スマホのようでスマホじゃない
けどやっぱりスマホなNUU Mobileの端末
今から約7年前、イーモバイルから不思議な端末が販売されたことを覚えている人はいるでしょうか? 製品名は「Pocket WiFi S」(S31HW)。つまりモバイルルーターですが、外観はどう見てもスマートフォンです。実はこれ、ファーウェイが海外ではIDEOSとして販売していたスマートフォンですが、日本ではスペックが低いことから「通話もできるWi-Fiルーター」として販売されたのです。
もちろんスマートフォンとして使うこともできます。メインで使うにはやや非力でしたが、ハイエンドモデルを持っている人ならセカンドマシンとして使え、しかもイーモバイルの安いデータ通信料金も利用できるという、一石二鳥な製品だったのです。価格が安かったことから一部で人気の製品になりました。
このように「見た目はスマホだけどスマホじゃない」製品を、海外のNUU Mobileが開発しています。NUU Mobileの「i2」は4型クラスの小型ディスプレーを搭載したスマートフォン。しかし世界中でデータ通信可能なバーチャルSIMを内蔵しており、グローバル対応のモバイルルーターとして販売される予定です。
NUU Mobileは日本にも一瞬だけ上陸し、1機種だけスマートフォンを販売したことがありましたが、今は撤退しています。低価格スマートフォンを武器としていますが、キャリア販売が主流の国では、SIMフリー機はよほど安いか、特徴がなければ売れません。日本投入モデルは特色がなかったこともあり、数ヵ月で消えてしまいました。
しかし、NUU Mobileにはスマートフォン以外の製品もあります。全世界で使えるグローバルモバイルルーター「Konnect i1」です。1日8ポンド定額(約1200円)、あるいは1GB12ポンド(約1750円)でどの国でも使えます。本体にはバーチャルSIMが内蔵されており、各国で最適な通信キャリアに接続します。
NUU MobileはこのKonnect i1の機能をスマートフォンに内蔵し、世界中で使えるグローバルスマートフォン「X5」を計画したことがあります。日本でMAYA SYSTEMが販売している「jetfone」と同じような製品です。しかし、このX5は発売はされませんでした。
NUU Mobileのような低価格端末を得意とするメーカーはいまや世界各国にあるため、NUU Mobileのビジネスも厳しいかもしれません。ルーターは結局Konnect i1だけを出してスマートフォン事業に特化するのか、と思っていたのですが、2019年2月に開催されたMWC19 Barcelonaでスマートフォンタイプのi2を参考展示。再びスマートフォンタイプのグローバルモバイルルーターの販売に挑戦するようです。
スペックの詳細は不明ですが、ルーター利用がメインのためCPUはエントリークラスのもの、メモリーも少ないでしょう。それでもセカンドマシンとして使えるなら便利な存在になりそう。
ただし、NUU Mobileの説明員によると、製品化の時はAndroidのメニューは隠され、モバイルルーターとしてのみ使えるようにする予定とのこと。たしかにルーター用途ならそのほうが使いやすいでしょうが、このi2はSIMスロットを1つ持っており、自分で買ったプリペイドSIMなどを挿すこともできます。
細かい設定などは直接Androidの設定画面を使ったほうが簡単にできます。i2がいつ発売になるかはわかりませんが、はたしてどのようなUIで出てくるのか気になるところ。またグローバルルーターなら日本でも十分売れるでしょうから、日本市場への再参入も希望したいものです。
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