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横浜市経済局「第11回横浜ベンチャーピッチ」開催

位置情報で周辺地域とリアルタイムでつながるSNS

2019年06月17日 11時00分更新

 横浜市経済局によるベンチャー支援施策「横浜ベンチャーピッチ」が2019年6月11日にパシフィコ横浜会議センターで行なわれた。11回目を迎えるこのイベントは、ベンチャー企業がベンチャーキャピタルや金融機関、大企業などのオーディエンスに対して、事業計画やビジネスモデルをプレゼンし、マッチングを促進させるもの。

 事業の成長・発展に意欲があり、優れたビジネスモデルや独自技術を有している10年以内の横浜市内の中小・ベンチャー企業、もしくは横浜市内で事業展開を考えている中小・ベンチャー企業が登壇の条件だ。さまざまな募集テーマのなかから、毎回選定された5社程度が登壇。今回は、「地域活性やマーケティング」をテーマとしたベンチャー企業が登壇した。

スポットチェックインでクーポン配布
散型ジオソーシャルSNS「PREZENCE」

ギルガメッシュクラウド 長谷川恵子代表取締役

 横浜市青葉区を拠点とするギルガメッシュクラウドは、数多くあるジオソーシャルには、リアルタイムで同じ空間にいる人同士がコミュニケーションできないことから、位置情報を活用したジオソーシャルアプリ「PREZENCE」を開発。当初は近くにいる人どうしのコミュニケーションツールとして考えていたが、ビジネスシーンにも大いに活用できると判断。店舗のスタッフとユーザーとをつなげたり、店舗周辺にいるユーザーへの情報発信を行なえるアプリとして発展させようとしている。

 アプリを起動すると現在いる地点のマップが表示され、スポットがあればチェックインしたり、店舗からのメッセージを見られコミュニケーションも取れる。もしスポットがない場合でも簡単に登録できる仕組みが用意されていて、スポットが登録されていれば、周辺ユーザーへ情報発信もできる。

スポット周辺にいるユーザーに対して、これまでのソーシャルメディアではカバーできなかったことを実現

 ビジネスシーンを意識した機能としては、スポットにチェックインしたユーザーに先着順でクーポンを発行する仕組みを加え、店舗やイベント主催者が自由にインセンティブを設定可能。マーケティング手段のひとつとして活用できるようにした。現在イベントやプロモーションなどで実証実験してもらえる企業を募集している。

 また、リアルタイムに店舗周囲にいる人へリーチできる点を活かし、たとえば横浜DeNAベイスターズが勝ったらドリンク1杯無料にしたり、ライブ終了時に合わせて限定グッズプレゼントするなど、スポット周辺半径数100mにいるユーザーへプッシュ通知する機能を設けることを考えている。

スポット周辺にチェックインしたユーザーへ向けて情報発信

 今後は、レコメンド機能やビックデータの活用、モバイル決済可能などプラットフォーム化に向けていくとしているが、課題としてはユーザーと提携先の店舗や企業などを獲得していくこと。ユーザーも店舗(スポット)側も得られるメリットがなければ一気に増やしていくことは難しい。1月に搭載されたクーポン機能をフックにして、ユーザーもスポットも拡大していくことを期待している。長谷川代表も「当初はユーザーがコミュニケーションをする場を設けたいという思い出作りましたが、ビジネス向けに価値があることに気がついたことで先が開けたと思う」と語った。

PREZENCEを介して店舗側から情報発信し、見込み客へリーチ。ユーザーどうしのコミュニケーションに留まらず、ビジネス向けの価値を見出した

 この手のサービスは、みんなに利用されるようになるまでが難しい。ある意味、文化を作りあげることであり、そのための施策をどうしていくかが今後の課題だろう。

インフルエンサーやアイドルとマッチング
マーケティング支援する「Char☆me AS」

ホイップ 川久保邦彦代表取締役/CEO

 横浜市中区に拠点とする株式会社ホイップは、商品を宣伝するための手段をリーズナブルな価格で効果も高いマッチングプラットフォーム「Char☆me AS」を提供している。近年、さまざまなPR手法が生まれたが、それにともない費用も増加。どのくらい効果があったかが見えてこないと、なかなかお金もかけられない。

 Char☆me ASは、広告主が依頼要件として登録。登録された情報をもとにメンターとマッチングし、メンターがコンテンツを拡散するアンバサダーシステムだ。メンターは、YouTuberやアイドル・タレントなどが登録されていて、エイベックスやソニー・ミュージック、ビクターエンターテイメントといった芸能事務所とも契約している。これによりSNSやYouTube、テレビなどさまざまなメディアで拡散が期待できるとする。

事務所と組むことで、アイドルやタレント、お笑い芸人などともマッチングできる

 基本的にインフルエンサーは、自分たちで映像をつくりつつ、ファンコミュニケーションを重視したコンテンツ作りをする。そうして発信されたコンテンツは、ファンが心を動かされれば動かされるほど、より拡散される。広く拡散されれば、インフルエンサーにも広告主にもWin-Winの関係になるというわけだ。また、これまでこうしたインフルエンサーを通じたPRは、広告代理店を経由が多かったが、それが省かれるぶん費用が安くすむという。

商流はYouTubeと同じようなモデルを考えている

 PR媒体として交通系広告と連携できないか模索している。都心部ではすぐに枠が埋まるが地方ではなかなか難しい。そこでO2Oとして体験に結びつけることができるのではないかと考えている。ただ、従来の広告収益モデルとは違うため、一緒にビジネスモデルを検討は必要とした。

 川久保邦彦代表は「広告というといろんなアプローチがあると思いますが、エンタメ体験を付与することで、さまざまな心を動かす体験を世界へ向けてできます。PRコンテンツで日本を盛り上げ、世界中の人とよりシームレスにつながることを目指したい」と語った。

福岡発全国展開を目指す
夜のお店を安心して利用できる予約サービス「Nomy」

ノミー 名平睦美CEO

 福岡の中洲でスナックやクラブを経営していた名平睦美代表は、スナックを経営していたときの経験から「Nomy」という夜のお店専門のサービスを立ち上げた。

 福岡の中洲には2000件の店舗があるがスナックを検索しても6件ほどしかヒットしない。また、ピークタイムとアイドルタイムの差が激しく、人件費だけが出ていくことも。そこで、このサービスは、アイドルタイムとして登録した時間帯だけ予約できる仕組みで、60分コミコミの定額料金というリーズナブルな値段で利用できるようにしている。

 LINEbotのサービスも開始し、がチャットでお店を紹介。予約も取れる仕組みになっている。この業界は1兆円規模のマーケットがあり、より拡大させたいと名平睦美代表。福岡で軌道に乗ったら、ほかの地域での展開をしたいとした。

市場規模は1兆円ほど。店舗数はコンピニの2倍あるという

宙に浮かんだように見える3D映像で集客
次世代デジタルサイネージ「Phantom 3D Hologram Display」

Life is Style 木村秀一取締役

 2016年のCESで映像が宙に浮いているデモを見たことから、大貫誠代表と今回登壇した木村秀一取締役が映像の世界が変わると確信し、「Phantom 3D Hologram Display」が生まれた。仕組みとしては、十字に並べられたLEDを高速で回転させ、点灯をコントロールすることで、残像作用を利用して映像として見えるようにしたもの。モーター音はするものの、中に浮かんだように見えるのが特徴だ。データはSDカードを本体にさし、Wi-Fi接続したスマホのアプリで再生コントロールする。

フルカラーの映像が宙に浮かんだように見え、かつ立体感もあり、コンテンツ次第でかなり注目を集めそうだ

 すでにアディダスやパナソニックなどイベントや広告で利用されており、通常のデジタルサイネージに比べても注目率や広告到達率は高いとしている。現状はイベントでの利用が主流なため、長く広告を配信するツールとして利用してもらいたいと木村秀一取締役は語った。

通常のサイネージに比べても注目率は高いという調査結果も

 単独だけでなく、複数台連動して大型のディスプレーとしても利用可能。設置場所や用途に合わせて、さまざまなサイズで提供できるとした。

その時の気分に合わせたひとりごはんを
料理写真で見つける「dippa!」

ホーン 松本直樹代表

 飲食店を検索するサービスはいくつかあるが、意外と検索して見つけるまでの手順が面倒。とくにひとりで食事したいときは、近くの店舗でメニュー重視な美味しいものを食べた買ったり、1人でも入りやすく、サクッと食べたいといった思いが働く。そこで、店舗で絞るのではなくメニューで簡単に決められる検索サービスが「dippa!」だ。

 アプリを開くと、4つの料理写真が表示され、メニュー写真を比較しながら選べるのが特徴。「がっつり」や「さっぱり」などの気分での絞り込みもできる。こうした食事選びは、店舗側にもメニューで勝負するという新たな戦い方ができると言う。たとえば、その日の日替わりメニューをアピールできたり、時間帯や健康志向など特化型メニューを作ったりなど、ほかの検索サービスでは紹介されないところでも勝負できるようになる。

料理の写真がメインで表示され、サクサクと選べる仕組みになっている

 今後、外食メニューのデータベースNo.1を目指すとともにユーザーからの投稿やレコメンド、店舗からの投稿システムを構築していき、暇な時間にマッチングするように表示をコントロールできるようにする予定だという。まずは「おひとりさま」に特化し軌道に乗ったら次のビジネス展開を見えてくるとし「美味しいもの探しは冒険だと思っています。ユーザーさんが駅ごとや街ごとの魅力を発見してくストーリーを一緒にやっていくパートナーを見つけたい」と松本直樹代表は語った。

 この横浜ベンチャーピッチイベントは、今年度、今回を含めて4回開催される予定だ。横浜市は今2019年1月にイノベーション都市横浜を宣言。主催する横浜市経済局経営支援課の中村氏は、「現在、新たなベンチャー支援拠点を関内地区に整備する予定です。オープンイノベーションによりさまざまな団体や企業、大学などが集まり、ベンチャーを支援することで横浜から皆さんとともに新しい価値を生み出していきたい」と語り、今後一層ベンチャー支援を充実させていくはず。今回は横浜市を拠点とするベンチャーは2社だったが、神奈川スタートアップアクセラレーションプログラムなどのサポートも併せて活用し、横浜発のベンチャー排出の拡大に期待したい。

横浜市経済局経営支援課 中村氏

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