マツダが製造から20万km走行での
トータルの環境負荷を研究
今、地球を苦しめているのが温室効果ガスだ。CO2などの温室効果ガスによって、地球は温暖化が進んでおり、気候がおかしくなってきているという。その対策として、クルマには温室効果ガスの排出低減が求められている。端的に言えば、世界中で燃費規制が強められているのは温室効果ガスの排出を少なくするのが目的だ。
そこで俄然、注目を高めたのが電気自動車である。なぜなら走行中に排気ガスを出さない。まったくのゼロ。「これほど地球に優しいクルマはない!」というのが電気自動車のセールス文句となっていた。
だが、これには落とし穴がある。どうやって発電するのかが抜けているのだ。火力発電であれば、発電時に温室効果ガスを発生させている。つまり、地球全体のスケールで考えれば、油田からタイヤを駆動するまでの間で、温室効果ガスの排出を考えなければいけない。これが「Well to Wheel(井戸からタイヤ)」という考えだ。一方、車両だけを考えるのが「Tank to Wheel(燃料タンクからタイヤ)」となる。
ただし、発電の方法にはさまざまなものがある。温室効果ガスを発生する火力発電にも、効率の良いモノも悪いものもある。温室効果ガス排出ゼロの太陽光や風力といった再生可能エネルギーもあるし、原子力発電もある。しかし、その組み合わせは国によって異なる。そのため、実際にエンジン車と電気自動車とでは、どちらが多くの温室効果ガスを排出しているのかがわかりづらかった。
そこで「実際に計算してみよう」としたのがマツダであった。
2019年3月5日から福岡で開催された「第14回 日本LCA(ライフサイクルアセスメント)学会研究発表会」において、マツダは「LCAによる内燃機関自動車とBEVのCO2排出量の算定」という研究を発表したのだ。
LCAとは、その製品の一生(ライフサイクル)を通しての環境負荷を評価するというもの。つまり、マツダの発表はクルマの製造から使用、廃棄に至るまでのCO2の排出量を、エンジン車と電気自動車のそれぞれで計算してしまおうというもの。学術的なアプローチから、エンジン車と電気自動車のどちらが、よりCO2の排出量が少ないかをはっきりさせてしまったのだ。
ちなみにこれまで、マツダはスカイアクティブDやG、スカイアクティブXなど、内燃機関の研究で大きな成果を上げてきた。一方、ハイブリッドに関しては消極的。つまり、内燃機関を推進する立場と目されてきた。しかし、昨年秋に「2020年に独自開発の電気自動車を市販する」と発表。つまり、今となってはエンジン車だけでなく電気自動車も手掛けるイーブンな立場で、エンジン車と電気自動車のCO2排出量を比較できるというわけだ。
また、研究の内容をより確かなものとすべく、マツダだけで行なうのではなく、LCA研究の大家でもある工学院大学の稲葉 敦教授との共同研究というスタイルで実施された。
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