Chris Lee氏「入らないならIntelの規格にすればいいじゃん」
Chris Lee氏は「第3世代Ryzenは7nmプロセス、信号速度も帯域も2倍のPCI Express 4.0、コアが多くてパフォーマンスが最高だ」とセッションをスタートした。まず電源回路への負荷を挙げ、ゲーマー向けであったり、高負荷&安定性の両立を目論むユーザー向けのX570 Phantom Gaming XやX570 Taichiは、14フェーズを採用。
Dr.MOSは2基のMOSFETとICをワンチップ化したもの、60Aパワーチョーク、ニチコン製キャパシタなどを実装している。またメインストリームでも10フェーズであり、Dr.MOSの採用などメインストリームながら高耐久路線であることをアピールした。
全モデル共通する強化ポイントとしては、電源コネクタと基板、チップセットクーラー、フレキシブルI/Oシールド、M.2ヒートシンク、スチールスロット強化のアナウンスもあった。まず8ピンと24ピンの電源コネクタが強化されており、従来よりもピンが太く、内部ピンの材料にもこだわり、CPUからの電力要求に応えている。
チップセットクーラーは、これもASRockのこだわりポイントとなっており、エアフローと静音性を重視したものを採用。ファンコントロールは最適化されており、とくにタッチする必要はないとのこと。なお製品寿命は50,000時間。
フレキシブルI/OシールドはChris Lee氏曰く、シールド一体型I/Oパネルが入らないPCケースがあることを知り、X軸とY軸、Z軸に遊びのあるものを開発。これにより、ほとんどのPCケースで問題がなくなるそうだ。実機を見てみると分かるが、格段に遊びが増えている。
M.2ヒートシンクはUltra M.2からHyper M.2に進化した。PCI Express 4.0に対応するM.2の発熱に対応するために、鋳造されたヒートシンクを採用している。諸条件は不明だが、Chris Lee氏によるとヒートシンクがない場合はさっさと75度になってしまったが、Hyper M.2を使用した場合は40度付近に落ち着いたという。
これは3基のM.2ポートを持つX570 Taichiでも同様だそうだ。ちなみに、ライターの大原雄介御大よりPhisonのコントローラーは28nmプロセスであり、貴様が考えているスワップ領域にする作戦では悲鳴を上げてしまう可能性が高い。そこで油没というメッセージを受け取っているので、そのうち漬けたい。
基板は2OZカッパー。基板層に2OZの銅箔層があり、エネルギー効率の向上と温度の低減、信号品質の改善に役立てられている。スチールスロットは地味ながら重要なアップデートが実施されており、アンカーポイントを4つから6つに増やして、重量が増えていくばかりのGPUボードに対応している。
限定モデルであるX570 AQUA。パッと見て気がつくのは、チップセット用冷却ファンがないこと。オール水冷仕様であり、CPUと電源フェーズ、チップセットをまとめて冷却できる作りだ。さらに水冷モジュールのI/Oは1ポートとなっており、冷やすところは増えても、楽に実装できる点がポイント。なお展示されていたモデルのシリアルは002/999とあり、COMPUTEXで展示されていたものだった。
X570 Creatorは、クリエイター向けとしてライトアップ機能はない。下部のスイッチが生存確認用に点灯するくらいだ。X570 Creatorは当初、ローンチに合わせる予定だったそうだが、試作段階で様々な方面から「なぜ光るのか。作るモノは派手だが、PCまで派手になる必要はない」と言われ、LED回路を削ったところ、設計に余裕ができたため、安定性や性能をさらに追求した結果、なんとかRyzen 9 3950Xに間に合わせたい感じのスケジュールになっているそうだ。ECCメモリに対応しているため、8K連番RAWに苦しむ映像方面から人気が出そうである。なお、底部に1ポートだけRGBがあるので光らせたい人も安心。
X570 Phantom Gaming-ITX/TB3は小型でパワフルな環境を求める人に楽しみな1枚と思われる。それに呼応するかのような変態的な誕生プロセスがChris Leeによって語られた。上記写真を見てもわかるように、ギリギリなレイアウトなのだが、当初はプラスチックパーツがどうしても邪魔でレイアウトが14フェーズの実装が上手く行かないとなり、Chris Leeは「じゃあ、金属にしちゃえばいいじゃん」で解決した。
しかし、今度はリテールクーラーを固定するパーツが入らない問題と衝突。そこで「じゃあ、Intelの規格を使えばいいじゃん」といった具合に落ち着いたそうだ。とても変態である。メモリスロット4基版も出ないかな。
Q&Aは短時間ながら、濃いやり取りが行なわれた。まずはX470マザーボードの第3世代Ryzenの状況。100以上のチェック項目があり、すべてクリアすることが条件となっており、Ryzen 9 3900は検証中の段階だそうだ。現時点でも動かないわけでないとも触れていたので、X470でCPUだけ換装して様子見を考えている人は、対応リストの更新を待つか、突撃するといいだろう。SNSの動向を見るに問題らしい問題は生じていないようだ。
次はコストカットの話。質問者はASRock製品は以前のバージョンの良いところを上手く引き継ぐことでコストカットを実現している発言があったと踏まえたうえで、X470からX570へのアップデートでどこを流用したのかを質問した。なんていうか、プレス向け発表会なノリである。
Chris Lee氏は、言える範囲での回答は「刷新部分が大半で流用はほとんどない」。その代わりに広告をピンポイントにしたり、担当エンジニアを厳選したり、壊れにくいマザーボードにすることでサポートコストを低減といった部分でX570のコストカットを実現しているそうだ。
最後は純粋なオーダーとして、白いマザーボードが欲しいだった。これも次のモデルのときにあるかもしれないとだけ端的に答えていたので、割と期待値は高そうである。
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