こんにちは、弓月ひろみです。IT系の記事を書くことが多いですが、食べること、飲むことも大好き。そんな気持ちが高じて、日本の酒文化を楽しむ情報発信ブログ型メディア「ほろのみ」のプロデュースもしています。誰にとっても「食」は関心ごとですよね。
外食の課題はテクノロジーをどう使いこなすか
少し前ですが、9月25日に東京ミッドタウンホールにて開催された「FOODIT TOKYO」に参加してきました。「外食産業の未来が生まれる場を作ろう」という趣旨で2015年にスタートし、以来毎年開催されているカンファレンス。飲食店におけるテクノロジーの最新動向やノウハウなどをシェアする、未来へむけて議論する場になっています。
FOODIT主催事務局によると、スタート当初は「飲食店の現場のIT化をすべきかどうか」という議論がメインでした。そこから5年が経った現在は、外食業界を取り巻く環境が急速に変化し、フードデリバリーサービスや電子マネーといったテクノロジーの台頭で、IT化を前提としつつ、「テクノロジーをどう使いこなすか」という議論をすべき時代に突入しているそう。
会場では、外食産業の未来を拓くリーダーたちによる講演・パネルディスカッションが実施されました。
今回は、FOODIT TOKYO 実行委員長であり、10月に「外食逆襲論」(幻冬舎)を上梓した株式会社トレタ代表取締役・中村 仁さんの講演をリポートします!
Google上で検索→予約 顧客のニーズにあったサービス
まずは、トレタが提供する、新しいサービスについて。
最近、食べログを上回る勢いで人気になって来ているのが、Googleでの店舗検索。特に若年層の人気が高まっているんだとか。
トレタの「Googleで予約」は、Googleでの検索画面から店舗を見つけ、予約までスムーズに行えるというサービス。Googleカレンダーへの追加や、GoogleMapでの道順検索も一括でできます。これはユーザーにとって、かなり便利なシステムですね。
続いて、「飲食の現場から電話をなくしたい」の思いでスタートしたという「トレタCC」について。
トレタCCは、飲食業界における働き手不足の本格的な解決のためのサービスです。
予約や問い合わせなど、飲食店には絶えず電話がかかってきます。しかし、その度にオペレーションや接客が阻害されることになります。トレタCCは、この現状をなくすため、予約や問い合わせ対応などを一括してアウトソーシングできるとか。コストとしては時給400円程度で、専門スタッフがいるのと同様の電話対応が期待できるわけです。
さらに、超直前予約の「トレタナウ」。
トレタナウは、ドタキャンなどで空席がある店舗と、急な宴会や大人数の二次会で場所を探す人をマッチングするサービスです。
アプリを使うことで、「最短10分後」に入れるお店のスピード予約が可能。都心限定のサービスとして、半年前にiPhone先行でスタートしました。中村さんによると、利用者平均年齢は34.5歳でリピーターが多く、平均単価も3777円と比較的高めです。今後、導入店が増えることで、ユーザーの利便性があがることはもちろん、急なキャンセルがあると大きな打撃を受けてしまう店舗の救世主となることが期待されます。
飲食店は「顧客」中心にシフトせよ
サービスの紹介に続いては、「外食逆襲論」の著者である中村さんならではのコンテンツ、「外食産業の歴史について」のお話です。
外食産業は、急激な成長を遂げ、多様化してはいます。それでも、飲食店の現場のノウハウは80年代半ばとほとんど変わっていません。中村さんは、これを「失われた30年」と呼んでいます。
今後どのような飲食店が求められるか。これまでは、メニューや空間づくりに新規性や奇抜さが求められ、店舗自体の価値を高めることでお客さんを呼び込む、いわば「商品の時代」でしたが、今後は「顧客の時代」がくると中村さんは言います。
「顧客の時代では、主語が“店舗“から“顧客“に移ることが特徴で、顧客体験との共感が重要視されるようになります。また、顧客との関係も、消費される短熟な関係から、永続的な関係性に変化していく必要があります。今後、店舗経営は顧客にどんな体験を提供できるかを、考え直さなければならないでしょう」(中村さん)
飲食店のIT化は“今”始めるべき
最後に中村さんは、今後「IT化」を進めようと思っている飲食店の人たちに向けて、次のように語りました。
「現在は、店舗探し・予約・決済に至るまで、様々な”IT化サービス”があり、何を取り入れたら良いか、悩みがちです。ここで明確にしておくべきことは、”お客様にどんな体験をもたらしたいのか”を常に意識することです。そのスタンスを明確にした上で選ぶようにすると良いでしょう」
中村さんが教える、8つのポイントは下記の通り。
1.目的を明確にし、ツールに振り回されない。
2.自社開発でなく、「SaaS」を使う
3.ツールを業務に合わせるのではなく、業務をツールに合わせる
4.欲張らない。100%主義に陥らない
5.機能の豊富さは「お得さ」ではないと知る
6.導入はゴールでなくスタートである
7.今日から始める、今から始める、まずやってみる
8.トップがコミットせよ
まず飲食店は、目的を明確にすること。その上で、時間もコストもかかる自社開発を辞め、SaaS(クラウドや月額課金のシステム)を使おうと提案します。この提案には、コストダウン以外の意義もあると中村さんは言います。
「皆で1つのサービスを使うことで、バラバラだった店舗の問題や失敗が共有されることになります。これは本来チェーン店で行われていたことですが、SaaSを使えば、”業界全体で問題を共有し解決する”スピードが高まります」とのこと。
また、たくさん機能があれば良いというわけではなく、自分たちのオペレーションに、そのツールがあっているかを見極めるべきであり、欲張ってはいけない、とも。これが「業務をツールに合わせよ」ということです。お得なサービスが自社に合うとは限らないので、内容を精査する必要があるということですね。
サービスは、導入したことで安心してしまい、そこがゴールだと思いがちですが、導入して満足しないようにしなければならないと、中村さんは強調していました。
「どれを導入しようかと迷って、導入が遅れてしまうよりも、データ収集の為に“今”はじめましょう、そしてトップがコミットせよ。マインドを変えて動け!」これが、IT化を成功させるポイントのようです。飲食店業界だけでなく、どの業界にもあてはまることかもしれません。
――以上、中村 仁さんの講演のリポートでした。外食産業の未来がどうなるか、食そのものや食文化を大切にする立場として注目していきたいです。
弓月ひろみ(@yuzukihiromi)
タレント・ライター。IT系の記事を書くことが多いが、たんなるレビューではなくデジタルやITで人の暮らしが幸福になる使い道を考え、伝えることを心がける。毎日2時間の入浴もiPhone・iPadと一緒。iPhoneケースを300個以上所持するiPhoneケースコレクターであり、女性向けiPhoneケースの商品開発なども手掛ける。iPhoneケースとアートのイベント、iPhoneケース展主宰。
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