自動運転レベル3の最大の課題は
いかに安全に運転手に切り替えるか
自動運転の進化のために必要な技術のひとつが「ドライバーモニタリングシステム」だ。名前の通りに、ドライバーをモニタリングするためのもので、特にレベル3の自動運転システムに欠かせない。
ちなみにレベル3の自動運転システムとは、「運転自動化システムが、すべての運転タスクを実行する。実行中であれば、ドライバーは何もしなくてよい。ただし、作動継続が難しくなったときは、ドライバーが交代する」というもの。システムが順調に働いていれば、ドライバーは何もしなくていい。周囲の監視もしなくていいのだ。ところが、突発的な状況変化などで、システムが「これ以降、自動での運転タスク実行が不可能」と判断すると、運転操作がドライバーに戻される。
ここで問題になるのがドライバーの状況だ。もしも、システムが運転をドライバーに戻そうとしていたときに、ドライバーが寝ていたら交代ができない。ドライバーが寝ている状態で運転操作を戻せば、すぐに交通事故になってしまう。また、寝ていなくても、食事をしているなど、急に運転操作に戻せないときもある。そのときはドライバーが用意できるまで、交代を待たなくてはならない。
そのためレベル3の自動運転システムでは、運転操作を交代できるかどうかをモニタリングする必要があるというわけだ。もしも寝ていたらどうやって起こすのか? また、交代までどれくらいの時間が必要なのか? といった点も現在は検討中だ。
そうしたドライバーのモニタリングシステムの基本となるのが顔認証の技術。すでにパソコンやスマホなどで広く採用されているので利用している人も多いだろう。日本車でいち早く採用したのが、昨年発売となったスバル「フォレスター」だ。
ドライバーを顔認証で判別し
眠気やよそ見を警告する
車中は暗くなることもあるため、赤外線のライトでドライバーを投射し、赤外線カメラで顔認証をする。スバルのシステムはドライバーの状況を検知するだけでなく、ドライバー自体を記憶することができるのが特徴。複数のドライバーの顔を覚えて、シートなどのセッティングを自動調整することと、ドライバーの眠気や集中力低下を検知して警告を表示する機能を備える。
現状では、ちょっとした便利機能にすぎないが、これがレベル3の自動運転システムを実用化するための先行開発&採用とも言えるもの。レベル3の自動運転システムの実用化に向けて、さらなる精度の向上のために、いち早く量産車へ採用することは、課題発見の大きな力になるはず。スバルの自動運転システムへの強い狙いが見える装備と言えるだろう。
筆者紹介:鈴木ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。
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