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「キンボウズ」オーナーによるリアルなkintone導入・活用の実体験

アナログ大好きな医療・介護業界でkintone情報を発信し続ける

2019年11月25日 09時00分更新

kintoneを現場で使ってもらうためには、根回し、仲間探し、実体験

 最初に会ったのは「文章モンスター」。10円とか20円の加算のために、大量の文章を書かなければいけないという。

「ちょっとケアプラン変えるだけで、いろんな人にFAXを送って回収して、それをまた行政に届ける。さらに1~2年に1回監査があって、ちゃんと書いてあるのかを聞かれます。その紙を3~5年残さなければいけないので、そのためだけに倉庫を借ります。しかも、担当者が入れ替わるので、どの紙をいつ捨てていいのか誰もわかりません」(瀧村氏)

京都リハビリテーション病院 地域医療連携室 室長補佐 瀧村孝一氏

 また、「昭和モンスター」はアナログが大好き。メールやSNS、グループウェアよりも電話が好き。診療情報を送る時は、まずテストのFAX送って、届いたら電話して連絡し、本番のFAXが来て、受け取ったら本番が来ましたというFAXを送り返すという信じられないワークフローが構築されているそう。このひと手間だけで30分かかってしまうとのこと。

「クラウド否定モンスターも多いです。データとかクラウドを怖がっているのです。電子カルテもクラウドの時代ですし、iPhoneとかAndroidではみなさんの個人情報はだいたいクラウドに保存してます。それなのに、クラウドは怖いと、否定するんです」(瀧村氏)

 これらのモンスターを退治するために、瀧村氏が実践したのは「準備体操」だ。医療・介護業界は1回稟議を書いてダメだったら、再度同じ稟議を出しにくい空気があるとのこと。最初で通してしまうためには、いかに準備体操をしっかりするかが重要になるという。

「心がけているのは、仲間探しをすることです。kintoneはサイボウズさんが入れてくれるわけではありません。お金を管理している財務部長に言ったり、人事系でいろんな施設と仲がいい室長さんにお話をしに行くとか、根回しをします」(瀧村氏)

 ユーザーの実体験も大切だという。根回しをして導入し、アプリを作っても、いきなり明日から導入しますといっても、ほとんどの人が拒否反応を示すという。そこで、瀧村氏はいろんな部署を回り、kintoneの使い方を紹介した。

kintoneを現場で使ってもらうためには、根回し、仲間探し、実体験の3つが重要

 kintoneでは主に患者さんや業者、そして待機者を管理している。電子カルテや介護ソフトは入院前の人や利用前の人は入れないので、そこを管理したかったという。また、連携サービスを活用して、ベッドの空き状況などの情報を発信することも行っている。

 アプリのデモでは、訪問リハビリテーションを利用して人の管理アプリを紹介してくれた。プロセス管理でステータスを管理しており、日付で絞り込むと当日に訪問リハに行く人のリストが出てくる。たとえば、〇さんが9時から10時までと入力すると、リハビリテーションは20分で1単位なので、自動的に3単位と入力され、売り上げが計算される。職員は日報を書く必要がなく、スマホで入力するだけでいい。

 患者さんの前でスマホをいじっていると不愉快に感じる人もいるそうだが、以前計測した血圧などを参考に、「〇さん、いつも120なのに、今日140ですけど何かありましたか?」など話しているとわかってもらえるという。

 社内では、単にkintoneを推しても「お前が何をわかってるんだ」となってしまうそう。そこで、瀧村氏はkintoneの資格にチャレンジ。1回目の受験では落ちてしまうこともあったが、無事、アソシエイトとアプリデザインの資格を取得した。

瀧村氏はkintoneの認定資格にチャレンジ。1回目は落ちたが、アソシエイトとアプリデザインを取得した

医療・介護業界の顧客からよく言われることベスト3

 最後、医療・介護業界の顧客からよく言われることベスト3が紹介された。

1:セキュリティ問題ないの?

「ExcelだったらPCの中にあるので、開いたら誰でも取れますよね。kintoneならセキュリティかければ取れないです、と言います。根拠は? と言われた時は『IP制限機能』を利用すると言うのですが、理解してもらえません。説明する時は苦労します」(瀧村氏)

「そういったお声をたくさんいただいていたので、今回、医療ガイドラインに対応しているというリファレンスを公開させていただきました。三菱総合研究所さんに調査頂きました」(星氏)

2:始め方がわからない

「僕もさっぱりわからなかったです。kintoneのことを聞こうと思っても、社内にkintoneが得意な人はいません。30日の無料期間を使っても、なにもできずにやめるということが多いと思います。Kintoneヘルプとか、問い合わせから、サイボウズの社員さんとやりとりできるというのは、この前初めて知りまして。そこを目立たせてくれるとありがたいです」(瀧村氏)

「そういった要望たくさんいただいています。そこで、医療・介護業界での活用法を紹介する冊子ご用意しました」(星氏)

3:行き詰まったらどうしよう

「すでに行き詰まっています(笑)。プリントクリエイターやkviewr、フォームブリッジ、カスタマインなどの連携サービスを入れていますが、医療・介護で活用している情報がありません。リアルタイムの年齢の計算をしたいので、カスタマインを入れたんですが、それでも使い方がわかりません。そこで、仲間を探しました」(瀧村氏)

「ツイッターで、ハッシュタグ「#kintoneユーザーと繋がりたい」と検索していただくと、たくさん情報が発信されています。瀧村さんも情報を発信したり、返信したり、コミュニケーションが活発に行なわれています。kintone Caféが全国で開催されていたり、kintone hiveというユーザー同士でアイディアを共有しあう会というのも開催しています。ぜひ、活用して仲間を増やしていただけたらと思います」(星氏)

 医療・介護業界はkintoneという武器を手に入れて、動き出せるときがきたのではないか、と星氏は締めた。

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