(1)テレビドラマが遂にヨーロッパ進出
日本のテレビドラマ番組がヨーロッパに売れるなんて、と関係者は感慨しきりである。日本テレビの人気ドラマシリーズ『Mother』『Woman』が、フランスのプロデューサーに見出され、リメイク版が制作されるとの契約内容が、MIPTV期間に発表され、関係者が驚くことしきり。これまでももちろん日本からのドラマ輸出は盛んだが、それは比較的文化圏が近いアジアが中心で、文化の異なるヨーロッパで日本ドラマが売れたなんて、信じられないという面持ちだ。
そもそも番組輸出の大宗はアニメであり、ヨーロッパにも『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『ONE PIECE(ワンピース)』は昔から進出している。ところが、これはドラマ、もっともヨーロッパには不向きと言われた分野なのだ。
リメイク権を購入したフランスの有力プロダクション、 INCOGNITAのCEO、Édouard de Vésinne氏は、「『Mother』も『Woman』も、サスペンスに満ちたドラマです。母であること、愛、家族……と世界共通なエモーショナルなテーマを扱っています。フランス市場で、2020年の第2四半期に放送開始をめざして制作します」と語った。
『Mother』『Woman』のプロデューサー・次屋尚(つぎや ひさし)氏は「母になるという女性の生き様は、世界共通です。坂元裕二氏の脚本は台詞がしっかりとあり、ストーリーが明快です。もともと海外でも受ける構造的な要素があったのですね。もうひとつのポイントとして『Mother』『Woman』は日本の普通のドラマと異なり、ゆっくりと展開し、たっぷり見つめ合う時間が長いのです。これもフランスに受け容れられた理由でしょう」と分析する。
実はフランスで受け入れられた背景には、すでにこの2作品がトルコで大ヒットした実績がある。2016年に『Mother』(日本では2010年放映)の現地リメイク版が視聴率1位、ゴールデンアワーの占有率20%を超える大ヒット。現在も『Woman』(2013年)のリメイク版がメガヒットを打っている。
なぜトルコで? 次屋氏が解説する。「母物は人なら共通に興味を持ってもらえるテーマですし、トルコ人のメンタリティーが“行間を読む”“空気を読む”的な部分で、日本と共通点が多いこと、現地プロダクションの制作力がひじょうに高かったことが、大ヒットを得た要因です」。トルコは世界的なドラマ輸出国であり、 トルコ版『Mother』は世界35ヵ国に、『Woman』は24ヵ国に輸出されている。日本→トルコ→フランスと玉突き的に、『Mother』と『Woman』は世界に拡大している。フランス版は単にフランス国内での展開だけではなく、広くEC圏内に拡がる可能性も高い。日テレも鼻高々だ。
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