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自動運転の基礎 その12

自動運転に5G通信が絶対必要なワケ

2019年10月08日 09時00分更新

2020年以降に5Gが普及すれば
自動運転は大きな進化ができるだろう

 次世代通信として、もう実用化が間近になっている5G通信。特徴は、「速く」「遅れなく」「たくさん」と通信できることだ。従来の4G(LTE)通信と比較すると、通信速度は1Gbpsから20Gbpsと約20倍になり、遅延は10msから1msと約1/10に。そして接続デバイス数は、1平方キロメートルあたり10万が100万と約10倍になる。

 こうした5Gの優れた特性は、当然、自動運転にも大いに貢献する。まず、自動運転に必須となるのが従来のカーナビ・マップとは比較にならないほど詳細な3Dマップデータだ。ある程度の量のデータはクルマ側に置くことになるが、全国すべてを網羅した3Dマップデータを車載するのは現実的ではない。また、現実世界の変化にあわせて頻繁な3Dマップデータのアップデートが必要だ。そこで重要になるのが大容量データを高速で通信できる5Gである。

 無人の車両を遠隔操作するのにも5Gは活躍する。現状の交通法規では、完全に無人な車両が公道を走行することは禁止されている。許されているのは、遠隔操作の車両のみだ。しかし、現在の4G(LTE)の環境下での遠隔操作は、どうしてもタイムラグが生じてしまうため、走行可能なスピードは15㎞/hほどが上限になるという。それ以上の高速走行だと、何かがクルマの前に飛び出したときにブレーキ操作が間に合わなくなる。5Gになり、通信の遅延が少なれば、それだけ運用速度を高めることが可能になるのだ。

 また、自動運転技術は、単独車両の走行だけではなく、もっと大きな可能性を秘めている。それがV2X(Vehicle to Everything、クルマとモノの通信)だ。

 たとえばクルマとクルマで通信をすることで、複数の車両の隊列走行や事故の防止を実現する車車間の通信。そのほか、信号などとクルマが調和して走行する路車間の通信。さらには歩行者の携帯デバイスとクルマが通信でつながっていれば、携帯デバイスを手にした歩行者が道に飛び出てきても、クルマはそれを察知し、回避することも可能になるだろう。そうした可能性を実現させるのも5Gの役割となる。

 さらに、5Gが実用化されることで、自動運転のクルマとサーバーが通信のやりとりを頻繁かつ濃密にできるようになれば、さまざまな新サービスが可能になる。トラフィックを調整することで渋滞を減らし、事故を予防する。また、乗員に対するサービスも次々と生まれてくるだろう。CMを交えることで、お金を生み出すビジネスの誕生も期待できる。

 ただ、クルマが無人で移動できるだけでは、ビジネス的なうま味は少ない。通信を使った新ビジネスの創生が自動運転の醍醐味と言えるだろう。そのためにも自動運転には5Gが必要となるのだ。

 ちなみに5Gと高速の移動体は、技術的には相性が悪い。5Gは大量のデータをより遠くに送信するために、電波をビームのようにユーザーに飛ばす。ユーザーが移動すると、それを追いかけるように電波を飛ばす方向を調整するのだ。そして、ユーザーが隣り合わせの基地局に移動すると、基地局同士でユーザーを受け渡すハンドオーバーを行なう。当然、ユーザーの移動速度が早いほど、ハンドオーバーは難しくなる。そして、それをトラブルなくできることが通信事業者の技術となるわけだ。そのため世界の通信事業者は、熱心にハンドオーバーの技術を磨いている。

筆者紹介:鈴木ケンイチ


 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。



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