KandaNewsNetwork,Inc.の神田敏晶氏(左)と、アスキー総合研究所所長の遠藤 諭(右)。 |
リアルタイムウェブ時代には
企業は“ハダカ”でいるべき
遠藤 企業がTwitterを活用するに際しては、絶対ハダカでいたほうがいい。「正直は最大の戦略」って言った人がいるんですが、まさにそういう時代が来ていると思います。
全部さらけだすんじゃなく、PRのために賢く使えばいいという話ももちろんあっていいんですけれど、企業にも五官があるとすると、Twitterは、“毛穴”みたいなもので、ものすごく基本的な感覚部位になり得るんじゃないでしょうか? 単なるプロモーションだったらSNSのほうがいいかもしれません。しかし、そうした宣伝とか広報とかいったいままでのやり方とは、別次元にあるものだということです。ユーザーの顔を直接、しかも迅速に見ることができるTwitterって、実は企業活動そのものなんじゃないかとも思うんです。
神田 TwitterやUstreamの登場によって、企業の広告やPR、ブランディングに、「リアルタイム性」という要素が追加されました。ブログやバイラルマーケティングでこれまで言われてきた情報の伝播速度よりもっと速く、ものの数分で、一気に情報が伝播するようになってきています。
だから、企業のネット活用も、いま、Google一本槍から変わってきています。これまでは、一生懸命SEOして、検索で見つけてもらうことが重要だったのですが、いまはTwitterのタイムライン上で出てこないと意味がない。
遠藤 そうですね。
神田 Twitterはサービス開始から4年目、Ustreamは3年目で、いまになって大流行しているポイントは、プロトコルだと僕は思うんです。「UGP」、つまり「ユーザー・ジェネレイテッド・プロトコル」なんて僕は呼んでいますが、コミュニケーションのやり方すらも、ユーザーたちが決めている。企業では考えつかないプロトコルを、ユーザーが作っていく。特にTwitterはそうですよね。
出来上がったサービスを、はいどうぞと提供するのではなく、途中のプロセスを全部見せて、ユーザーと一緒に作っていく。これが、ソーシャルメディア時代の基本ではないかと思うんです。
Twitter+Ustreamで
過去に行ける? 未来にも?
遠藤 「Google Analytics」みたいなツールを使えば、そのサイトに誰が、どこから来たのかは簡単に分かります。これでかなりのことは分かりますが、行動は見えるけれど、ユーザーの心までは見えない。
でも、Twitterはまったく逆で、ここには言葉がある。そして、本音度が高い。ブログの場合は、ややかしこまって、正座して書いている部分があると思います。メールの場合も、ある気持ちの整理をして書いているものですよね。ブログやメールが大脳系だとすると、Twitterは不随意神経系というか、脊髄反応系というか、要するにカッコつけた言葉じゃないところが凄い。襟を正して書いた文章ではなく、本音が現れる。
これまでも掲示板などには本音が見える部分がありましたが、それに、リアルタイム性とかフォロー/フォロワーの関係などが加わることで、Twitterではある価値が生じているのだと思います。そして、その価値が分かっているから、 Googleは昨年Twitterを買おうとしましたし、GoogleもマイクロソフトもTwitterと提携しているわけなのですよね。
つまり、自分たちがいままで検索してきたものにはない本音が、Twitterを検索することで拾えるんではないかと。本音だからこそ、「生」(リアルタイム)であることに価値も出てくる。
リアルタイムといえば、過去に戻れる可能性という点でも、 Twitterって面白いと感じています。もし、わたしが「今日は気持ちがいいなぁ」とか、感じたことを徹底的にツイートしていたとすると、 Twitterの状態を1カ月前のある日に戻せたら、わたしの気持ちもそのときに戻せるんじゃないでしょうか。
「Twilog」みたいなログを遡るのではなくて、タイムラインも、@やRTも、そのときのみんなの関係も含めて全部戻せたら、まるでタイムマシンのようになったりしないですかね。以前の自分はこんなことを感じていたのか、周囲はそれをこう見ていたのか、とかいったことが分かるわけです。それと差分を取るなりバージョン管理するなりするのって、楽しそうじゃないですか?
ことほどさように、Twitterというのは「心の機械」なんだと思うんです。
神田 Ustreamで感じたことは、撮影した映像って、自分1人で見返すことはまずないですよね。1時間撮影して、10分くらいに編集したとすると、もとの1時間の映像はもう見ない。ところが、これをUstreamで流していると、これは何ですかとかツッコミが来て、見返したりするわけです。そういう要素もある。
もっとも、リアルタイムウェブの可能性は、“未来”の部分のほうが大きいでしょう。
遠藤 たしかに、ブログだったら、「これから○○をやります」というブログは少なくて、「○○に行ってきました」という過去のことが大半だったのが……。
神田 Twitterだったら、「初台なう」とかツイートすると、「初台にいらっしゃるなら、これから○○に行きませんか」、「おお、じゃあちょっと行きますか」みたいな話になります。そして、「どこそこなう」だけでなく、「今日はこれに行く予定」とか、「金曜日はこうするつもり」とか、誰もがこれからの予定をツイートしています。“いま”に加えて、これからやることを表現する、これから先に何が起こるのかが分かるという部分に、リアルタイムウェブの可能性を感じています。
いっそ、未来のことしか発信できない、これからやることをだけを宣言していくメディアとかどうでしょうね。
遠藤 単にTwitterでハッシュタグで未来に振り分けるとかでもいいかもしれませんけれど、Twitterよりもさらにシンプルなメディアを作るとか。その人が何をやりたいかだけが上がっているメディアがあったら、相当な商業的な価値が出そうですよね。そういうメディアができたら、HMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)で、前を向くと未来しか見えない、後ろを振り返ると過去しか見えないとかどうですかね?
神田 いや、それはインターフェイスとしては面白いですけれど……。
勢い込んで始めた対談だったが、時間が深夜0時半ということもあって、開始後間もなくこんな状態に……。 |
プロモーションもサポートも、
すべてがここに統合される
遠藤 企業の活用に話を戻すと、米国では2005年ごろに「Dell Hell」(デル・ヘル:デル地獄)という話題がありました。デルのパソコンは壊れやすいというのが、ネット上で祭りになったんです。そこで、デルのスタッフたちが、そういうブログを書いている人たちに徹底的に連絡を取って、これからはこうしますということを一生懸命伝えました。それで、デルのイメージは回復したと言われています。
以前なら、メディアに投書するとか、看板持って立つとかしかできなかったのが、ネットの時代になって、消費者のほうが発言力が強くなったんですね。でも、Dell Hellのころは、かなり苦労して個々に連絡をしていたのが、Twitterというインターフェイスがあったら、初期に消費者とやりとりできます。
Twitterのアカウント1つあるだけで、何かあったらすぐに答えられます。従来のサポートだったら、会議をしてから返答を決めるとかだったのが、Twitterになった段階で、やり取りはいやでもスムーズになってくるでしょう。ユーザーからクレームが来る前に、こちらから探して対処することもできますからね。顧客のニーズも拾えれば、クレーム処理もできる、だから、私は、Twitterって企業に呼吸穴ができたような印象なんですよ。ただ、そのためのノウハウも定石もまだこれからですよね。
神田 その根底にあるのは、顧客の動きに耳を傾けられるかどうかということです。プロモーションやブランディングにしても、広告を出して人々の注目を買うという発想ではなくて、いかにコミュニケーションを取るか、顧客と会話するか、そしてどういう反応が出てくるのかをちゃんと見て行けるかにかかっています。
TwitterやUstreamなど、「リアルタイムウェブ」が当たり前となるこれからの時代に、企業はどのように顧客と接していけばいいのか、いかにソーシャルメディアを運用すべきなのかを考えるセミナー『リアルタイムウェブ時代の企業ブランディング』を、3月29日(月)17時より開催します。リアルタイムウェブの現状とこれからに深い知見をお持ちの方々、実際に最前線でさまざまな取り組みをされている方々が多数登壇され、企業での貴重な事例の数々や、業界関係者による突っ込んだお話を聞ける絶好の機会となります。ぜひご参加ください。
詳細、お申し込みは、↓↓↓こちら↓↓↓のサイトをご覧ください。
『Twitter、Ustream、ソーシャルメディア活用が企業を変える!! リアルタイムウェブ時代の企業ブランディング』
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります