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Adobe MAXで登場した「Adobe Aero」がiPadでのAR作りを加速させる

2019年11月07日 17時00分更新

 Adobeは、11月4日(現地時間)からアメリカで開催された「Adobe MAX 2019」に合わせ、iOS向けの新アプリ「Adobe Aero」の提供を開始した。同アプリは、元々は2018年のAdobe MAXでプレビューが公開されていたが、今回正式版としてリリースされた。すでにAppStoreからiOS 13以降を搭載する対応デバイスにインストールできるようになっており、Creative Cloudのメンバーでなくとも無料で利用できる。なお、デスクトップ版のAdobe Aeroについてはベータ版が提供されている。

 Adobe Aeroは、プログラミングを使わずに利用できるAR向けオーサリングツールだ。iPadやiPhoneなど対応デバイスを用いて、AR空間にオブジェクトを配置し、操作に応じたアニメーションを設定できる。ただし、、オブジェクトの作成自体はAeroでは行えないので、オリジナルのオブジェクトを作成するには、同社の「Adobe Dimension」や「Substance」「Adobe Photoshop」などを活用する必要がある。

Adobe Aero

 Adobe Aeroで作成した3DおよびAR作品は、Appleが昨年のディベロッパー向けカンファレンス「WWDC 2018」にて発表した3D/ARフォーマット「USDZ」で出力可能。たとえば、作成した3D作品をUSDZファイルとして共有すれば、対応iPhoneなどでそのUSDZファイルを開くだけでARオブジェクトを表示して確認できる。

基本的な操作方法を解説

 では、基本的な操作方法について順を追って説明しよう。初回の準備としては、「Adoeb Aero」アプリをインストールして起動。そして、アドビアカウントでログインしておく。「ホーム」にあるチュートリアルを一通り操作すれば、準備は完了だ。

 まずは、画面左下にある「+」をタップし、シーンを新規作成する。床などの平面にデバイスのカメラを向け、平面をスキャン。そこから「+」をタップして、オブジェクトを追加していこう。「スターターアセット」としてAR用のオブジェクトが登録されているので、シーンに配置したいものを選択。ピンチアウト・インやスワイプ操作などでサイズや向きを調整し、画面タップで確定する。

平面を検出したら画面をタップ

「+」をタップしてオブジェクトを配置していく

「スターターアセット」からオブジェクトを選択

オブジェクトを配置

 続いて、配置を確定したオブジェクトを選択し、「動作」を追加する。動作を開始する引き金となる「トリガー」を設定し(ここではタップ)、動作として「移動」を選択。どういう風に移動するのか、パラメーターを設定する。

配置したオブジェクトを選択して、「動作」→「トリガー」をタップ

「トリガー」を選択する

「動作」を選択する

動作の詳細を調整する

 画面左上にある「プレビュー」をタップすると、作成したシーンを確認できる。ここではヘリコプターのおもちゃが斜め上に飛び立つように設定したので、画面上でオブジェクトをタップすると、その通りに動き出した。

「プレビュー」をタップし、作成したシーンを確認

ここでは「タップ」により、登録しておいた動作が実行され、オモチャのヘリコプターが移動した

 調整が完了したら、画面右上の共有メニューから出力する。たとえば、「形式を指定して書き出し」→「Universal Scene Description(.usdz)」を選べば、USDZファイルを共有できる。AirDropなどを用いてiPhoneへ共有すれば、iPhoneの画面で3D/ARオブジェクトを表示できる。

共有メニューからUSDZなどで出力できる

ほかのARアプリより
操作がシンプルで使いやすい

 iOS向けの代表的なARオーサリングツールとしては、Appleから9月に提供開始となった「Reality Composer」(無料)も存在する。こちらはより細かくARのシーンを設定できるが、操作が複雑でハードルは割と高かった。それに比べると「Adobe Aero」の操作性はシンプルでわかりやすい。

 また、Photoshopアプリで作成したようなレイヤー構造を持つPSDデータを取り込み、立体絵画のような世界観をAR空間に表示できるため、だれもが挑戦しやすいことも特徴だ。3Dオブジェクトの作り方はちょっとわからない……という人が大多数だろうが、レイヤーを使ったお絵かき、と考えれば実践できる人はいるだろう。

PSDファイルのレイヤー構造を立体的に配置できる

 実際に使ってみた印象として、ちょっと凝った作品に挑戦すると、iPad Proでさえメモリー不足でクラッシュしてしまうなどの課題も見えた。しかし、ユーザーがプログラミングなしでARを作成できるツールとして、先駆的な存在ゆえにその価値は高い。新領域のクリエイターを支えるツールに発展するのか否か、今後のアップデートも見守りたい。さらに、より緻密な編集をしやすいと思われる、デスクトップ版の正式提供も待ち遠しい。

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