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サイボウズデイズ大阪で聞いた目的ドリブンの業務改善

業務改善の前に立ちはだかる3つのハードルを越える

2019年12月27日 13時00分更新

 12月5日・6日、グランフロント大阪のコングレコンベンションセンターで「サイボウズデイズ大阪」が開催された。多数のセッションが開催され、多数の参加者が学びを得ていた。今回は、6日に開催されたサイボウズ 高橋栞氏によるセッション「ITツールありきで考える時代はもう終わり! 現場主導で始める目的ドリブンの業務改善の進め方」の様子をレポートする。

サイボウズ 営業本部 営業戦略部 高橋栞氏

ハードル1:何をしたらいいのか、何から手を付けたらいいのか分からない

 現場主導で業務を改善していく、というのはよく聞く話。kintone hiveやサイボウズデイズでは、そんな成功事例にたくさん出会える。しかし、実際にチャレンジしてみると、なかなか困難な道のりであることに気がつく。

 サイボウズの高橋氏は、業務改善を阻む3つのハードルを挙げる。第一のハードルは「何をしたらいいのか、何から手を付けたらいいのか分からない」というもの。

「実は、サイボウズ自身がこの壁に直面したことがあります。業務改善を役割とする情シスのメンバーが決まったのに、仕事がなかったんです。人事や総務に行って『僕、業務改善できますよ。改善したいところがあれば、頼ってください』と言ったのに、何の依頼もこなかったんです」(高橋氏)

 そんなはずはないだろう、と考えた担当者は、実際に総務や人事の現場に入り、業務を行ってみた。そうしたら、マクロががっつり組まれたExcelや、そのExcelを動かすために受け継がれた大量のマニュアルがあったそう。改善できるポイントがたくさんあるのに、現場からは特に依頼も相談もなかったのだ。

 「このExcel使うのやめた方がいいですよ」と言うのは簡単だが、その担当者は聞き方を変えたそう。「みなさん、日々イライラしている業務はないですか?」「あればあるだけ全部付箋に書き出してください」と聞いたのだ。

 そうすると、あれよあれよと大量に課題が出てきた。自分から言ってこなかったのは、不便だと思っていたが、毎日使っていると慣れてしまっていたからだそうだ。我慢をしてる意識がないくらいに、やることが当たり前になっていた。ルーチンワークをやるのが仕事だと思い込み、そのための時間を自分の中に作ってしまい、変えようと思うことを忘れてしまうのだ。

 このように問題を把握することに、時間とコストをかけるべきだと高橋氏は語る。サイボウズデイズのようなイベントに来て、いいソリューションや事例、ベストプラクティスを探すのはいいことだが、自社の課題にぴったりものなどそうそうありはしない。自社の問題を整理しないまま、安易な解決に飛びつくと迷走してしまいかねないという。

「そこで、私が紹介したいのが、ワークショップという手法です。誰かがリーダーになって意見を求めるのではなく、5人くらいずつチームに分かれ、付箋に意見を書き出していくのです。先ほどの人事と総務の問題解決でも実施しました。出てきた課題をイライラ度と業務量に合わせてマッピングしました。その上で、みんなが困っていて、イライラしているところから着手していこうという意思決定をしました」(高橋氏)

ワークショップをすると大量の課題を発掘できる

 日々、使っているシステムやルーチンが変わるのはストレスになってしまうが、業務改善の通過儀礼として、避けられないことだという。一般的には、リーダーが決めてトップダウンで動くが、業務改善においては、ボトムアップで決めた方がいい。現場の当事者が業務の改善内容に納得して、自分たちも関わって決めた、と思うプロセスが大事だという。

 たとえば、建設会社のケミカルグラウトは、建設現場の人たちが日々行っている事務作業を効率化しようと考えた。そこでフォーカスしたのが日報業務。全国のいろいろな建設現場では、いろんな人たちがそれぞれに特化したExcelを利用していたそう。中には紙のノートに書いている人もいる。

 業務改善の担当者は、フォーマットがばらばらなので、どこに何を書くのかが分からず面倒だったと判断。業務が楽になるはずだ、とひな形を作成した。しかし、現場からは「(導入は)無理じゃない?」と言う反応が返ってきた。現場は書式が異なっていることには困ってない、と言われたのだ。悩んだ担当者は昨年のサイボウズデイズに来て、ワークショップを軸にした顧問契約型の業務改善サポートサービスを提供している会社と、kintoneの定額開発を主軸にしたSIerというパートナーを見つけた。そして、最初に着手したのがワークショップとなる。

「現場の方を本社に集めて、現場が困っていることをとにかく付箋に書いてもらいました。その課題を整理したところ、確かに、書式統一ができてないことに困っていました。ただ、本当に困っていたのは、貯まったデータを活用できないことでした。検索ができなかったのです」(高橋氏)

ワークショップで本当に悩んでいることを聞き出した

 情報の活用に悩んでいることがわかったので、kintoneでトラブルの顛末を記録するデータベースを作成した。あやうく、書式の統一を目的としたシステム構築をするところだったが、ワークショップを行なうことで、効果のある対策が打てたという。

「自分で問題を決めつけて、現場にシステム導入を押し付けていることはないでしょうか。現場が何に困っているのかわからなければ、業務改善できないはずです。どこで困っているのかをひとりひとりに聞くのは大変ですから、ワークショップで問題を掘り起こしましょう。現場はそれほど考えてないから、と言う人もいますが、実際に巻き込んでみると、あれよあれよと課題が出てきます。そうすると、引き気味で打ち合わせに参加していた人も、前のめりで入ってきてくれます」(高橋氏)

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