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ASUSジョニー・シー会長が語る「ZenFone 6の産みの苦しみ」

2019年08月27日 10時00分更新

 SoCにSnapdragon 855搭載のハイスペックなスマートフォンであるだけではなく、回転するフリップ式カメラや5000mAhの巨大なバッテリーを内蔵するASUSの「ZenFone 6」はどのような経緯で生まれたのか。8月20日に都内で行なわれたASUSの日本向け新製品発表会の会場で、同社のジョニー・シー会長に話を伺った。

ASUSのジョニー・シー会長自ら日本の発表会にかけつけた

「最高のスマートフォン」の実現は
困難の連続だった

 まずはスマートフォンのカメラを飛び出すように回転させるZenFone 6の独創的なアイディアはどうやって生まれたのだろうか。そもそもZenFoneシリーズといえば、当初はコストパフォーマンスを重要視した、高性能・低価格を売りにした製品が多かった。しかしZenFone 6は「他社にはない独創的なアイディアと実用性を両立させた」とジョニー・シー会長は自信を持って説明した。

ジョニー・シー会長もZenFone 6のでき栄えには十分満足しているという

 ASUSの生い立ちはPC用のマザーボードの設計・生産であり、ASUSの社内には今も自分たちですべてを作り上げようというエンジニアリング精神が流れ続けている。しかし、シー会長によると優れたエンジニアたちが集まれば素晴らしい製品ができるというものではないという。実は技術のイノベーションはエンジニアたちが生み出すのではなく、消費者のフィードバックが生み出しているとシー会長は考えている。消費者が何を欲しがり、どのような機能に満足し、あるいは不満を持っているのか。いわゆる「デザイン思考」をここ10年間製品作りに取り入れ、創業以来のエンジニアリング精神に融合させていったという。

 コスパモデルから出発したZenFoneは、やがてカメラの強化やハイスペックCPUの搭載など、ハイエンドモデルもラインナップへ加えていった。しかし昨今のスマートフォン市場は、シャオミなど中国メーカーの台頭により、競争はより激化している。シー会長は「中国メーカーの台頭に対抗するためには消費者が納得する“最高のスマートフォン”を作り上げなくては太刀打ちできない」と危機感を持ったという。

ZenFone 6のカメラギミックは、他社にはない唯一の存在だ

 では最高のスマートフォンとはどんな製品なのか。その答えのひとつがディスプレーの視界を遮るものがない「フルスクリーン表示」(シー会長)だ。昨今の各社のスマートフォンを見てみると、フロントカメラを小型化してディスプレーの上に小さく埋め込む「水滴型ノッチ」の採用が進んでいる。

 また、ディスプレー内にカメラの穴のみを開けた「パンチホール」型ディスプレーを採用した製品も多い。シー会長は「それらはiPhoneよりノッチの幅は狭いものの、結局はディスプレーの表示領域の一部にカメラが存在している。つまり“ノッチの亜流”にすぎない」と評する。つまりASUSの考える最高のスマートフォンに、水滴型ノッチやパンチホールディスプレーの採用はありえないことだった。

 フロントカメラを廃止すればフルスクリーン表示ディスプレーの実現は可能であり、中国メーカーを中心にポップアップ式のフロントカメラを搭載した製品も増えている。ポップアップ式カメラは「ここ最近のスマートフォンでは1つの大きなイノベーション」とシー会長は認めるが、このアイディアを採用することは「他社の後追いに過ぎず、開発チームとしてもそれは不名誉なこと」(シー会長)と判断し、採用は見送られたという。

 ではフロントカメラをどのように隠せばよいのだろうか? しかも、他社とは異なる技術を開発しなくてはならない。この困難な挑戦に対し、開発チームでは14個のモックアップを作りその形状を検討していったという。そのタフな開発過程の中で、ZenFone 6に採用されることになった180度回転式のポップアップカメラをシミュレーションした結果、「最高のスマートフォンにはこの機構がベスト」になったという。

ZenFone 6の設計アイディアモックの1つ。パンチホールディスプレーを採用した

 だが世界初と言えるこの機構を製品化するのは困難の連続だった。スマートフォンの小さいボディーの中に、動くカメラを搭載するということは、1つのパラメーターを変えれば他の部分にも影響が及び、それに対処すればまた他に問題が生じてしまうのだ。

 こうして「フルスクリーンディスプレー」「回転式カメラ」の搭載を決めていったものの、その次のステップでは製品の品質、信頼性、本体サイズなど克服する問題がまだまだ山積みだった。だがここでASUSの最初の本業、すなわちマザーボードの開発ノウハウが生かされる。通常スマートフォンのマザーボードは1枚構造だが、ZenFone 6では「2枚のマザーボードに分割することでカメラやバッテリーのスペースを巧みに生み出した」(シー会長)のだ。

 また本体の厚みをいたずらに薄くしようとするのではなく、「本体側面をダイヤモンドカット構造にすることで薄く見える工夫もした」(シー会長)という。

 そのためには側面のベゼルに金属素材を使うことになり、それは本体内部のアンテナ感度に大きな影響を与えてしまう。このようにZenFone 6が生まれてくる過程は、困難がまた困難を生み出す連続だったが、最終的に生み出された製品は「最高のスマートフォン」と呼ぶにふさわしい仕上がりと言える。シー会長は困難を乗り越えこのような製品を作り上げた開発チームを誇りに思うと話したが、ZenFone 6の実機を見ればよくぞこのような製品を作り上げたものだと筆者も感服してしまう。日本での販売も出だしから好調のZenFone 6、ぜひその完成度を店頭で試してほしい。

ASUS「ZenFone 6(ZS630KL)」の主なスペック
価格(税抜) 6万9500円(6GB+128GBモデル)
8万2500(8GB+256GBモデル)
ディスプレー 6.4型液晶(19.5:9)
画面解像度 1080×2340
サイズ 約75.4×159.1×9.1mm
重量 約190g
CPU Snapdragon 855 2.84GHz
(オクタコア)
内蔵メモリー 6 or 8GB
内蔵ストレージ 128 or 256GB
外部ストレージ microSD(最大2TB)
OS Android 9
対応バンド LTE:1/2/3/4/5/7/8/18/19/26/28
/38/39/41/46
W-CDMA:1/2/3/4/5/6/8/19
4バンドGSM
DSDS ○(DSDV)
CA ○(5CC)
VoLTE ○(ドコモ、au、ソフトバンク)
無線LAN IEEE802.11ac(2.4/5GHz対応)
カメラ画素数 アウト:48メガ+13メガ(超広角)
/イン:同上
バッテリー容量 5000mAh
生体認証 ○(指紋、顔)
SIM形状 nanoSIM×2
USB端子 Type-C
カラバリ ミッドナイトブラック、トワイライトシルバー

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