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首都圏の電車の生まれ故郷“新津車両製作所”に行ってきた!

 最近首都圏のJRでは、ステンレス製の銀色車体の通勤電車をよく見かけるが、JRの電車はどこで製造されてやってくるのだろうか?
 実は通勤型電車のほとんどは新潟にあるJR 東日本の『新津車両製作所』でつくられたものなのだ。10月9日に、この『新津車両製作所』で年に1度の一般公開が行なわれたのでその様子をレポートする。

 首都圏のJRの通勤電車は国鉄時代に使われていた103系や201系、205系といった旧型車輌から急激にE231系やE233系といった“新系列電車”に置き換わりつつある。その生産を担っているのがこの『新津車両製作所』だ。

 製造している車輌は時期によって異なるが、現在は京葉線用のE233系5000番代と、山手線用の置き換え車輌を製造している(山手線はホーム扉を全駅に導入するため、それに併せて6扉の車輌を4扉の車輌に置き換えている)。過去には中央線や京浜東北線のE233系や、JRだけではなく私鉄の小田急や相模鉄道、東京都交通局(都営)用の車輌を製造した実績もある。まさに“首都圏の電車のふるさと”と言っても過言ではないのだ。

 今回の工場公開では、車輌の各製造工程の公開をメインに、完成したばかりの京葉線用E233系5000番代電車の試乗やミニSL、ミニ電車の乗車体験などが行なわれた。
 

いざ工場内へ!
工場内の様子。手前の青色の屋根は“トラバーサ”と呼ばれる、工場内で車輌を移動するためのもので、内部に車輌を格納し、水平に動かすことができる。工場は複数ブロックに分かれており、工程毎に車輌を移動させながら完成させていく。
工場に集結!
10月9日当日は大粒の雨が降り注ぐ悪天候だったが、開場の10時前には親子連れや熱心なファンなど約500人以上が工場前に詰めかけた。

 一般公開の目玉だったのが、製造されたばかりの車体をクレーンで工場内を移動する実演だ。眼前で2機のクレーンによりE233系の車体が吊され、頭上を滑らかに通り過ぎていくさまは、ダイナミックで感動した。これだけでも新潟まで来た甲斐があったというものだ。ふだんは見られない電車床下を細部までクッキリと見ることができた。
 

吊るされる車輌

 『新津車両製作所』では、別なメーカーでつくられた部品をくみ上げるのではなく、電車をまさに“ステンレス板一枚”の素材の状態から製造しており、工場内では素材のカットから加工、設備の艤装までほぼ全ての工程を見ることができた。ほかの工場公開などでは、メインとなる製造工程を一部だけ見せる程度のところも多いが、『新津車両製作所』では、工場の全体を公開しているため、まる1日回ってもまったく飽きることがなかった。
 

ここからスタート
ステンレス板を切り出す自動機械。電車はこの瞬間から製造がスタート。
正体不明のパーツ
切り出されたパーツ。各パーツが具体的にどこに使うのかはよくわからないが、ここから曲げたり溶接したりして、車体の各部分に使われていく。
Nゲージ?
製造中の電車の側面。そういえば、Nゲージの金属製キットを購入すると、こんなパーツが入っている。
屋根部分
屋根の製造工程。手前で骨組みをつくり、外板の板を被せていく。
床下部分
製造された床下部分。ひっくり返っているのでわかりにくいが、黒い部分に連結器が取り付けられ、配管やタンクなどの床下機器が取り付けられる。
連結器発見!
部品倉庫には、連結器が置いてあった。これだけで350トン近い10輌編成の車輌を引っぱるのだ。

 床下や屋根、側面、妻板と各車体のパーツが組み上がると、冒頭でつり下げられていた車体が完成する。
 ここからさらに車内のシートや案内用の液晶ディスプレーなど細かい機器が取り付けられたり、その路線を表わすシンボルカラーの“帯”が巻かれる艤装(ぎそう)行程だ。
 

シート取り付け前に
艤装工程中のシートが取り付けられる前のE233系の内部。ちなみに、この車輌の内部に入ることができた。工場見学ならではの体験だ。
車体番号よーし!
車体には製造番号や車輌番号、『新津車両製作所』での通算製造車輌数などが記載された伝票が貼られていた。
塗装前に
塗装中のE233系5000番代の先頭車。ワイパーなどの機器は取り付けられているが、まだ前面のワインレッドの帯やJRのマーキングは入れられていない。
溶接作業風景
溶接工程の台車。車体だけではなく、台車も『新津車両製作所』でイチからつくられる。溶接はロボットによる自動作業で行なわれていた。
モーター取り付け
溶接が終わり、電車の心臓部といえるモーターを取り付けた状態。ひとつの台車に2つのモーターが取り付けられ、それぞれ車輪を駆動させる。モーターはひと昔のHDD並みの毎分4700回転で駆動する。
『DT71型』台車が完成!
車輪を組み込んで完成した『DT71型』台車。『新津車両製作所』では、1日に2台の台車を製造できる能力があり、1編成10輌は2~3週間で完成する。
香しき新車の香り
上記の製造ラインを通って完成した京葉線用E233系5000番代。工場の敷地内の専用線を試乗することができた。乗ってみると“新車の香り”が充満。

 工場の方にうかがったところ、今後『新津車両製作所』では京葉線用のE233系5000番代の製造後に、現在東京~上野間で工事が進めている『東北縦貫線』と呼ばれる東海道線と高崎・宇都宮線の直通運転路線用にE233系ベースの車輌を製造するとのこと。
 来年の工場公開ではまた違った車輌の製造風景が見られるかも知れない。
 数ある車輌基地や工場公開の中でもこの『新津車両製作所』は筆者のお気に入りのひとつだ。

山手線に投入
新津駅構内の留置線には『新津車両製作所』で製造され、10月12日に東京 大崎に向けて回送されると思われる山手線用の4扉車を組み込んだ編成が置かれていた。
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