西海岸に比べると、
やはり安くて美味しい日本の外食
日本に8年ぶりに引っ越してきて、少なからずいろいろなお店に行っています。ベイエリアに比べると、日本の飲食店は安くて美味しいのです。
ランチにチキンを乗せたサラダをバークレーで頼むと20ドルになってしまう上、10%弱の税金と18%前後のチップで合計25ドルぐらい支払わなければならないのですが、この値段を東京で出すとちょっとしたランチコースを2人で楽しめてしまいますよね。
それより驚いたのが、価格が安い側の食事。たとえば8年ぶりに帰ってきたら、牛丼チェーンの松屋の牛丼やカレーが無添加になっていて驚きました。つまり、米国でいうところの「No MSG」っていうやつです。
米国では食品について「Organic」「Vegan」「No MSG」「No GMO」といったキーワードが並びます。それぞれ「有機栽培」「ベジタリアン」「化学調味料不使用」「遺伝子組み換え食品不使用」を意味しますが、これらはすべて付加価値につながり、1つマークが増えるごとに10~100%のレンジで価格が上昇していきます。
「無添加」を「No MSG」に脳内で変換して、380円の牛丼に味噌汁までついてくると考えると大変驚かされます。いや、日本に戻ってきて落ち着いた身とすれば、完全に米国のコストの高さがおかしいだけなのですが。
米国の食事が高いのは、カリフォルニアにおいては完全に人件費の問題です。というのも、スーパーマーケットに行けば、肉も野菜も、日本より安いぐらいで、自炊さえしていれば、米国の食費が高いとは思いません。それを調理したり配膳する人の人件費、さらにレストランの場合、さらに税金とチップが発生するから、価格が高くなってしまうのです。
人手不足で大活躍のペッパー店員
人件費の高騰は、日本でももてはやされるカリフォルニアのスモールビジネスを尽く破壊している最中で、カリフォルニア料理のレストランやアイスクリームショップなど、お気に入りのお店がいくつもなくなってしまいました。
一方、日本でもあらゆる業種で人の採用が厳しいという声が聞かれ、人手不足の状態が進行しています。問題の発端は違いますが、日米ともに人手不足の問題は共通している課題と言えます。
そんなことを考えながら日本に帰ってきて「はま寿司」というチェーンのお寿司屋さんに行ったときのこと。店頭で出迎えてくれたのは、あのロボット「ペッパー」でした。
はま寿司の半被のユニフォームをきて「いらっしゃいませ」と少し甲高い声で出迎え、胸元のボタンで順番待ちか、予約済みかを尋ねてくれました。順番待ちを選ぶと横にあるプリンターから番号がプリントされ、待合室へ案内されます。
順番が来ると、天井に吊るされたディスプレイに番号が点灯し、ペッパーくんには10種類の寿司ネタが表示されます。先ほど発見された番号に書かれた寿司ネタを選ぶと、新たなレシートが発見され、その番号の席へ行くよう促されます。
東京都内、神奈川県内、愛知県内と3ヵ所のはま寿司に行きましたが、どの店舗でもペッパー店員が出迎えてくれました。これぞ本気のペッパー導入を見た、という感じです。
クラウドと実店舗をまたにかける
ペッパーは東京でもときどき見かけるものの、どうしても物珍しさを稼ごうという意図が透けてしまうことが多い印象が強いのです。そこにペッパーくんは必要なんだっけ? マスコット的に使われているというか……。
これは別にペッパーが悪いのではなく、導入する企業が「試しに」の域を越えられなかった結果だったのではないか、と思います。「良く言えば可能性は模索したが、業務全体に変化をもたらしたわけではない」ことが、顧客として接する筆者に伝わってしまっている、ということです。
そうした不遇のペッパーが多いだけに、はま寿司のペッパーは実に生き生きと働いていて、つい応援したくなってしまいます。それだけでなく、はま寿司が全国500余の店舗で、寿司チェーンにつきまとう、順番待ちから席への案内までをペッパーに任せる決断ができた。そのことを評価すべきではないかと思いました。
500店舗のペッパー代は単純に計算すると、年間3億3000万円ほどになるはずです。1ヵ月30日間、12時間労働で計算すると、時給152円。都市部では時給1000円を超えてきていることを考えると、これにシステム開発費や維持費がかかるにしても、受付に常に張り付かせる人を複数人雇うローテーションよりも安くなります。
しかも、受付の会話のやりとりに英語や中国語、韓国語などのモードを加えれば、語学のスキルがある人を探す必要もなくなります。さらに、ペッパーはウェブ予約と目の前で並んでいる人を同時にさばいてくれます。
個人的には、接客は人にしてもらいたいと思うタイプです。その前提を持っていたとしても、はま寿司のペッパー店員の活躍はロボットが企業に入っていく非常に良い事例になっていると思います。繰り返しになりますが、ペッパー店員の成功は、現在のロボットの性能云々ではなく、企業の決断力、ワークフローに対する創造力の勝利だと思います。
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