ID管理のAuth0、CI/CDのCircleCI、決済のストライプジャパンがタッグ
「三種の神器」でISVやスタートアップのSaaS化を支援するプログラムが始動
2019年6月3日、Auth0、CircleCI、ストライプジャパンの3社はSaaSビジネスとサブスクリプションビジネスの推進を目指す「Go_SaaS 三種の神器」プログラムの提供を開始した。SaaSの開発で必須でありながら、車輪の再開発でもある「ID管理」「CI/CD」「決済」の3つを「三種の神器」と定義し、利用の障壁を下げる施策を共同で展開していく。
ISVがぶちあたるSaaS化の壁を乗り越えるための施策を展開
「Go_SaaS 三種の神器」はAWS上にシステムを構築しているAuth0、CircleCI、ストライプジャパンの3社によるISV・スタートアップの支援プログラムになる。アマゾン ウェブ サービス ジャパントの共催セミナーやワークショップ、無料の導入支援、無料利用クーポンなどを通じて、日本におけるSaaSビジネスとサブスクリプションビジネスの迅速な立ち上げと、本業に集中できる運用環境の構築を支援するという。
発表会には3社のビジネスにエバンジェリストやマーケティングサポートという立場で関わる小島英揮氏が登壇。国内でのSaaS市場の成長と国内市場の縮小を見越したグローバル化の必然性を指摘し、既存のISVやスタートアップがSaaS化に進むための課題を解決するための取り組みとして、今回のプログラムが生まれたと説明した。
続いてアマゾン ウェブ サービス ジャパンでパートナーアライアンスを統括する阿部泰久氏が登壇。小島氏と同じくSaaS市場の成長率についてアピールした阿部氏は、ほとんどのISVが顧客の要求でSaaS化に取り組んでいるという調査報告を披露。また、パッケージ比べてSaaSビジネスの粗利率が年々向上している実態をアピールした。
AWSにとってみれば、ISVのソフトウェアビジネスのSaaS化やSaaSスタートアップはクラウドの利用を拡大するには必須の取り組みだ。現状、AWSではISVがSaaSに向かうステップとして、①クラウド上で既存のソフトウェアの稼働をサポートするというBYOL(Bring Your Own License)、②顧客ごとに独立したインフラでサービスを提供するシングルテナント型SaaS、③複数の顧客を同一のインフラ環境で提供するマルチテナント型SaaSに分類しているが、このステップをなるべくマルチテナント型に進めたいというのがAWSの方向性だという。
しかし、SaaS化は単なる課金モデルの変更ではなく、サービスの提供モデル自体が大きく変わるため、開発体制も運用を見据えたDevOpsや継続的なインテグレーション(CI)が必要になってくる。また、ライセンスもコードからIDベースに変更する必要があり、課金モデルも単なる月額固定課金ではなく、ユーザーのニーズや利用動向に合わせた動的なサブスクリプションが必要になる。クラウドを使い慣れたスタートアップの場合、当初からマルチテナント型SaaSで設計されることも多いが、パッケージソフトを扱っていた既存のISVはBYOLやシングルテナント型SaaSからスタートすることが多く、組織やビジネスで大きな変更を必要とする。こうしたSaaS化に向けての技術的、コスト的な課題、そして組織文化的な課題を解決するのが「Go_SaaS 三種の神器」になる。
ID管理、CI/CD、決済の3つのノンコアサービスをセットで啓蒙
ISVやスタートアップがSaaSを開発するにあたって、ID管理、CI/CD、決済などを担うのが、今回のGo_SaaSで連携する3社だ。特にマルチテナント型SaaS・サブスクリプションを実現するためには必須だが、ある意味「車輪の再開発」ということでSaaSの事業者が自社開発してしまいがちな機能でもある。
ID管理を担うAuto0(オースゼロ)は、開発者向けのWebやモバイル、レガシーアプリケーションに向けて、ユニバーサル認証・認可を提供するID管理プラットフォームを提供する。2013年に創業されて以来、グローバルで7000を超える顧客を持ち、大型の資金調達も成功させている。シングルサインオンや多要素認証、ソーシャルログイン、ユーザー管理、漏えいパスワードの検出などの機能を開発レスで実装でき、65種類のSDKを提供しており、現存のほとんどの環境に組み込めるという。
2つ目のCI/CD(継続的なインテグレーション)はクラウド型CI/CDサービスを提供するCircleCIが担う。「アイデアからサービス提供するまでの時間を最短にする」を目的にするCircleCIは、ユーザーがコードをコミットするたびに、ビルドが実行され、依存関係のチェックやテストなどを実行。本番環境までのデプロイ作業を自動化することが可能になる。CircleCI カントリーマネージャー 森本健介氏は、「このプログラムを通じて、アジャイル開発やDevOpsの導入を促進していきたい。無料版の提供やハンズオンで支援していく」と語る。
3つ目の決済を提供するのはストライプジャパンだ。グローバルではAmazon、Spotify、Google、Uberなどの大手が採用しており、最近はサブスクリプションモデル導入を目的とする企業も多い。グローバル対応の決済基盤とアプリケーションから構成されており、定期支払いビジネスのインフラである「Stripe Billing」では開発者がさまざまな請求要素を組み合わせることでサブスクリプションモデルを構築できるという。今回のGo_SaaSでは初回決済額250万円分までの決済手数料、初回決済額1億円までのStripe Billingの利用料を無料にするいう。
3社のビジネスは、本業にフォーカスするための「ノンコア」サービスを開発者向けに提供するという点、コミュニティ活動にフォーカスしている点、基盤にAWSを採用している点で共通している。AWSのGo_SaaSプログラムで扱うID管理、CI/CD、課金の3つはマルチテナントのSaaSビジネスを展開するのには必須の機能でありながら、「意外と知見を持ってないところ」(小島氏)とのこと。Go_SaaSのプログラムでは、これらノンコアSaaSを三種の神器としてまとめ、定番のツールとしてISVとスタートアップに啓蒙していく。
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