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「モンスターからの挑戦状」がテーマのCybozu Days 2019基調講演

進化するkintone、北米進出、自治体導入などサイボウズが最新動向を披露

2019年11月08日 10時30分更新

北米のローコード市場に食い込む米Kintoneの最新動向

 次に登壇したのは サイボウズ米国法人にあたるKintone Corporationの千葉大生氏。長らく米国に住み、英語の方が母国語と言える千葉氏は、2017年に米Kintoneに入社。「アメリカで成功したいという想いは誰よりも強い」と語る。

Kintone Corporationの千葉大生氏

 2014年設立のKintone Corporationは名前の通り、サイボウズ製品の中でkintoneだけを北米に展開しており、現在の従業員45名。本社はロスアンジェルスに置き、ニューヨーク、シカゴ、ボストン、オレゴン、ノースカロライナなどに拠点を構えている。ロゴを含めて、日本とは大きくブランディングも変えているという。

 ITのメッカであり、競合も多い北米で、果たしてkintoneのビジネス機会はあるのか? これに対して千葉氏は、開発者が不足しており、現場での開発のニーズが高いことを挙げる。また、北米の企業ではデータがあちこちに散らばっていることが多い。「シリコンバレーの会社は、ソフトウェアが活用されていそうな気がしますが、現実的には紙やExcelの世界が残っています。特定のアプリを使っているので、データも分散しています」(千葉氏)。そのため、データを統合できるkintoneはサイロ化したデータをまとめるのに役立つという。さらにメールやSlackなどのコミュニケーションツールとも統合できるというのもメリットだ。

北米でなぜKintoneが使われるか?

 そんな北米では、開発負荷の小さいローコード開発サービスの市場が拡大しており、調査会社のガートナーではローコード開発市場で3年連続のエントリ、フォレスターリサーチからもStrong Peformerに選定されているという。顧客としては、在米日本企業のみならず、Uberの対抗馬であるLyftのようなIT企業、教育機関やNPOなどで採用されている。

 事例としては、米国版のKintone Hiveで優勝した創業百年の老舗エンブレムメーカーA-B Emblemの事例と披露。「彼らも業務をExcelと紙で回していた。そんな中、USのパートナーといっしょに300の業務をすべてKintone化して、Kintone Ninjaという業務改善担当がすでに5~6名いる」(千葉氏)と語り、業務改善や現場主体の開発が日本のみならず、米国でも共通の悩みであることがアピールされた。

LGWAN対応で自治体とのチャレンジが増加中

 導入が増えている自治体での事例を紹介したのが、サイボウズ 営業本部 蒲原大輔氏。昨年まで品川区の職員であった蒲原氏は、「役所で仕事していると紙とExcelだらけで非効率だなと感じていました。そんな中、たまたまkintoneと出会い、これを使えば役所の業務は根こそぎ変えられそうだと思い、サイボウズに入社して自治体への導入を進めています」と語る。

サイボウズ 営業本部 蒲原 大輔氏

 まず自治体市場の説明。明治時代は1万5000以上の自治体があったが、昭和と平成の大合併により、現在は自治体も1774に縮小。警察や消防合わせて、職員は277万人となっている。そんな中、少子高齢化やインフラの老朽化、災害対策、交通政策など増え続ける課題に対して、自治体の仕事が増え続けている。一方で、地方公務員の人数は減り続けており、21年間の間に54万人が減っているという。「仕事が増え続ける中、公務員は減り続けている。いかに効率的に業務を回していくかが、自治体共通の経営課題になっている」(蒲原氏)。

 しかし、効率化を進めるためのクラウドの利用において、ネックとなっていたのが統合行政ネットワークである「LGWAN」とインターネットの分離だ。自治体が利用する専用ネットワークであるLGWANは、日本年金機構の個人情報漏えい事件を受けて、インターネットと分離されており、クラウドの利用が事実上難しい状況。そのため自治体は紙やExcelを使わざるを得ず、アンケート一つとっても、Excelで作ったアンケートをメールで配布し、それをまた別のExcelで集計していた。「kintoneであれば一瞬で解決することに、多くの自治体は苦しんでいます」と蒲原氏は語る。

 こうした課題を解決すべく、昨年から取り組んできたのがkintoneのLGWAN対応だ。2019年7月に発表されたkintoneのLGWAN対応では、専用線で直結されたkintone環境とLGWANを専用のプロキシサーバーで中継する構成となっている。このプロキシサーバーは両備システムズとの協業で実現しており、高いセキュリティを実現。結果として個人情報を含むコア業務でkintoneが利用できるようになったという。

両備システムとの協業でLGWAN対応を実現

 こうした取り組みの結果、いくつかの先進的な自治体との協業も生まれている。たとえば、千葉県の市川市ではLINEとkintoneを連携して「来なくてもすむ市役所」の実証実験を進めており、住民票のオンライン申請とLINE Payでの決済が済むようになるという。住民票の申請はすべてkintoneに取り込まれるので、職員はその依頼を確認して、送付すればOKになる。さらに市川市はこの住民票のオンライン申請を横展開しようとしており、460におよぶ住民手続きをリストアップ済み。今後はLINEとFormBridge(トヨクモ)を使って、kintoneを基盤にオンライン申請化を推進していく予定だ。「kintoneという共通プラットフォームを使い、職員が自らアプリを作ることで、スピーディに改革が進んでいる」(蒲原氏)とのことで、今後の展開も期待だ。

 神戸市とは今年の4月に業務提携を発表している。住民サービスのオンライン化を進める市川市と異なり、庁内の業務改善基盤としてkintoneを採用している。現在は全庁でプロジェクトが発生しており、すでに13部署・17業務にて業務改善を展開しているという。また、サイボウズと神戸市が開催したkintoneによる業務改善ワークショップは、兵庫県庁や芦屋市など5市1県が参加した自治体横断の取り組みとなった。「自治体は似た業務が多く、民間のような競合関係がない。みんなで手を取り合って、kintone活用をシェアする『自治体kintoneコミュニティ』が立ち上がろうとしている」と蒲原氏は語る。

 蒲原氏は、「日本の自治体はIT化が遅れていると言われて久しいですが、今日ご紹介したような先進的な自治体、その中の熱い職員の活動によって、着実に変わってきているなと思っています。パートナーのみなさま、ユーザーのみなさまとぜひ自治体を持ち上げていきたい」と語り、セッションを終えた。

 最後、青野氏はkintoneの機能を強化するプラグイン、開発を支援するツール、技術者など、70以上となった展示ブースの一部について説明。「サイボウズとサイボウズのパートナーがモンスターを倒しに行きます」と語り、キーノートを終えた。昨年から登壇者が一新し、開発がイニシアティブをとるプロダクトアピール、北米進出や自治体などのトピックも新鮮で、真新しさを感じる基調講演だった。Cybozu Days 2019は本日も幕張メッセで開催される。

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