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そろそろ完全ワイヤレス型、という人に

弱点らしい弱点が見当たらない? ソニー「WF-1000XM3」が快適かつ高音質

2019年07月23日 18時00分更新

 完全ワイヤレスイヤホンが人気だ。ケーブルから開放されるのは言うまでもなく快適。ただし、従来製品には課題もいくつかあって、手放しでオススメできる機種はほとんどない状況だった。

 ただ、技術の進歩というのはすごいもので、ここ半年ぐらいの新製品を見ると、そんな状況がかなり変化してきていると感じる。ここで紹介するソニーの「WF-1000XM3」は、そんな完全ワイヤレス型の課題に積極的に取り組んでできた機種だ。

左右またぎをなくし、通信の安定性を得る

 WF-1000XM3は、2017年秋に発売された「WF-1000X」の後継機種だ。高いノイズキャンセリング性能など、ほかにはない特徴を持っているが、ここでは敢えて「通信の安定性」や「遅延」の軸から紹介したい。

 接続性の面での特徴は「左右またぎ」の課題に正面から立ち向かったことだ。

WF-1000XM3の通信方法(ソニーのサイトから)

 具体的には、スマホ→マスタースレーブという従来の通信方法に対して、スマホ→マスター、スマホ→スレーブの通信を並行して実施する方式にした。つまり、2台のBluetooth機器(つまり左右のイヤホン)に対し同時にステレオ信号を送り、受信側で左右の信号に切り分ける仕組み。1台のスマホに対して左右のイヤホンが同時につながることによって、左右またぎせずに通信ができるようになった。

 似た方式にクアルコムの「True Wireless Stereo Plus」(TWS+)がある。TWS+対応をうたう完全ワイヤレスイヤホンも市場で増えてきているが、この方式は、スマホ側のCPU(SoC)もクアルコム製であるという制約がある。

 シャープの「AQUOS R3」など、対応機種が増えてきたが、まだまだ一部で、iPhoneのように、そもそもクアルコム製チップを搭載する可能性が低いメーカーも存在する。

 ソニーの場合はこの制約がなく、機種を問わず安定した通信ができる点が利点だ。クアルコムのようにバッテリー寿命を長くするため、左右のイヤホンのうちバッテリー残量の多い方と優先的につなぐ技術はないが、左右またぎや、片側に偏った電池消費など完全ワイヤレス型の弱点がない。

街中でも十分な安定性を感じられた

 2017年の秋に発売となったWF-1000Xは、多機能かつリーズナブルな価格で話題を集めたが、通信の安定性の評判はあまりよくなかった。WF-1000XM3では、この種の不満はほぼ感じないレベルとなり、非常に実用的となった。

従来モデルのWF-1000X

 記事執筆に合わせて、秋葉原や渋谷と言った人の多い場所や、夕方の混雑した電車などで使ってみたが、完全ではないものの音楽再生などはほぼ途切れることがない。近い環境で別の完全ワイヤレスイヤホンを使うと、ホームに立っているだけで再生が困難になる場合があることを考えれば、大きな改善と言える。

 最初に述べたように、完全ワイヤレス型で絶対に途切れない製品を探すのは困難だが、本機であれば、少なくとも大きな不満は感じないレベルだ。

 ただし気になったこともある。ひとつは位相ズレだ。編集部には電波を発する機器が多いため、あまり通信環境が良くない面もあるが、たまに左右の音がズレたりプチっとした途切れが発生することがあった。左右がスマホと独立して通信するのがWF-1000XM3の特徴とはいえ、ステレオ再生をするためには信号の同期が必要である点は変わりない(つまり、左右が全く通信しないわけではない)。ここが関係しているのだろう。

 遅延についてはどうだろうか。音楽や動画の再生をするぶんには問題がない。ほかのBluetoothイヤホンと同様に、スマホの楽器アプリで演奏や打ち込みをしたり、タイミングがシビアなゲームアプリなどを利用するのは難しい。一般論として、aptX LowLatencyなど低遅延のコーデックを利用して改善を試みているイヤホンもあるが、AndroidなどOSの仕組みにも依存する部分なので、現状ではあきらめるしかない面もある。

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