週刊アスキー

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誌面では語りきれなかった、ポケットモンスター ブラック・ホワイトの開発秘話!!

 9月18日にいよいよ発売となる、シリーズ最新作『ポケットモンスターブラック・ホワイト』。本作には専用ウェブサイトとゲームソフトが連動するなど、これまでのシリーズにはなかった見どころが多数盛り込まれている。これらの新要素はどうやって生まれたのかなどを、開発秘話を交えて本作ディレクター・増田順一氏に語っていただいた。本誌800号に掲載しきれなかったインタビュー内容を、週アスPLUSだけで明かします!!
 

ポケットモンスター ブラック・ホワイト
株式会社ゲームフリーク
取締役 開発部長
ポケットモンスター ブラック・ホワイト ディレクター
増田順一氏


ビデオゲームディレクター。『ポケットモンスター』シリーズの第1作からの開発者であると同時に、同社が制作するゲームソフトのすべてに携わっている。職務内容はディレクターを中心に、ゲームデザイン、作曲、シナリオ、プログラムなど、多岐にわたる。1968年1月12日生まれ、横浜市出身。

■二元論的な意味合いをより強く! タイトルはどうやって決まったか?

――まずは、『ブラック・ホワイト』(BW)というタイトルになった経緯をお聞きしたいんですが?
増田:前作『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール』の開発時のテーマは、「究極を目指して」だったんですよ。で、“究極”はつくっちゃったし、その後は……なんだ? と考えていって……「今度は対極というテーマはどうだろう?」と思いついたんですよ。『ポケットモンスター』シリーズはこれまで、2バージョンのソフトを同時に発売してきましたけど、2つのバージョンがある意味を、もう少し明快にしていきたいな、と思ったんですよね。「両方遊んでみたいな」ってユーザーに思ってもらうためにも、2つのバージョンが対極となるソフトをつくれないだろうか、と考えたんですよ。
 小難しい話なんですけど、『ポケットモンスター』シリーズって二元論的なところを意識してつくっていたんですよ。正義があると必ず悪がある、というみたいに。でも『ポケモンBW』ではそうではなくて、ストーリー上では正義や悪は見せつつも、プレイヤーはあくまでナチュラルな真ん中を進んでいく……というか。あくまでプレイヤーは正義でも悪でもなく、それ以外の第3の考えをもっていてほしいな、と。だから、プレイヤーにいろいろと悩んで欲しいですね。「こっちが正しいの? それともこっちの考えがほうが良いの?」というようにね。中立の見方・考え方をあえて強調することで、二元論的な面はより強調されたのではないかと思います。
 このように重要視していた“二元論的な部分”を表現するのに、色である黒と白がピッタリだと思ったんですよ。明確に対立した色ですし、「どちらか一方がないと、もう一方が成立しない」という関係ではありませんから。たとえば「光と影」だと、光がなければ影はない……ということになりますけど、黒と白であればそれぞれが独立して存在できるんですよね。
 あとは……「白黒はっきり付けろ!」みたいな意味合いもあるし、これまで意識していた二元論がより判りやすい、ということもあって、今回は白と黒をチョイスしました。日本だとこの組み合わせは、凶事に使われる色だし、あまりイメージはよろしくないんですけど(笑)。
 

■イッシュ地方=1種類の地方? 冒険の舞台に秘められた秘密とは?

 ――今回はエンディングまで、新しいポケモンばかりですが、どのようにつくられていったんですか?
増田:
まず、「1つの地方で冒険を成立させるのに、このくらいの数のポケモンが必要だろうな」ということを決めるんですよ。で、ポケモンのデザインを、シリーズ1作目である『ポケットモンスター 赤・緑』のころに戻したいな、と思ったんですよね。
 どういうことかと言うと、モグラというとディグダ、ネズミというとピカチュウというイメージになってしまうんですけど、そうじゃないモノ――ネズミと言えばコレ! という新しいパターンをつくりたかったんですよ。つくっている自分たち自身も意識するんですよね。「ネズミでピカチュウ以上にウケるものはつくれねーよ!」って(笑)。そういった既成観念を越えたところで、新しくポケモンを生み出したいな、と。「あまりピカチュウを意識しないで、ネズミのポケモンを考えようよ」ってことでつくっていくと、意外と発想の広がりがあったんですね。
 結果として、ゲームをクリアするまで、いろんな形で新ポケモンと出会ってバトルすることになります。出会うのは全部、タイプもわざも不明。判らないが故に新鮮でおもしろい、という感じになってますね。

――舞台は“イッシュ地方”という新しい地方になっていますけど……今回は日本の地方がモチーフになっていないのでは……?
増田:はい。実は今回モチーフになっているのはニューヨーク、ニューヨーク市近くのマンハッタン島の近くなんです。この発想は『ポケモンBW』開発の最初の段階からありました。
 自分は音楽をやっていて、三枝成彰(さえぐさしげあき)さん(※1)という作曲家の方に、アレンジをしてもらったことがあるんですよ。“ポケモンだいすきクラブ”の限定イベントみたいなものがあったときなんですけど。で、そのときは日本の4ヵ所を回ったんですよね。関東と関西(神戸)、九州(福岡)、北海道(札幌)。つまり、これまでシリーズ作品の舞台となったカントー、ジョウト、ホウエン、シンオウを回ったんですよね(笑)。で、次にイベントをやりたい場所はどこだろう? ……と思ったときに、「もしやるんだったらニューヨーク!」って思ったんですよ。もちろん、単純にコンサートをやりたい場所としてですけど、「待てよ……それをゲームの舞台にしたらおもしろいんじゃないか?」と思って。それからニューヨークのことをいろいろと調べ始めて、非常におもしろい土地だと判ったんですよ。あの地方には橋がいっぱいあるんですけど、元々巨大な橋をギミックとして使いたい、というアイデアもあったし。
 今回“イッシュ地方”という名前をつけていますけど、ポケモンも人も、いろんな人種とかも、かなりゴチャっとなっている……それを客観的に見ると1種類に見える。そこから“イッシュ”という名前になったんですよね。それってニューヨークのイメージに近いな、と。人種のるつぼというか。
 でも……ニューヨークに住んでいる人にいろいろ聞いてみたんですけど、いろんなコトを我慢しているみたいなんですよね(笑)。我慢して、一生懸命いい場所にしようと生活している、ということみたいなんです。それを知って、ますます最新作の舞台にするのにすごく良いな、と思いましたね。
 

ポケットモンスター ブラック・ホワイト

■『ポケモン』の新しい楽しみ方を提供する?“ポケモングローバルリンク”とは?

――以前、大人にも楽しい、子どもにも楽しい、とブログで公表されていましたが、大人に見て欲しい部分はありますか?
増田:『ポケモンBW』の開発にあたって考えたんですけど、『ポケットモンスター』シリーズって、小学生~中学生1・2年くらいまでは遊んでくれるけど、何となく「年齢が上がると卒業するもの」というイメージがあるみたいなんですよね。つくっている側からすると「そうじゃないだろう!」という思いなんですけど(笑)。で、こういった状況がなぜ起きているのかを考えてみたんですけど、内容を大人でも遊ぶに耐えるクールなものにしていったら、“卒業するモノ”というイメージを払拭できるんじゃないかな?」と思ったんですよね。ですから、メッセージの表示に漢字を使って大人に読みやすくしたりとか、見た目もクールなものを目指してつくっています。
 それから、“ポケモングローバルリンク”など、最先端の技術やアイデアをいろいろと盛り込んで、“卒業するモノ”というイメージの払拭をはかってます。大学生くらいになるとPCも使うし、テレビ見ながら、PCを使いながらケータイを見て……というのが、生活スタイルになっていますよね。そんな“ながら”のなかに、ニンテンドーDSで『ポケモンBW』を遊ぶことも入れてほしいな、と。

――では“ポケモングローバルリンク”は、(『ポケモンBW』を)生活の一部に組み込んで欲しい、ということで生まれた?
増田:そうですね。アイデア自体は、最初の段階からあったんですよ。これまでのシリーズ作品でもあったように、ポケモンの交換など、ゲーム自体でコミュニケーションを取るのはもちろんなんですけど、さらに大人が持っているPCも使って、コミュニケーションの範囲を広げようと思いまして。
 ある意味『ポケットモンスター』シリーズは、コミュニケーションツール的な要素を強化してつくってきた面があります。PCとインターネットを使ったコミュニケーションには国境もなくて、
世界中のプレイヤーとつながることができる。知らない誰かがつくった画像や映像を、見たりすることもできる。そんな状況は『ポケットモンスター』シリーズにおけるコミュニケーションの理想の姿だな、という感覚がありましたし、「この進化は、ある意味必然であろう」と感じています。

――ウェブと連動させる上で、いちばん苦労した点は何でしょう?
増田:すっっっごく苦労した点は……ウェブと連動させる意味を、社内外で理解してもらうことですかね。要するに、企画を通すのが大変でした(笑)。「ウェブにつなげて何をやりたいの?」と聞かれて、「コミュニケーションとアレとコレと……やってみたいんです!」って話をしても、「それ、PCだよね? 本作と何の関係があるの?」と言われて。自分はウェブとつながることによるおもしろさがある、と思っていたので、そこをできるかぎり説明して。DSとPCが連動して1日のなかでどのように遊ばれるかがわかる資料とかをつくって、「今の大学生はですね、こんな風にしてPCを使っているんですよ!」なんて熱くプレゼンして。なんとかやらせてもらえることになりました(笑)。

――どうしても入れておきたかった要素とは?
増田:“ポケモンドリームワールド”というコンテンツなんですけど、ゲーム内でポケモンを寝かせて、夢を見ている世界がPCの中、という設定になっています。ただ、ニンテンドーDSのデータがPC側に行くだけ、というのはおもしろくないし、何かしらがDS側に戻ってほしいな、というのがありました。ニンテンドーDSとPC、両方の世界をリンクさせるのが、いちばん入れておきたかった大事な要素ですね。

――ちなみに“ポケモングローバルリンク”ですけど、ブログのようなコミュニケーションツールにイメージは近いんですか?
増田:“あんしんメール”という定型文でメールがつくれる機能でプレイヤーどうしがコミュニケーションを取ったりとかはありますけど、ブログのようなイメージはないですね。広がる感じ――各プレイヤーどうしの夢と夢がくっついていく、というようなイメージを大切にしたいと考えているので。それがグローバルでくっついていくのはおもしろいかな、と。

――ということは、海外ともつながる?
増田:海外版が発売されれば全世界のユーザーとつながる予定です。『ポケットモンスター』の市場は、日本よりも海外の方が大きいですし。
 プレイヤーとして遊んでいる感覚って、どの国の人でもあまり変わらないんですよね。“ポケモンバトル”の世界大会などを見に行っても、人種や年齢に関係なくみんなに楽しんでもらっているみたいですから。国などに関係なく、『ポケットモンスター』と“ポケモングローバルリンク”でプレイヤーどうしがコミュニケーションして、“お祭り”ができればいいな、と思いますね。

――ということは、期間限定イベントの“お祭り”が“ポケモングローバルリンク”で予定されている……?
増田:予定というか……やりたいと思っています。自分としては『ポケットモンスター』というゲームを楽しめるかは、遊び方次第だと思うんですよ。たとえば……特別なポケモンをプレゼントするイベントをこれまでも行なってきましたけど、技術的なことだけ言えば、自宅などでWi-Fi通信を使えば簡単にもらえるし、そこで終わり。でも、イベントや映画などでのプレゼントだと会場までわざわざ行くことになり、そのおかげで「あのとき、会場に行って並んだよね」といった記憶が残る。誕生日にソフトを買ってもらって、そのとき配布していたポケモンをもらったんだよなぁ……とかね。
 そんな、大人数が集まって何かを経験する記憶――「思い出」を、みんなで共有できるイベントをやりたいですね。こういったことは、ゲームの外の世界での、『ポケットモンスター』の楽しみ方なんじゃないかな、と思います。
 

ポケモングローバルリンク
ポケットモンスター ブラック・ホワイト
ウェブ上で出会ったポケモンをゲーム内に登場させることができるなど、それぞれのプレー結果が深く関係している。
※画面は開発中のものです。

■新たなバトルルールも出現!『ポケモン』をどう楽しむ?

――“トリプルバトル”など、新しいバトルのルールを入れようと思ったのはなぜですか?
増田:最初に3匹vs.3匹の“トリプルバトル”を考えたのはですね……“ポケモンワールドチャンピオンシップス” (※2)を見ていて、「もっと盛り上がることはできないかな……」と思ったんですよね。たとえば、“ダブルバトル”での世界一は誰、“トリプルバトル”では誰、というようにカテゴリーを増やすとか、大会の盛り上がりを次のステップに上げられないかと考えて。
“ローテーションバトル”という新ルールも追加してあるんですけど、こちらの方を先に考えていたんですよ。バレーボールのイメージでつくったものなんですよね。何かやったら、次の人に回る……みたいなことができないかなと思って。
 実は“トリプルバトル”の方が、“ダブルバトル”からの正当な進化というイメージなんですよ。ポケモンバトルに詳しい人がやるもの、という感じで。で、“ローテーションバトル”はどちらかと言えば、ランダムの要素が強まっている。初心者の人でも、すごく強い人とも戦えるように、と思ってつくってあります。どれも、それぞれのルールで世界一を目指してほしい、という思いでつくりました。
 突然ですけど、自分はもともと、シューティングゲームがすごく好きだったんです。でも、このジャンルは難易度が上がり過ぎていって、だんだんと下火になっていった……と自分では考えているんですよ。『ポケットモンスター』シリーズはそうならないように、常にいちばん判りやすく、遊びやすくつくろう、と心がけています。何度完全新作をつくっても、「初心者でも遊べる」という当初からのコンセプトは守っているので、新ルールが加わった今回も、そこは変わらず…ということで。最初は普通に“シングルバトル”から始めてて、バトルのおもしろさが判ってきたら“ダブルバトル”、さらに“トリプルバトル”へ……という流れで楽しんでもらえれば、と思っています。

――「『ポケモン』は久しくプレーしていない」という回帰ユーザーに向けて、いちばん見てほしい部分はありますか? 一方、子どもに見てほしい部分は……?
増田:まず、登場するのは新ポケモンばかりなので、お父さんお母さん世代に多いであろう「回帰ユーザー」と、初めてプレーする子供と、同じスタート位置でプレーできます。
 回帰ユーザーのみなさんにはあえて、「『ポケットモンスター』かぁ……なつかしいなぁ」くらいの感覚で遊んでみてほしいですね。今までと同じ『ポケットモンスター』と思ってプレーしてみれば、絶対驚いてもらえるはずですから(笑)。「え? コレがこうなるの?」と思う部分が、いろいろとあるんじゃないかと思いますので。
 初めて遊ぶみなさんには、見てほしい部分というか……ゲームを始めて遊ぶ人でも、安心して遊べるソフトだと思います。ゲームに慣れていない人にも判りやすくつくっていますし。
 お子さんがいらっしゃる方は、お子さんと一緒にプレイしてみるとおもしろいんじゃないかと思いますね。子はどもはどうやってプレイするんだろう? なんて見たりしながら。親の方は漢字モードで、子どもはひらながモードで、というかたちで遊べますし。

――最後になりますが、自分が気に入っている本作のポイントは?
増田:そうですね……エンディングにいく15秒くらい前……かな(笑)。そこからエンディングにいくまで。自分のなかでは100万回は見てチェックしたんじゃないか、というくらい、こだわってつくったので。内容は……まだ言えませんけどね(笑)。
 

ローテーションバトル
ポケットモンスター ブラック・ホワイト
3匹のポケモンを出すが、戦うのは1匹のみ。毎ターン戦わせるポケモンを選択することになる。
※画面は開発中のものです。
トリプルバトル
ポケットモンスター ブラック・ホワイト
右端にいるポケモンは、向かって左端には攻撃できないなど、ポケモンの位置が重要となる。
※画面は開発中のものです。

 

(※1)三枝成彰●作曲家。東京音楽大学教授。社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)の理事・評議員などを務める。クラシックからアニメ・ゲーム音楽、映画音楽に舞台音楽と、幅広いジャンルで作品を手がけている。
(※2)ポケモンワールドチャンピオンシップス●ゲームソフトを使った“ポケモンバトル”の世界一を決める公式大会。世界各国で行なわれる予選を勝ち抜いた代表選手が参加できる。なお、会場では“ポケモンカードゲーム”の大会も同時に行なわれる。詳しくは公式HP「
ポケットモンスターオフィシャルサイト」にて。

©2010 Pokémon.©1995-2010 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.
ポケットモンスター・ポケモン・Pokémon は任天堂・クリーチャーズ・ゲームフリークの登録商標です。

 

ニンテンドーDS用ソフト

『ポケットモンスター ブラック』
『ポケットモンスター ブラック』
『ポケットモンスター ホワイト』
『ポケットモンスター ホワイト』

『ポケットモンスター ブラック』『ポケットモンスター ホワイト』
●発売 株式会社ポケモン/ 販売 任天堂株式会社 
●ジャンル RPG ● 9 月18 日発売予定 ●価格 各4800 円
●プレイ人数 1 〜5 人 ●ニンテンドーWi-Fi コネクション、
DS ワイヤレス通信、赤外線通信対応
●オフィシャルサイト http://www.pokemon.co.jp/

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