コミュニケーションツールの米Slackは4月25日・26日、米サンフランシスコで年次カンファレンス「Frontiers 2019」を開催した。会期中、新機能として「ワークフロービルダー」「共有チャンネル」などが発表され、ビジョンである“ビジネスをよりシンプルに、快適に、有意義に”に向けて一歩進めた。
新機能の共有チャンネルで他の組織ともリアルタイムにコミュニケーション
Slackは、共同創業者兼CEOのStewart Butterfield氏らがゲーム開発を行なっていた際にコミュニケーションツールとして開発されたという経緯を持つ。コミュニケーションツールを開発しようとして開発されたのではない“副産物”というユニークな出自を持つが、現在150カ国で使われており、デイリーアクティブユーザーは1000万人を誇るまでに発展した。つまり仕事の中心となることを目指したコラボレーションハブとしての機能強化、インテグレーションと呼ばれる他ツールとの統合がこのところのトレンドとなる。
25日のプロダクトキーノートでは、最高製品責任者のTamar Yehoshua氏が登場し、Slackの現状や方向性について話した。
Slackの大きな特徴としてチャンネルがある。チームや目的単位でチャンネルを作成して、メンバーがそこでやり取りをする仮想空間となるが、Slack社内ではこのチャンネルをさまざまな形で活用しているという。たとえば機能開発では、すべての機能に対してチャンネルが作成されており、開発者、プロダクトマネージャ、デザイナーなどが協業しているとのこと。公開されているので全社員が最新のモックアップや開発状況を知ることもできる。Twitterでユーザーが良くないフィードバックを書いているような場合は、“beeftweets”(beefはスラングでは苦情や不満を意味する)チャンネルでこの情報が共有され、製品チームが詳細解明に当たるという。非公開チャンネルの例としては、採用にあたって候補者のレジュメを関係者で共有して意見を共有するなどの使い方が紹介された。
Slackではカスタム絵文字がよく使われるが、Slack社内でも絵文字をよく使うという。リアク字により、誰が対応したのかを把握できるなど、メールや他のメッセージングツールと比べて効率が良い。「メールはその人の間のやりとりになるが、チャンネルにより透明性が得られる。メールの受信ボックスからチャンネルのシフトは、奥深いインパクトをもたらす」とYehoshua氏。これはSlackの重要な差別化とした。「87%のユーザーが、Slackによりコミュニケーションとコラボレーションが改善されたと回答している」という。
新機能の「共有チャンネル」は、そのチャンネルを社外の組織などと共有できる機能となる。契約先、取引先、あるいは顧客などと共有チャンネルを作成することで、コラボレーションに必要な情報を透明性のある形で共有できる。Slackは仕事の中心となることを目指しており、そのためには共有チャンネルのような仕組みは不可欠と言える。なお、これまでゲストとして招待する機能はあったが、「チームのコラボレーションには適していなかった」とSlack Platform担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャのBrian Elliott氏は違いを説明した。
すでにアーリーアダプターとして米国のエッジクラウドプラットフォーム事業者Fastlyの例が紹介された。Fastlyは大規模顧客のサポートで共有チャンネルを利用、サイバーマンデーなどの障害が発生しやすい時期にもリアルタイムでサポートすることで顧客のロイヤリティ指標のNPS(Net Promoter Score)スコアが改善されたという。
共有チャンネルはEnteprise Grid顧客向けに、2019年夏にベータ提供を開始する予定だ。
ワークフロービルダーが登場 Outlookとの連携も強化
2つ目の新機能となるワークフロービルダーは、コーディングなしに反復の多いワークフローを自動化するアプリを構築できるというもの。
Slackではこのワークフロービルダーを利用して、「新しい社員に歓迎メッセージを送る」「福利厚生など重要なドキュメントへのリンクを送る」「会社が支給するコンピュータの好みをきくフォームを送る」などのステップを自動化しているという。これにより、既存メンバーは手間が省け、新規メンバーは効率良く必要な情報を得られる。その他、製品のバグレポート、WiFiパスワード、ITヘルプデスクなどさまざまな用途があるとしている。
これまでも公開されているAPIを利用してカスタムアプリとして同様のことはできたが、開発者が必要だった。ワークフロービルダーでは作成ボタンを押して、トリガーを決め、それに対するステップを選択して公開するだけ。「コーディングは一切不要」という。
Yehoshua氏によると、有料のSlackユーザーの90%がSlack上に構築したアプリやインテグレーションを利用しているとのこと。ワークフロービルダーにより、「マーケティング、営業など、誰でもが共通したタスクを自動化できるワークフローやアプリケーションをSlack内に構築できる」とした。
ワークフローは2019年後半に提供を開始する予定となっている。
これらに加え、電子メール(GmailとMicrosoft Outlook)とカレンダーとの統合も紹介した。
すでに、先にリリースしたMicrosoft OutlookとGmailのアドインにより、受信ボックスにあるメールをSlackに直接インポートすることが可能になっている。メールとSlackの“ブリッジ(橋渡し)”として、Slackに招待済みだがまだ参加していない人に対して、自分の名前が言及されるとメールに通知を飛ばしたり、ダイレクトメッセージを送ることができるという機能を紹介した。カレンダーでも統合を強化し、自然言語処理を利用してメッセージ中に日付がわかるものがあれば、カレンダーでミーティングをスケジュールすることを提案するなども可能になるという。
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