LINE株式会社が運営するライブ配信プラットフォーム「LINE LIVE」のサービスが開始されたのは2015年12月10日。
サービス開始初日にライブ配信された、豪華ゲストが生放送で出演するお忍びランチトーク番組「さしめし」(※LINE制作のトークバラエティ番組)の初回配信では、コメディアンの志村けん、お笑いコンビのタカアンドトシの二人が出演し、テレビのようなマスメディアで活躍する超有名な芸能人たちがネットのメディアへ登場することはまだ珍しかったその当時、多くの人たちの関心を集める大きなトピックにもなりました。
結果的に、LINE LIVEは鮮烈なデビューを初日から飾り、同時に、この出来事は、いまでもライブ配信界における大きな歴史のひとつにもなっている、とも言えるでしょう。
その後、LINE LIVEは2016年8月10日、一般ユーザーへプラットフォームを開放。特別な人しかできなかったLINE LIVEでのライブ配信が、私たちもスマートフォンからできるように変わります。
いまでは当たり前となっているスマートフォンの画面にフィットした縦長のライブ配信の仕組みを採用し、顔の動きや表情に合わせて変わる顔認識の「フェイス・ステッカー」、視聴者が(Facebookのいいね!に似た)「ハート」を送ったり、ギフトアイテムを送る「応援アイテム」の機能をこの時から備えていました。
さらに、LINEは「タテ型ドラマ」を制作配信するなど、LINE LIVEで縦長のライブ配信を推す一方で、横長のライブ配信も可能となり、スマホだけでなくゲーム実況配信を意識したPCからのライブ配信や、最近では、JOYSOUNDと提携してライブ配信をしながらカラオケを楽しむことができるカラオケ機能も実装され、いろんなジャンル(スタイル)のライブ配信がLINE LIVEで可能となりました。
でも、機能的に万能となってきた故なのか、私個人的にみると、逆に「LINEはLINE LIVEがどのような人(配信者)たちをプラットフォームへ呼び、特に推していきたい(増やしていきたい)のか」がこれまでの間、正直なところピンとこなかったのです。
そんななか、先日、LINEのLIVE事業を担当するLINEの中の人たち(エンターテイメントカンパニーLIVE事業部・遠藤孝暢氏/庄司菜々氏、マーケティングコミュニケーションセンターPR室・田中康太氏)にインタビューする機会を得ました。そこで、その疑問をそのまま投げかけてみることにしたのです。
中高生がスマホ1台で手軽にライブ配信できる世界へ
「ライブ配信することが本当に大好きな方、専門的なスタジオや機材を持つ製作会社やライブ配信を専門とする業者のようなプロの方も多くいます。こうした方たちは、ライブ配信することのハードルが少し高かったとしても(それを乗り越えて)ライブ配信をしてくれます。
でも、中高生を中心とした若い世代の一般の方たちにとってみると、ライブ配信をするまでの(機材をセットしたり、配信に必要な設定情報を取得したり、配信ソフトウェアを設定しなければならないような)ハードルがあるままでは、そもそも、ライブ配信の文化自体が普及していかないのではないでしょうか。
だから、LINEがやるべきことはスマホ。
つまり、LINE LIVEは配信することが本当に大好きな方やプロの方たちと同じように配信ソフトウェアや機材を利用しなくとも(その使い方を習得しなくとも)、中高生を中心とした若い世代の一般の方たちが、スマートフォン1台で手軽にライブ配信ができるプラットフォームであることに注力をしてきました。
すでにLINE LIVEはさまざまな機能を実装してきていますが、あくまでも“スマートフォンネイティブである”ことの軸は、ずらさないようにしています。
LINE LIVEを利用して頂いている配信者の方たち人からの意見を取り入れていきながら、ユーザーファーストで、LINE LIVEを気軽にもっと利用してもらえる環境を作る。きっと、ユーザー(配信者や視聴者)に対して、イノベイティブ(革新的・刷新的)で、私たちLINEならではの機能の展開ができると考えています。
まずはそこ(「中高生がスマホ1台で手軽にライブ配信できる世界」をLINEは固めていくべき)だと思っています。」(遠藤氏)
ライブ配信を“ニッチ”なものにしない
「そして、“ライブ配信をニッチなものにしない”ということ。(日本でサービス展開をしていたライブ配信のプラットフォーム)Ustreamが2016年1月に事実上の日本からのサービス撤退をしなければならなくなったことは、私たちは(どうしてそうなってしまったのかを)学ばなければいけません。
いまや、中華圏で人気を得て日本へサービス展開をしているスマホ主体の(ライブ配信や動画)サービスたちは、日本で先行していたプラットフォームたちを一瞬でひっくり返してしまうぐらいの勢いがあります。
まずは、ライブ配信自体をなくさない(ライブ配信をするためのハードルを低くし、若い世代の人たちにも広げていく)こと。そして、他のサービスとともにLINE LIVEも日本のライブ配信文化を盛り上げていくことが大切だと考えています。
これから超高速かつ大容量・多接続・超高信頼・低遅延の通信を実現する5Gの世界がやってきますし、動画とは違う、ライブ配信ならではの新しい文化もこれから生まれてくるはずです。
そこへたどり着く前に、日本で展開してきたプラットフォームたちが築き上げてきたこれまで日本のライブ配信文化をここで絶やしてしまってはいけないし、その火を消してしまうのはもったいないのではないでしょうか。火が付かずに、火が絶えてしまうのはとても悲しい。
だから、LINE(LINE LIVE)は、まず“中高生がスマホ1台で手軽にライブ配信できる世界”を作り出すことで日本のライブ配信文化に火を付けたい。そして、火を付けることさえ付けば、その後はさまざまな世代の人たちにも自然と広がっていくと考えています。」(遠藤氏)
LINE LIVEの独自性の今後に注目
LINE LIVEが一般ユーザーへのプラットフォーム解放をした2016年と、その翌年の2017年は個人の利用が主となるライブ配信プラットフォームが数多く登場しました。いまや個人向けのライブ配信サービスの全盛期となり、サービスの生き残りを賭けた戦国時代が続いています。
これらのプラットフォームの特徴はスマートフォン1台で手軽にライブ配信ができるようになったことと同時に、ギフティング(いわゆる投げ銭)の仕組みが取り入れ、クリエイターである配信者たちはその金額に大小があれど、マネタイズをすることができるプラットフォームがほとんど、となりました。
ただ、ほぼ横一線となったプラットフォームたちは、こうしたなかで、マネタイズができるだけでなく、さらなる独自性のあるプラットフォームとしての展開ができるかどうかも、これからのポイントであるように感じます。
マネタイズが可能となったライブ配信プラットフォームが多く生まれ、しのぎを削るこの状況で、LINE LIVEが今後どのような展開をしていくかも気になるところです。
この点については、次回以降の記事でさらに深掘りしていくことにしましょう。
ライブメディアクリエイター
ノダタケオ(Twitter:@noda)
ソーシャルメディアとライブ配信・動画メディアが専門のクリエイター。2010年よりスマホから業務機器(Tricasterなど)まで、さまざまな機材を活用したライブ配信とマルチカメラ収録現場をこなす。これらの経験に基づいた、ソーシャルメディアやライブ配信・動画メディアに関する執筆やコンサルティングなど、その活動は多岐にわたる。
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