2019年12月の第2週、NHKで首都圏直下型地震が起きた際の被害想定を元にした再現ドラマを核とした特集が、4日連続で放送されました。東京にある架空の放送局の報道フロア、ギリギリの状況下での緊迫したやりとりが描かれています。
そこで印象的だったのが、ソーシャルデスクです。縦長のディスプレイいっぱいにTwitterのタイムラインが流れ、それをチェックする役割のスタッフが常駐し、ドラマの中でも人々のツイートの情報がたびたび参照されています。筆者は以前、NHKの報道フロアを訪れたことがありますが、実際にソーシャルメディアをチェックするデスクが存在していました。
Twitterで上がってくる情報をどう捉えるか、というテーマがドラマの中でも描かれていました。いかにして情報の信憑性を担保するかは、我々にとっても報道機関と同様に重大な問題です。なぜなら、その情報によって、個人個人が行動を変える可能性があるからです。
噂レベルの検証できない情報は、正しければリスク回避になり得ますが、間違っていたとしても、混乱を招けば、混乱そのものがリスクに変化します。災害時に限らず、情報によって生死が分かれる可能性が大いにあります。
普段の日常の方が、うまくTwitterを利用している
本連載でも紹介したエピソードですが、筆者が米国カリフォルニア州に住んでいるとき、ヘリが飛んだらまずTwitterをチェックするようにしていました。
何が起きているのかを、報道だけでなく地元の人のツイートで確認し、まず「どこに近づいてはならないのか」を確認します。何が起きているのかは二の次です。その確認が取れるまで、今いる安全な場所を動かないようにします。
たとえば、「9thストリートで銃を持った強盗が逃げている」「高校で銃殺事件が起きている」「暴徒化したデモ行進がユニバーシティ通りを西の方角に向かっている」といった情報を得て、まずそこに近づかないよう安全を確保してから、更なる情報を集めて、次の行動を練る必要があります。
これは災害時でも何でもなく、日常的の中で身の安全を確保するために実践していたことでした。家賃が東京の2倍近くのサンフランシスコ周辺なのに、それだけ治安が劣悪な環境であること象徴しているようでした。ちなみに、Twitterもまた、その環境に本社を置いています。
日本でも同じような使い方をしている方は多いのではないでしょうか。しかしサンフランシスコよりももう少し穏やかで、せいぜい鉄道の運行状況などでしょう。たとえば駅に着いたときにダイヤが乱れていて、何か様子がおかしいと思ったときにTwitterを見ると何が起きて、どんな状況下にあるのかがわかります。こちらの方が身近でイメージしやすいかもしれません。そして日常の方が、そうした冷静に情報を処理して行動に反映させる行動をきちんとこなせている、とも思うのです。
ファクトチェックはユーザーの義務か?
問題はファクトチェックです。Twitterは情報をリアルタイムに投稿し、それが拡散していくメディアです。その拡散される情報の善し悪しについて、Twitterが主体的になって判断しているわけではありません。それは、普段の情報でも、緊急時の情報でも同様です。
たとえば鉄道の状況の場合、路線名やそのハッシュタグで検索すると、運行状況に関する共通のトピックや、複数の人が指摘している同じ事柄が浮かび上がります。刻々と状況が変化するとしても、Twitterほどアクティブユーザー数が多ければ、複数の人のツイートによって事象が裏付けられるかもしれません。
しかしこれを緊急時に、あるいは写真やビデオに対してできるのかが問題です。
前述のNHKの首都直下型地震の再現ドラマでも、工場のガス漏れや河川の堤防の沈下・崩壊といった情報がTwitterから上がり、これを報道で扱うべきかどうか判断に迫られていました。
報道で扱えば、それを見ていた100万人規模の人たちが行動を起こす可能性があり、同時にすでにドラマの中ではデマによって慌てた人たちが積み重なって命を落とす結果を招いていたことも描かれていました。その一方で、報道せず行動を起こさなかった人が二次災害に巻き込まれるケースもまた描かれていました。
確かに個人と報道ではその判断によって起きうる影響の規模がまったく違います。しかし規模の違いだけで、本質はあまり大きく違わない、すなわち情報の受け手がどう判断し、どう行動するかという流れの中での初期の判断に過ぎない、ということです。
Twitterを重視する理由は、判断と行動のサイクルの規模をできるだけ個人レベルにまで小さくし、より細かい判断と行動、その修正を連続的に行える点です。裏を返せば、1つの情報に反応して行動し続けることは推奨できない、ということです。
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