスキー総研の調査に興味を持っていただいた企業の方々とお話をしているときに、「この前提が見えていなかった」とおっしゃる企業の方々が多かったからです。なにしろ20代のデート率は20%前後。電通の調査では若い未婚女性の60%は「恋愛は自分にとってあってもなくてもよいものである」と答えているなんて話もあります。一方、首都圏では、一時期はテレビで100本のアニメが見れた。

いまの若年層はデートをしていないというが理由は?
ソーシャルネイティブの時代 ネットが生み出した新しい日本人
「大学生・専門学生・大学院生」の1カ月に使える金額別の「休日デート率」(『ソーシャルネイティブの時代』より)

 
  第2章以降は、「ビンボーハッピー」や「ソーシャルメディア」、「スマートフォン利用者」について迫っていきます。第5章では、「ソーシャルネイティブ」の時代に影響を与えるはずのキーワードを解説しました。ひょっとしたら、1つこの本の裏テーマともいえるのが、「オタク論」かもしれません。ネット時代には、日本の「オタク」と米国の「ナード」(ここでは米国のコンピュータ好き)の違いが、社会的に大きな差になってきていると思うからです。このあたりは、本で読んでいただけるとうれしいのですが。

iPhoneの利用者層は確実に広がっているのに対してAndroidはまだエンジニアなど偏りがある
ソーシャルネイティブの時代 ネットが生み出した新しい日本人
スマートフォン利用者等の「職業」[特徴的なものを抽出](『ソーシャルネイティブの時代』より)

 
 この本は、アスキー総研の調査『MCS 2011』の集計作業と並行して書くことになったので、かなり厳しいスケジュールとなってしまいました。印刷会社に最終的なデータを渡すときには、この歳で2日徹夜をしてしまい、冷蔵庫の音がどうしても「人が喋っているようにしか聴こえない」という状態になり、かなりヤバイと思いました。それでも、この時期に出したいと思ったのは、いまソーシャルメディアの動きが最も注目すべきタイミングだからです。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう