DeNAやメルカリでIT部門を統括していた成田敏博氏が、老舗食品メーカーである日清食品グループにジョインする。ネット企業と真反対とも言えるエンタープライズ企業に転職する成田氏には大胆なキャリアチェンジについて、日清食品グループのCIOである喜多羅滋夫氏には、成田氏を受け入れる背景となるデジタルトランスフォーメーションについて聞いた。この格好で。(以下、敬称略 インタビュアー アスキー編集部 大谷イビサ)
イノベーションの取り込みと組織開発を加速できる人材を求めて
大谷:いいんですか? この格好で進めますが……。
成田:はい。大丈夫です。
大谷:……。
成田:……。
喜多羅:首までとめたほうがいいよ。
大谷:……。では、着慣れている喜多羅さんから成田さんがジョインするまでの経緯を教えてください。
喜多羅:はい。日清食品グループはグローバルでも継続的に成長するために、情報システムの強化を手がけてきました。私も2013年に入社して、それまでの運営主体のIT部門から企画ができる、業務と連携して新しいソリューションを導入できるIT部門に変革してきました。あわせて、新しい基幹システムとしてSAPを導入し、レガシーシステムの撤廃を進め、おかげさまで賞もいくつかいただきました。
ただ、これから先さらに変革を進めて行くには、従業員の生産性をもっと引き上げて、次のステージに引き上げなければなりません。そこではやはりデジタルトランスフォーメーション(DX)が主要活動になってくると思います。
大谷:なるほど。DXの取り組みはこれまでもやってきたんですか?
喜多羅:これまでは若手が手弁当でPoCやワークショップを行なったり、ITヘルプデスクを改善するためのチャットボットを社内展開してたりします。彼らなりによくがんばってはいるのですが、もう一段ギアを上げて加速していかないと、会社が期待している変革やイノベーションの期待値を満たすことができないのが現状です。
日頃から私も「外の勉強会から事例を持ち込みなさい」と若手には言っていますが、うまく持ち込めなかったり、社外に依存しているために、中途半端な導入になったりしています。ここらへんは知見のある人が、組織を引っ張っていかないといけないと以前から思っていました。
もう1つは組織開発です。今まではシステムとプロセスを見る「モード1」系の業務が中心だったので、リーダーもその文化に染まっています。でも、継続的にイノベーションのための事例や知見を持ち込んで、「モード2」の活動を根付かせていこうとすると、組織の変革がどうしても必要になります。もちろん、部門長の私も旗振りはしていきますが、モード2の領域に強く、経験がある人がいたら、もっと速く変革ができると考えました。そこで機会があって、成田さんにお声がけした次第です。
ネット企業で培ってきた経験は他業界でも活きると感じた
大谷:次に成田さんですが、個人的にはネット企業のイメージが強いです。
成田:確かにDeNAやメルカリなど、ネット企業のIT部門のマネジメントを歴任してきました。こういったネット企業の従業員はエンジニアも多いし、リテラシが高いので、自らテクノロジーを探して、仕事に役立てたいという考える傾向があります。こうしたメンバーをリードしていかなければならないIT部門はプレッシャーもあり、先進的なことをやっている自負もあります。
今まで、いろいろな会社と情報収集しながら、先進的なテクノロジーをどう活かしていくか手探りで進めてきました。そんな中、CIOやIT部門長と情報交換する中で、ネット企業でやっていることは他の業界でも役に立つし、逆のパターンもおおいにあると感じていました。だから、どこかで大きくキャリアを変えて、DXみたいなことができればパフォーマンスを出せるのではないかと思っていました。
大谷:具体的にネット企業とエンプラで大きく違うところってどこでしょうか?
成田:情報収集と意思決定の仕方ですかね。私の周囲にいたネット企業の方々は、なにか始めるときに、ほかの会社にすぐに話を聞きます。私もチャットでいろいろなところに「こんなことやりたい」と連絡をとり、その日のうちに情報を集めて、意思決定していました。これをエンプラの方々に言うと驚かれますが、やり出すととても効果あります。以前はベンダーに聞くしかかなったのですが、幅広い情報があると経営陣に対しても説得力があります。
大谷:今回のようなネット企業からエンプラへのキャリアパスを考えたのは、いつくらいからですか?
成田:2~3年前くらいから少しずつ念頭に置き始めていました。実際、DMM.comからLIXILに移った岩崎磨氏のように、ネット企業からトラディショナルな日本企業に移籍して、とても楽しそうにやっている事例もありました。だから、喜多羅さんからお誘いを受けたときは、すごくうれしかったです。ぜひやらせてほしいとお願いしました。
喜多羅:正直、成田さんくらいになると、うちには来てくれないのではないかとあきらめていたんです。だからCIO人脈で話を聞いたとき、転職先を紹介しようと思っていたのですが、どうせならギャップがあるうちに来てもらえないかとお話をさせていただきました。
成田:誰と働くか、どういう考え方で働くかはすごく重要だし、私もできることとできないことがあるので、最大限、自分の実力を発揮できる会社に行きたかった。その点、喜多羅さんがどのようなビジョンでIT部門を変革しているかも知っていたし、共感していました。だから、メルカリでいっしょに働いていた長谷川さんにも、「たとえば喜多羅さんのような強力なCIOのいらっしゃるところで働けませんかね」とか相談していたんです(笑)。
大谷:めちゃ相思相愛じゃないですか。なんだか、こちらが赤面しますね(笑)。
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