“ファミコンの中”の人としてニコニコ動画で火がついたサカモト教授。その教授の新作が2月9日にリリースされる、ということで直撃インタビュー! ニューアルバムのこだわりを伺いました。
俺が中にいるから!
――ニコニコ動画で活動に注目が集まったという話ですが。
サカモト そうですね。知り合いのライブで前座的なことをやったんです。ファミコンの名曲をたくさん弾いて。それがケータイで撮影、アップされてて“やってみた”ランキングで1位になってたんです。実際には“ファミコン元気玉”というファミコンの名曲をメドレーにして動画をつけたものがきっかけで知名度があがりました。今は“ファミコンの中の人”という立ち位置で活動をしています。
――ファミコンの中の人(笑)
サカモト 「昔僕らがファミコンでプレーしていたときに、中でこの人が弾いてくれてたんだ」ってニコ動でコメントがついて自然と設定が形成されたんです。今はライブでも「帰ったらファミコンを出して久しぶりに遊んでくれ!中に俺がいるから!」とMCでも言ってますね(笑)
――頭にいつも載せているファミコンが気になるのですが。
サカモト こっちが本体なんですよ。下についているのはただの人間。取り替えると人間の性格が変わるという。長男がサカモト教授(ファミコン)、次男がスーパーサカモト教授(スーファミ)、三男がプレイサカモトステーション(プレステ)の3兄弟でして。妹にディス子システム(ディスクシステム)。これが現在のサカモト家の構成ですね。
――ライブではその頭の本体にふ~ふ~息をかけたカセットを挿すと音を奏でてくれると。
サカモト 一応マナーというか(笑)。本当はふ~ふ~すると水滴でさびるからやめてと販売元さんはオフィシャルでいってますけど。昔僕らが子供頃はこれをやるのが普通だったし、通過儀礼としてお客さんのリクエストにライブで応えるときはやってもらってますね。
クラブでかけても盛り上がる!
――ところで、新作ですがゲーム音楽のその先をも感じる1枚だなと思いました。
サカモト 前作がゲームのサントラを意識した1枚だったんです。架空のゲームを自分の中で設定して、たとえばフィールドを歩く音楽だったり、バトルのときのものだったり。ただやっぱりそれはゲーム的な作品だったので、一般的な音楽好きのかたには届かないかなというのがあって。さらにもうすこしキャッチャーにして、音楽好きのかたにも通用するようなチップチューンに昇華させていこうと思ったんです。なので、今回はゲーム的な部分もありながら、サカモト教授らしさも出して、音楽シーンに対して比重を寄せたつくりになってますね。
――クラブミュージック的な要素を多く感じるのですが。
サカモト テクノだとかを意識したのは事実です。もともと自分もクラブミュージックを聴いて育ったし、それに鍵盤弾きなのでクラブジャズとかをきいてたんです。クラブでかけても遜色のないようにというのは考えてつくりました。
ゲーム音楽の制限を意識せず
――それにすごく哀愁も感じるメロディーだとも思って。
サカモト もともとファミコンの曲って、限られた音色の中で、いかにストーリーや、意味を付けるかという世界なんですよね。なので結構メロディアスな作品が多くて。そういうのを意識いすると自然に泣きのメロディーというか、耳に残るものになるんだと思いますね。
――楽曲をつくるときのファミコン音楽のマナーとかあるのでしょうか?
サカモト ファミコンは基本3音+ノイズ1音の合計4音しか鳴らせなくて。ノイズでリズムを刻んだり、ほかの3音をうまいことベースとメロディーとバッキングにわけて。そういう技術はありますし、それがファミコンらしさを生んでいるんです。同時に何音も鳴らせないから高速でアルペジオみたいなことをやって和音ふうにしたり。もちろん楽曲制作にも取り入れてます。でも自分はこの制限を意識せずに音色とメロディーでゲームらしさを出しつつやろうと思ってて。まったく制限をしない曲も今回あります。それに音圧を上げたりエフェクターで空間を広げて聴きやすくしてますね。
――逆に8ビットだからこそな部分もありますよね。そこは?
サカモト 技術的な話ですが、要はファミコンってCPUの処理能力が8ビットであまり細かい精度で音がつくれないんですよね。音ってつまり波じゃないですか。滑らかな波だと柔らかなタッチの音が鳴ったり。矩形波だとアタックの明るいいわゆるファミコンらしい音ができたり。三角波ってよくファミコンのベースラインで使われるんですが、それを8ビットで表そうとするとどうしても細かいギザギザになってしまって、綺麗な斜めにならないんですよ。それがファミコンらしいノイズをうんだり。だからコンピューターでできる波系の限界があるがゆえの音があって。それですよね。
――音づくりでは、特殊な機材を使用しているということですが。
サカモト “MIDINES”を使ってます。ファミコンカセットにMIDIケーブルが出てて、それを鍵盤につないで弾くとリアルタイムで信号がファミコンの音源にいって鳴らせるというもので。それをメインの曲づくりでつかってますね。でも今後はファミコンのエミュレーターとか……ファミコンの音を鳴らすためのNFSのプログラムを書いて、ファミコンやプレーヤーに流したりして、音を再現してみたいなと思ってますね。まさに昔、ゲームの音をつくっていたような手法になってくるので、もっと幅が広がりそうな感じがあるんですよね。シンセの設定をいじれば、音はつくれるんですけど、あえて本体の音を鳴らす方向でやっていきたいなって思います。
――今作を完成させたことで次のステージ(面)が見えました?
サカモト はい。今作はサカモト教授の集大成的な作品になったので、次の面は見えましたね。今まではどちらかというと自分はネットやニコ動的な世界の人だったんです。でも元はライブハウスでも活動していたので、ネットの世界も大事にしながら、そこで完結するのではなく、世界中の音楽シーンに向けてこれから舵取りをしていきたいなと。その第一弾が今作。つまり音楽シーンに向けての“船出”の1枚なんですよ。なので、よりたくさんが楽曲を制作して、これからも頑張っていくぞ! って思ってます。
サカモト教授 ニューアルバム『SKMT』
●1890円(初回ファミカセ仕様)●2月9日発売 ●ラストラム・ミュージックエンタテインメント
オンラインでのご購入はAmazon.co.jpからどうぞ。
【プロフィール】
ファミコンの中の人。ライブでは頭のファミコンにフーフーしたカセットを挿すとそのゲームの音楽を弾いてくれる。
● http://p.sk-mt.com/
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