サーキットで思いっきり遊んで
そのクルマで帰る
担当者に話を聞くと「サーキットに行って、思いっきり遊んで、ちゃんと帰ってこられる」がコンセプトだそうだ。サーキットに遊びに行くという言葉を聴いた瞬間、きっと脚はガチガチに硬く、ドッカンターボのようなハイパワーに悩まされるんだろうなと思わず身構えた。きっとそんな不安が顔に出たのだろう。担当者は「でも、しなやかな脚なんですよ」と言葉を続けた。
「サーキットまで行く道のりで疲れてしまっては、思いっきりサーキットで遊べないですよね。何よりサーキットで思いきり遊んだ車で快適に帰れる。これが大切なんです」と力説する。
そのしなやかな脚を得るために、NISMOはオーリンズ製の車高調をベースとするオリジナルのサスペンションを開発した。この車高調がなんとNISMO N Attack Package(2019年8月末で受注終了)と同等品なのだとか。だがNISMO N Attack Packageはニュルブルクリンクに合わせたセッティングであったのに対し、国内サーキットにターゲットとしたセッティングに変更しています」と、ここにNISMOの大いなる知見が詰まっているという。
富士スピードウェイで煮詰めたようだが、筑波のTC2000のようなテクニカルなミニサーキットでも、十二分に楽しめると自信を見せていた。しかも、NISMOのこだわりは半端ではなく、なんと純正ランフラットタイヤ(ダンロップ)用と、市販ラジアルタイヤ用の2種類を用意するというから驚き。さらに驚きはそのプライスで、なんと166万1000円! 車高調というと30万円~60万円位の商品という認識だった筆者は、あまりの値段に眼が点になってしまった……。
足回りには、スタビライザーキット(15万4000円)のほか、フロントアッパーリンクセット(11万円)といったパーツも用意されている。足回りで劣化したブッシュの交換もついでにやってしまえば、リフレッシュと共にNISMO流の「しなやかな乗り味」が手に入るというわけだ。
ちなみに試乗車が履いているホイールはMY17のGT-R NISMO純正品(RAYS製)で、タイヤはダンロップだった。
もちろんパワートレインにも手が加えられている。「エンジンのリフレッシュ(オーバーホール)のついでに、パワーアップを希望される方はとても多いです。私たちのS1メニューで、それは実現します」とのこと。エンジンオーバーホール+S1エンジンメニューの金額は230万円~(部品代+工賃、税抜)。気になるパフォーマンスについて具体的な数値は明かされていないものの、MY17と同等かそれ以上は望めるそうだ。
排気系はNISMOのスポーツチタンマフラー(価格未定)とスポーツキャタライザー(価格未定)が装着されていた。このエキゾーストが秀逸で、記憶にあるノーマルのマフラーよりも静かでありながら、アクセルを踏めば誰もが「こりゃぁイイ音だ」というもの。ちなみにマフラーや触媒は消耗品であるというのを、以前マフラーメーカーから聞いたことがある。エンジンに手を入れたら、ぜひマフラーも替えたいところだ。
GT-Rの泣き所はセミオートマチックのトランスミッションなのだという。「現行モデルではトラブルは出ませんが、初期型のNISSAN GT-Rは、ミッションから異音やショックが出るケースが多いです。ですので、初期型ミッションをオーバーホールと共に対策パーツを入れることで、トラブルフリーとしています」とのこと。こちらの工賃は応相談なのだが、ミッション関係に手を入れる際に、機械式のLSDを入れる、というのもアリだ。
ボディーに目を移すと、付けられているエアロパーツに眼が奪われる。担当者は「レースの世界での知見が活かされています」とサラッと語る。この手のエアロパーツで「レースの知見」という言葉は耳タコのフレーズだが、NISMOが言うと言葉の重みがまるで異なってくるから不思議だ。
フロントボンネットはドライカーボン製で現在開発中のもの。ダクトから直接ターボの吸気口に引き込むようなレイアウトを採っているほか、ワイパー近くにはガーニーフラップのような形状が設けられていた。このディティールをみているだけでクルマ好きはドキドキするに違いない。
さらにフロントアンダースポイラー、フロントフェンダー、サイドスカート、リアアンダースポイラー、フィン形状のリアディフューザーは、どこかSUPER GTの車両でも見かけるような形状だ。そしてアドオンタイプのドライカーボン製リアスポイラーがトドメをさしてくる。実際に見ると、本当にカッコよいのだ。
気になる金額だが、開発中のものやオーバーホール工賃がケースバイケースであるため、具体的な値段を記載するのは避けさせていただく。ただ、エンジンオーバーホール+チューンでNOTE e-POWER、サスペンション周りでデイズが購入できる金額であるから、全部注文したら、現行のスカイラインが軽く購入できるような金額になるのは想像に難しくない。しかし、元々の車体金額や、NISMOの技術力や安心感を考えると、納得の額だ。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります