クリスチャーノ・ロナウド、ネイマールJrなどの人気サッカー選手が登場する「FIFA 19」は、ゲーム市場もっとも売れたビデオゲームという。開発したのはElectronic Arts(EA)。実は、ゲームは開発からローンチ、その後の運用にあたって32拠点にまたがる78チーム、約600人が関わった一大プロジェクトの成果であり、そこでコラボレーションツールのSlackが大活躍したという。Slackの年次イベント「Flontiers 2019」で、その舞台裏が明かされた。
ローンチまでの28日間でやりとりしたメッセージは11万6000件
EAは2014年からのSlackユーザーだ。同社の社員は約1万人だが、デイリーアクティブユーザーは1万3000人。全従業員に加え、重要な契約社員やパートナーも利用しているという。
Slack上で1日に39万ものメッセージ、9000件のファイルがやりとりされているというが、EAのIT担当バイスプレジデントGobi Parampalli氏によると、FIFA 19こそSlackがもっとも活躍した事例という。FIFA 19はモバイルを含め、合計で2億6000万件を販売したが、これはビデオゲームとしては過去最高の数となる。
FIFA 19のローンチまでの28日間のSlack上のやりとりの図からは、このゲーム開発に多くの人が関わったことがうかがえる。ゲームデザインチームのやりとりから、コアのゲームエンジン開発チームが加わり、ローンチが近づくとパブリッシュ担当、アナリティクス担当、プレイヤー開発などが関わる。ローンチ後には、技術オペレーションチームとゲームデザインチームの協業により、ユーザー数の増加などに対応したという。ローンチまでの28日間、FIFA 19に関してやりとりしたメッセージの数は11万6000件とのことだ。
ローンチまでの間、合計32拠点にまたがる600人が活発にやりとりした。黄色は162人が属するゲームデザイン(Studio)チーム、緑はゲームエンジン、赤はパブリッシュ担当、オレンジは分析担当、ピンクはプレイヤー開発。
Slackのセールス&カスタマーサクセス担当SVPのRobert Frati氏はEAにおけるFIFA 19の成功を、「全員が一緒に働き、人気ゲームを構築し、出荷し、サポートするという同じ方向性に向かって協業した」結果と分析した。このような“仮想ビレッジ”はSlackなしにはあり得ないが、EAのParampalli氏は、人材の変化のトレンドからこのようなツールは今後ますます重要になると予想する。
「少し前まで開発は1箇所で行なわれていたが、才能ある人を一箇所に集めることはできない」とParampalli氏。素晴らしいゲームを作るためには、専門家集団がそれぞれの場所で作業することになる――分散した環境で効率よくコラボレーションすることが求められているというのだ。
コンシューマーアプリの使いやすさと、エンタープライズが要求するセキュリティや管理
そこでコラボレーション/コミュニケーションツールが必要だが、EAは2014年前まで、大手プラットフォームベンダーのパッケージソリューションを使っていたが、従業員の利用は進んでいなかった。そんな折、一部のユーザーが使っていたSlackに目が止まり、あっという間に全社導入となった。
Slackが広がった理由としてParampalli氏は、「使いやすさ」をあげ、「Slackはコンシューマーアプリの使いやすさにエンタープライズが要求するセキュリティや管理が加わっている」と評価した。
使いやすさが出発点だが、その後EAでは統合によりさまざまなツールとシームレスに連携できるようにした。Parampalli氏はこのような「統合のしやすさ」についても、Slackを評価した。すでにワークフローに統合した業務アプリの数は550以上にのぼるという。「アプリを自分たちのワークフローに統合しているので、すべての機能がシームレスに動く」とParampalli氏。別のプラットフォームにいかなければ特定の作業ができないという状況は従業員の生産性低下につながる。「ストレスのない作業環境を提供することは、ITの重要な責任だ」と続けた。
Parampalli氏が考える成功のポイントは、全員が同じツールを使い、さらにツールを使いやすくするために業務アプリを統合していったこと。「全員が同じツールを使うことは第一歩」とアドバイスした。
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