毎年、地方都市で開催されるクラウドイベントのJAWS FESTA。首都圏からの参加者はかなり多いし、大阪や福岡、名古屋など他の都市からの参加者もいるし、韓国のAWSユーザーグループのメンバーも実は常連だったりする。スポンサーの場合、出張経費が出るところもあるかもしれないが、自腹で参加している人も多い。ここではJAWS FESTAの取材日記を振り返りつつ、在京のエンジニアがあえて地方のイベントに参加する意義はどこにあるのかを考えてみる。
JAWS FESTAは前日からスタートする
11月2日、札幌で開催されたJAWS FESTA 2019に取材で参加してきた。今回のJAWS FESTAは10時から始まり、懇親会あわせて20時近くまで開催されていたので2泊3日の出張となった。前日の昼に新千歳空港に着き、Facebookを見ると、すでにライターの重森が札幌駅の近くで一杯やっているのでランチで合流。すると、投稿を見たJAWS FESTAの参加者や運営メンバーがなんとなーく合流して前夜祭ならぬ前昼祭が始まる。知り合いが初対面の人を巻き込んできて、SNSでゆるーくつながっていく。
そして、ランチの後は運営メンバーに付いていって、会場を見学する。「やっぱ、北海道寒いっすね」とか、「釧路ラーメンもうまいんすよ」なんて話しながらテクテク移動し、札幌駅と大通り公園の間にある北海道テレビ放送(HTB)にたどり着く。そこで、翌日の会場はもちろん、普段なかなか見られない放送施設やスタジオまで見せてもらった。
タイムラインを見ると、他の参加者も続々札幌入りして、夜は前夜祭になる。北海道なので、食べ物はなんでもおいしい。道民にとっては普通サイズという巨大なホッケやザンギ、あふれんばかりのいくら、ジューシーな牡蠣フライ、具だくさんのお鍋など。久しぶりの仲間とは近況交換、初めての仲間とは自己紹介で盛り上がる。
よくコミュニティ内では家族への説明責任として、「これは仕事なのか、遊びなのか?」という議論がよく出てくるのだが、正直そんなものはどうでもよいと思う。仕事かもしれないし、遊びかもしれないが、とにかくおいしいし、楽しい。特にJAWS-UGは参加者が各自で勝手に楽しむコミュニティなので、用意されるのは機会だけで同調圧力を感じない。個人的にはとても居心地のよいコミュニティだ。
東京で聞ける話も、地方で聞くとなぜか違う話に聞こえる
当日は開始前にスタッフが朝早く集合。JAWS-UGは全国規模のコミュニティなので、地元のメンバーだけではなく、過去にFESTAを運営してきた手練れのメンバーも参加している。黄色いTシャツを着た運営メンバーはてきぱきと受付の準備、会場の設営をこなしていく。
今回会場になったのは北海道テレビ放送の2階スタジオと6階のイベントスペース。基調講演と最後のパネルは2階のスタジオで行なわれたが、さすが放送局ということで音声もすばらしく、セッションに没入できた。6階はセッション用の3つの会議室とスポンサー展示が可能なオープンなスペースで、こちらも多くの参加者が交流できてよかった。
もちろん、本編も非常に充実していた。昨年も登壇したAWSジャパンの亀田治伸さんは気軽にチャレンジできるクラウドの価値をわかりやすく説明してくれた。また、午後の田名辺健人さんの「雲の向こうは、いつも青空」はクラウド時代のエンジニアの生き方を自らの体験とともに語る過去最大級にエモい内容だった。クラウドに仕事を奪われ、いつの間にかクラウドに反発していたという中国のITエンジニアの独白記事を引き合いに、エンジニアはどう生き残るかという話はなんだかとても刺さった。
また、JAWS FESTAでは基本、地元メンバー登壇のセッションを聞くのだが、融雪や農業などでのチャレンジも面白かったし、北海道テレビ放送のサーバーレス事例は、「まさに手軽にチャレンジできて、本番までうまくいっちゃった」という好例だと思った。そして、最後は長谷川秀樹さん、喜多羅滋夫さん、友岡賢二さん、小島英揮さんなど、アウトレイジな面子が一堂に会したIT酒場放浪記パネル。(相変わらず)実名が飛び交いすぎて記事にできない抱腹絶倒な内容だったが、多くの参加者は自由に本音を叩き出せるコミュニティの空気感に感銘を受けたのではないだろうか。
JAWS FESTAの話は、東京で聞けない話も多い。東京に来られない地方メンバーが「地元だったら」ということで能動的に登壇してくれることも多いので、地方課題の理解やネットワーキング作りにこれほどよいイベントはないと思う。そして東京で聞けるような話でも、地方で聞くとちょっと違った印象になるのがなんだか不思議だ。
あえて地方の勉強会・イベントで得られるモノとは?
JAWS-UGでは「懇親会までがイベント」とよく言われるが、JAWS FESTAも懇親会が特に重要だったりする。会議室の壁を取り去り、広くなったイベントスペースで行なわれた懇親会では、寿司職人さんが本場のネタでお寿司をにぎってくれ、北海道のおいしい食事も用意された。ユーザーコミュニティのイベントでここまで豪華なお食事が出るのは、スポンサーのおかげであり、スポンサーしたくなるイベントの価値を作った運営メンバーのおかげでもある。
せわしない都会、日常がこびりつくいつもの地元から離れると、人との接し方ももちょっとオープンになっていくものだ。結果、地元メンバーのおもてなしとも言える懇親会や○次会に参加していくと、参加者同士のバリアはどんどんなくなっていく。地元の人が他の地方の人とつながり、地元の人同士がつながり、若者とおじさんがつながり、違う業種の人同士がつながっていく。そして半年後のJAWS DAYSでそのつながりを深めていくというサークルだ。
そして、札幌に来たJAWS FESTAの参加者は、もれなく観光客でもある。地元札幌のメンバーが「みなさんよくわかっていらっしゃる」とコメントするように、彼ら・彼女らはジョーズのように食べ尽くし、飲み尽くし、地元に戻っていく(笑)。特に札幌はグルメ都市としての実力がすごすぎて、食事の回数が何回あっても足りないくらいだ。イベント翌日も、参加者たちは思い思いに寿司やビールを堪能し、小樽や函館を観光し、お土産をたっぷり買っていく。イベントだけでなく、観光を楽しんで、地元経済にきちんと貢献していくのも、地方イベントの流儀といえる。
こうして見てくると、JAWS FESTAは参加者の熱意も大きいが、得られるものが実に多いイベントであることを改めて認識する。技術やノウハウの習得という学習の機会でもあり、未来を切り拓くパートナーを探す機会でもあり、自身の方向性を調整するキャリブレーションの機会でもある。もちろん記者にとっては希少価値の高いネタと出会いの宝庫でもある。JAWS FESTAに限らず、地元を離れたイベントに参加する意義はけっこう大きいのではないかと改めて実感した。この記事を読んで興味を持った読者はまず地元のJAWS-UGや3月14日に開催が決定した来年のJAWS DAYSにぜひ参加しもらいたい。
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