週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

シャープでキリリと立った解像感、Noble初の完全ワイヤレス機「FALCON」がすごい

2019年10月18日 16時00分更新

 エミライは10月18日、米Noble Audioの完全ワイヤレスイヤホン「FALCON」の製品説明会を開催した。FALCONは、ハイエンドのIn Ear Monitor(IEM)で有名なNoble Audioとしては初の完全ワイヤレスイヤホンだ。

Noble Audio初の完全ワイヤレスイヤホン「FALCON」

 開発は約2年前にスタート。移動中の車中で、Nobleブランドの設立者で、聴覚医師・聴覚学者のジョン・モールトン博士が、エミライ代表取締役社長の河野謙三氏に「完全ワイヤレスイヤホンの開発に興味はないか」という問いかけられたのがプロジェクトの始まりだったという。説明会の冒頭でエミライの代表取締役社長 河野謙三氏が挨拶。「Nobleの新たな挑戦になる製品として、ハイエンドイヤホンメーカーにふさわしい音質を試行錯誤のうえ生み出した完全ワイヤレスイヤホンである」と、FALCONを紹介した。

 Noble Audioは過去にBluetoothイヤホンの開発も手掛けており、モールトン博士自身完全ワイヤレス型イヤホンに関心を持っていたとする。しかし、いくつかの課題もあった。

 ひとつは各国で販売するための法的な手続きや、リチウムイオン電池を積んだ商品を大量に輸送する手続きについてだ。これは、規模の小さなNoble1社では難しく、こうした手続きをフットワークよくこなしてくれる、協業先エミライの存在が必要だった。

 もうひとつが音質だ。Noble Audioの製品は多数のBAドライバーを巧みに使いこなし、ワイドレンジで忠実度の高い再生音を出す点が特徴だ。一方で完全ワイヤレスイヤホンは、使用するドライバーが異なる。ここはまず、DSPを利用して、トップエンドのKAHNに代表される、Noble Audioの有線イヤホンの特性を計測し、理想とする周波数特性に合った再生音にし、さらにドライバーの違いによって生じる音の差を細かくつぶしていく作業(ファインチューニング)が必要になる。

 この際に重視したのは、低音のかぶりによって中高域の明瞭度が下がる悪影響を極力なくすことだ。モールトン博士の言葉を借りると、「低音のマスキングによって、中高域の明瞭度を下がっている実態が多くの機器で見受けられる。それを音の濁りと私は呼んでおり、超低域の扱い(カットオフ)が重要になる」とのことだ。ここは聴覚学者としてのモールトン氏の知見と、地道な試行錯誤による調整の成果が大いに生かされた部分となる。

 実機で音を確かめてみたが、確かに中高域のキリリと立った、シャープで解像感の高いサウンドはNobleらしさを存分に感じた。後述するように、FALCONは実売で1万円台後半の機種となり、20万円を超す高級製品もラインアップに持つNobleの中では非常に安価なものとなるが、それを感じさせない充実したサウンドを聞かせてくれる仕上がりになっている。

 FALCONの企画意図や特徴についてはエミライ取締役の島幸太郎氏が解説。

 完全ワイヤレスイヤホンには、音楽再生を途切れさせない「接続品質」の高さ、音楽の感動を伝える優れた「音質」、ストレスなく没頭できる「使いやすさ」という3点の課題がある。2年間の研究開発を通じ、これらすべてを高い水準で満たし、Noble Audioの有線イヤホンに匹敵するサウンドを実現。その理想に到達した最初の製品がFALCONだと紹介した。

 それぞれを個別に見て行く。

 まずは「接続品質」。新たなデバイスとテクノロジーを取り入れた。Bluetooth用のSoCには低消費電力と性能を実現できる、クアルコム最新チップ「QCC3020」を採用した。aptXなど高音質コーデックへの対応に加え、クアルコム独自技術の「TWS Plus」にも対応。これは左右のイヤホンがスマホと直接個別に通信することで、左右またぎによる音切れを防げる技術だ。スマホ側の対応も必要だが、シャープのAQUOSシリーズやソニーモバイルの「Xperia 1」といった機種もでてきた。加えて、制御用ソフトも最新世代になっており、接続安定性の向上につながっているとする。

TWS Plusに対応していないスマホでも、左右のイヤホンのうち、バッテリー残量の高い方に接続し、トータルの利用時間を延ばす仕組みは持っている。

 「High Precision Connect Technology」は、Bluetoothの帯域に最適化したアンテナの設計技術だ。部品選定だけでなく、イヤホンを装着した際のアンテナの位置関係や角度といった通信状況を含めた最適化をしている。特にアンテナ基板の取り付け位置にこだわったそうだ。

 次に「音質面」。“Wizard”チューニングと称し、“感動領域”の音質を目指したという。最終的なチューニングは、ジョン・モールトン氏が担当。最適なアコースティックダンパー、DSPによるドライバー特性の微調整を加えている。アコースティックとソフト処理の掛け算でFALCONの音質が完成したとする。

 新採用のDLCドライバーは一般的な樹脂(PET)層にカーボンファイバー層を重ねた2層構造の振動板を使用している。よくあるPET素材にグラフェンコートした振動板に比較して、歪みは1/2、伸びやかな高域の表現が可能だ。強度や内部損失、軽量性のバランス調整がしやすいのが特徴で、分割振動や機械的な変形といった音質に悪影響を及ぼす要素を抑えられる。また、DLCドライバーの採用は防水の面でも有効だったそうだ。

 付属するイヤーチップは、ePro audio製のホーン形状イヤーチップ「Horn-Shaped Tips」となる。完全ワイヤレス用に設計された薄型のチップで、シリコンとグラフェンの混合素材を使用している。

ノズルはかなり長めだが、顔からアンテナ位置が離れるため感度的にはいいと思われる。

 「使いやすさ」については「急速充電」「防水性」「専用アプリ」の3つがポイントだ。FALCONは、15分の充電で2時間使用、60分で10時間使用の急速充電に対応。充電ケースにはUSB Type-C端子を装備。ケース自体も90分と比較的短い時間ででフル充電できる。この状態で、イヤホンを3回充電できるため、最長40時間の利用ができる計算だ。

 防水性については、イヤホンを装着したまま生活できる点に配慮し、IPX7対応とした。IPX7は、外気と水中の温度差が5度未満の環境で、1mの深さに30分沈めても動作に支障がでないものとなる。

 iOS/Android用の専用コントロールアプリは年内の公開予定だ。ボタン割り当てやEQ機能、OTAファームウェアアップデート機能を提供し、FALCONを使いやすくする。

 最後に、サポート体制についても2点紹介。1つが「紛失安心補償サービス」という、イヤホンの片側もしくは充電ケースのいずれか1つをなくした場合に8000円(税抜)で新品に有償交換してもらえるサービスだ。また、専用コールセンターを設け、10月23日から使い方や修理の窓口対応するという。

OPPO Find Xと並べたところ

LEDで光るNobleのロゴがなかなかスタイリッシュだ

 FALCONの価格はオープンプライスだが、店頭での販売価格は1万6800円(税抜)になる見込み。発売は10月25日で、取扱店舗で16:00から予約を受け付けている。また、一般販売に先立ち、全国の専門店・量販店でFALCONの先行展示も実施している。

■関連サイト

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります