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SPORTS TECH TOKYO「World Demo Day」

電子トレカ、自動ハイライト動画生成、女性の体調管理まで――スポーツの課題にテックで挑むベンチャー12社

2019年11月25日 06時30分更新

選手を認識して関連グッズが変えるAIファンエンゲージプラットフォーム

 ファンエンゲージでは、動画に写っている選手を認識して、関連したコンテンツ配信などを行うインドのedison.aiも選ばれた。

 AIを使ってプレイヤーをリアルタイムに認識し、文脈に基づいたコンテンツの配信、他のファンと画面上で動画を共有したり、チケットやユニフォームなどグッズの購入ができる。「ファンがスポーツをオンラインで閲覧したりエンゲージする方法を変える」とCEOのAshok Karanth氏。

 すでに大手スポーツ放送局と協業しているほか、フィラデルフィアベースのComcast NBCUniversal LIFT Labs Acceleratorにも参加しており、Comcastとの協業を進めているもようだ。アメリカンフットボール、バスケ、サッカー、クリケットなど多様なスポーツで利用できるという。

 STT参加のメリットについて、Karanth氏はメンターへのアクセスを挙げ、日本でもプロジェクトをスタートできそうだと続けた。

 今後は、スポーツのファンエンゲージから拡大して、ビデオタグなどの機能を追加する。将来的にはスポーツ以外にも、エンターテインメントやニュース、ブランドなどにも拡大していきたいという。

CEOのAshok Karanth氏。アメフトリーグ、NBAなど多数のパイロットが進んでいるという。

由来は旧ソ連のアスリートパフォーマンス研究

 アスリートのパフォーマンス改善の分野では、すでに多数の顧客を持つOmegawaveから紹介したい。Omegawaveはフィンランド・エスポーに本拠地を持つ。首都ヘルシンキから15キロほどのところにあるエスポーはNokiaが本社を置いたことから、技術やサイエンスの拠点となり、Rovio Entertainment、Supercellなどの企業もここを拠点とする。そして、Omegawaveを率いるCEO、Gerard Bruen氏はNokia出身、他にも元Nokiaの幹部が参画している。

 技術そのものは、旧ソ連時代にソ連がアスリートのパフォーマンス改善に向けて進めていた研究を土台に、数々のリサーチペーパーに基づいたものを商品化した。測定するものは神経信号と心拍データ。心拍変動、自律神経系バランス、ECG分析、EEG分析を通じた中枢神経系などを評価する。これらのデータから、その日にどれぐらいのトレーニングをすべきか、どのタイプのエクササイズをするのかを提案する。提供はサブスクリプション形式。

 STTへの参加により、日本トライアスロン連盟、ファジアーノ岡山、電通キャタピラーズの両サッカーチームが試験導入を決定した。

 これまで中国では引きがあり案件もあったが日本にはなかなか入れなかった、とBruen氏。「電通が正しい人に合わせてくれたことで、4つのミーティング全てで成果を生むことができた」と満足顔で語った。

測定には専用のセットを使う。

Cardiac Systemから見た体調の推移を示す。

CEOを務めるGerard Bruen氏。

女性に特化したパフォーマンス管理

 パフォーマンス管理でも女性に特化したのがWild.aiだ。創業者のHelene Guillaume氏はそれまでコンサルタントとして金融業界でデータを扱っていた。同時に自分自身がアマチュアとしてマラソンやアイススイミングなどに真剣に取り組む中で、体調をもっと科学的に管理したいと思ったことが立ち上げのきっかけ。

 当初は性別を問わずデータを集めていたが、女性のデータは男性とは全く異なることに気がつき、女性のみに限定してサービスを設計した。女性アスリートはGarminなどのスポーツ向けデバイス、ランニングやサイクリングの追跡ができるサービスStravaなどからデータを収集すると、今の状態にあったトレーニングプランを得られる。

 現在、「まもなく」というベータ公開に向けて作業中。エンジェル投資家などから220万ドルの資金を得ており、今度さらなる資金調達を目指す。オフィスはGuillaume氏の本拠地であるロンドンとサンフランシスコの2ヵ所。

創業者兼CEOのHelene Guillaume氏。

スポーツ向けのウェアラブルデバイスからのデータを分析し、アプリでその日の状況にあったトレーニングを知らせてくれる。Apple Watch対応も予定しているという。

腸内細菌からアスリートをサポート

 腸内環境などという言葉があるが、腸内細菌がアスリートのパフォーマンス改善に役立てようというのがFitBiomicsだ。スポーツテックというより、バイオテックの要素が強いが、アスリートのパフォーマンス改善にフォーカスしている。創業者の1人、Jonathan Scheiman氏はハーバード大学で4年間バイオメディカルを研究しスピンアウトした。

 独自DNA技術を用いてアスリートの腸内細菌を分析し、パフォーマンスや回復に役立つ腸内細菌のDNA配列を割り出す。これを利用して、食事療法を改善し、最終的にはコンディションを整えてパフォーマンスを高められるという。

 まだプロトタイプ段階だが、最終的にはアスリートだけでなく、一般消費者にも拡大を図る。「コンシューマー向けのヘルス&ウェルネス市場は4兆2000億ドル市場」とScheiman氏。STTに参加して、スポーツチームなどに紹介してもらうなど貴重な機会を得たという。

Jonathan Scheiman氏は博士号を持つ創業者兼CEO。大学時代にバスケットをやったこともあり、アスリートにフォーカスした。

アスリートの腸内細菌を分析し、最終的には成分として商業化する。

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