9月の27日から29日まで、米国サンフランシスコで開催されていたスタートアップIT企業のカンファレンス“TechCrunch Disrupt”。このイベント、'08年には『セカイカメラ』のとんちドット社が登場しているなど、起業間もないベンチャーが成功をつかむための登竜門という感じの場所になっています。
そして今年、同イベントで注目を集めていたのが日本の産・学連携のベンチャー企業Gunzoo(グンゾウ)による映像配信サービスです。
PC版 |
↑複数の動画を1画面上でなめらかに再生。ここから、シームレスに拡大することも可能。 |
『ファブリックビデオ』と名づけられたこのサービスでは、サーバー上にある多数の動画をひとつのデータストリームに圧縮。PCやiPhone側からはひとつの画面上で、多数の動画を同時に見られます。さらに、この動画は、なめらかに拡大していくことも可能です。
たくさんの場面をまとめてみられる |
↑アメリカで開催されたITカンファレンス“TechCrunch Disrupt”のブースを撮影した動画を集めるとこうなる。現地の雰囲気をざっとつかいみたい、という場合には1つだけの動画の場合よりはるかによくわかる。 |
ひとつの画面に“グワァー”っと広がる動画から気になったものへ“ビュー”っとズームしていく感じ。ユーザーが“ズームした”というアクションを“このジャンルに興味あり”と判断して周辺に関連する動画や広告を表示することもできます。
サービスの使い方の一例としては、まずランダムに表示される無数の動画を眺めます。そして、たとえばネコの動画が気になればそこをクリック。すると、その画面が大きくみられ周囲には、別のネコ動画やキャットフードなどの広告動画が表示されるという流れです。
このサービスの便利な点は、まさにこの流れ。はじめにキーワーでサーチする必要もなく、サムネイル画像に釣られることもなく、動画を次々にクリックしていくだけで自分が見たいものに辿りつける点が秀逸です。
また、別の例としては“旅行で撮影した動画の一覧をグログにアップする”、“複数監視カメラの映像をひとつのモニターでチェックする”などさまざまな用途に応用できます。
さらに、将来的にはツイッターのタイムラインなどを表示することも可能だということなので、キュレーション用のツールとしても期待できます。
開発者の笠井裕之氏 |
↑『ファブリックビデオ』の開発を行なう笠井裕之氏はGunzooの取締役であり、電気通信大学の准教授でもある。 |
ここでひとつ、ポイントをおさらい。このサービスはインパクト大のインターフェイスに注目してしがいがちですが、重要なのは圧縮と配信技術なのです。
開発者の笠井裕之電気通信大学准教授によれば、「インターフェイスやソーシャル的な情報の付加は後付けで改善できますが、複数のデータをできるだけ容量を小さくして、ひとつのストリームにして送る技術がGunzooの強みです」とのこと。
サーバーから配信する際に個別の動画ファイルをそれぞれ送るのではなく、あらかじめひとつのデーターにすることで読み込みの速度を向上しているそうです。また、ひとつの動画をいくつもの枠に分解してから、クライアント側表示される領域だけを選んで送りだすことで容量をを節約するなどの工夫がなされているとか。
着想を得たきっかけを「Google Mapsをはじめて見たときに、同じことを動画でしたいと思った」ということ。これは推測ですが、スクロールを先読みして、表示領域の周辺の動画もロードしておくことで高速な表示を実現しているのかもしれませんね。
iPhone版 |
↑iPhoneでも同様の機能が使える。写真ではわからないが、サムネイル画像ではなく動画が再生されている。 |
iPhone版の画面 その2 |
↑動画に写っている場所の地名や電話番号などの情報をみるともできる。 |
拡大表示もできる |
↑iPhone版での全画面表示。下段のサムネイルには同じ動画の前と後のシーンが表示されている。 |
このように、カッコいいインターフェースはもとより、独自の圧縮と配信技術で動画サービスを展開する予定の『ファブリックビデオ』。
年内にベータ版の動画共有サイトを立ち上げ、順次広告や技術提携などの事業をスタートする予定です。ちなみに、サイトを利用する際に回線やPCに求められる速度に関しては「ユーチューブの視聴ができれば問題ないレベル」ということ。
私としては、今もっともサービス開始が楽しみサイトです。うーん、早く使いたいっ!
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