3ヵ月間の集中メンタリングでビジネスと知財戦略はどう変わったか? 特許庁IPAS Demo Day
スタートアップが陥りがちな8つの課題 日本初知財アクセラの成果
採択スタートアップ6社がIPASの支援内容を公開
最後のセッションでは、採択企業6社がそれぞれプログラムの成果を発表した。
株式会社カウリスは、ネットバンキングやクレジットカードの不正アクセス検知サービスを提供しているサイバーセキュリティーのスタートアップ。IDとパスワードだけでは本人特定が難しいが、指紋認証やSMS認証など追加認証が増えると、セキュリティコストが上がってしまう。そこで、危険度が高いユーザーだけを検知し、追加認証をするサービスをSaaSで提供している。IPASの成果としては、国内・海外の競合調査と、スーパー早期審査による特許を獲得できたとのこと。
ソナス株式会社は、世界で唯一の同時送信フラッティングを実現、IoT向けにルーティングしないマルチホップ省電力無線“UNISONet”を開発・提供している。UNISONetは、時刻同期、低消費電力、高応答性、高スループットといった特性を持ち、無線での高品質センシングが可能だ。IoT向け無線通信のグローバルスタンダードを目指しており、知財戦略が重要になる。IPASでは、ビジネスの各ステージで取るべき戦略のリストアップ、所有する発明がどこに該当するかの洗い出しから始め、今後の特許取得の優先順位やスケジュールを立てることのが成果だ。
MDR株式会社は、量子コンピューターのハードウェアとソフトウェアをフルスタックで開発している。量子コンピューターの実用化には、計算エラーを起こさない量子ビットの搭載が重要だ。MDRは、独自の低エラー化技術はあるものの、それを利用するビジネスモデルを持っていなかったのが、IPASに応募した動機だ。成果として、特許戦略の方針決定、特許出願に向けた知財のブラッシュアップ、ハードウェア開発におけるビジネスモデルの明確化できたことを挙げた。IPAS期間中に量子機械学習の新規構造についての特許を出願済み。さらに、1)エラー補正、2)エラー防止構造、3)エラー訂正効率化――の3つの技術について特許出願へ向けて準備を進めている。
DeepFlow株式会社は、製造業の製品設計期間を大幅に短縮する超大規模解析システムを開発・提供しているスタートアップ。この技術をクラウドサービス「VINO CLOUD」として4月から展開していく予定だ。IPASでは、事業戦略と知財戦略のブラッシュアップ、パートナーの紹介、どこを知財で守るべきかのアドバイスを受けた。IPASに参加してよかった点として、ネットワークが広がり、VCや企業、弁理士とも出会えたこと、IPAS自体がペースメーカーになったことを挙げた。
株式会社aceRNA Technologiesは、細胞の中にある“目的miRNA”の有無を確認して、細胞を光らせたり、殺したりする「RNAスイッチ」という技術を用いて、再生医療や創薬の課題を解決するスタートアップ。RNAスイッチを用いることで、新薬開発のコストを大幅に削減できるのが特徴で、研究用試薬として2019年6月に発売予定。創薬分野では現在、RNAスイッチのライブラリを使ったスクリーニング段階に入っており、2020年中に特許を出願する計画だ。IPASで、ビジネス戦略や今後の知財対応の方針について助言を受けたことで、ビジネスの方向性や知財戦略がより明確になった。
株式会社メトセラは、心不全向けの再生医療等製品を研究・開発する再生医療スタートアップ。心不全の原因が心臓の細胞の壊死によるものである場合、薬での治療は難しい。メトセラは、心筋細胞の増殖を促す特別な線維芽細胞群(VCF)を発見、これを活用した技術で心不全の治療を目指している。IPASへの応募理由は、自社の持つ知財を専門家の目で検証してもらうため。プログラムを通じて、新しい知財や研究の方向性が見えてきたのが成果だ。
来年度のIPASは、採択企業15社に規模を拡大し、4月から公募が開始される予定だ。知財戦略の構築/見直しを検討しているスタートアップ、スタートアップの事業に興味がある専門家はぜひ参加してみてはいかがだろうか。最新情報は、特許庁のスタートアップ向け知財情報ポータル「IP BASE」で発信している。会員登録するとメルマガで最新情報が届くので、興味のある人はぜひ登録しよう。
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