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着実に売れる既定路線を選んだ新iPad miniとiPad Air:石川温氏寄稿

2019年03月19日 17時00分更新

やや首をかしげた今回の新製品発表
アップルはハードではなくソフトで稼ぐ方針か

 3月18日に、アップルが突然「iPad mini」と「iPad Air」の新製品を発表した。

 来週の3月25日にクパチーノの本社にあるスティーブ・ジョブズシアターでスペシャルイベントを開催する予定だったので、「まさか、このタイミングでハードを発表してしまうのか」というのが驚きであった。

 とはいうものの、発表された製品自体は、どちらかといえばマイナーアップデートといった感が否めない。「来週のスペシャルイベントではハードをいっしょに発表するよりも、サービスの発表に集中して話題を集めたいのだろう」というアップルの思惑が透けて見えてくる。

 今回の新製品発表は、誰もが見た瞬間に首をかしげたのではないか。

 ホームボタンはそのまま残り、充電端子もLightningのまま。デザイン的に目新しいところはない。チップセットがA12 Bionicに進化し、Apple Pencilに対応するようになったものの、使えるApple Pencilは初代のものだ。

 iPad Airは、どちらかと言えば10.5型の「iPad Pro」の焼き直しのようにも感じる。昨年秋に発売されたiPad Proが、ホームボタンが無くなり、Face ID対応で、フレームが狭くなり、USB Type-Cに変更になった。

iPad Air

 今まで「iPad Pro」を名乗っていた10.5型の居場所が無くなってしまったこともあり、iPad Airに名前を変えたというのが正しいのかもしれない(一部、スペックの変更はあるが)。

 iPad miniに関しても3年半ぶりの登場となるが、ペン入力対応、チップセットなど細かい点は進化しているものの、見た目の印象はほとんど従来と変わらない。アップルとしては「革新的な進化」というよりも「着実に売れる既定路線」を優先したのではないか。

iPad mini

 昨年に「MacBook Air」がブランド的に復活してきたあたりから「アップルは販売台数を獲りに行っているな」という空気がにじみ出てきている。

 AirはMacBookでもiPadでも、認知度があり一定のユーザー層がいるため、買い替え需要を狙ってきたのだろう。同様に、iPad miniに関しても「画面は小さい方が持ち運びしやすい」という理由で根強いファンがいるために、再投入となったようだ。

 アップルユーザーからすると、MacBook Airや今回のiPad mini、iPad Airは目新しさに欠け、正直言って「つまらない」とさえ感じてしまう。ただし、一方でケースメーカーなどからすれば、新たに型を起こして新製品を作らなくても対応できるため、願ってもないリニューアルではないか。

 また、ここ最近のアップルは、はっきりと「既存のユーザーが欲しがる名前、形で製品を出してくる」という戦略に舵を切ったように思う。となると、噂にはなったかと思えば、何度も立ち消えする「iPhone SE」の後継モデルもあながち、突然に発表・発売されてもおかしくない。

 今回の新製品を見ると、アップルをもってしても「タブレットで革新的な新製品を出し続けるのに限界がある」という事実を教えてくれたように感じる。何もアップルに限った話ではなく、どのメーカーからしても、タブレット開発の方向性に迷いが生じているのではないか。

 3月25日に、アップルは新サービスの発表会を開催する。あえて、スティーブ・ジョブズシアターで大々的に披露するというのも「これからのアップルはハードだけでなく、ソフトで稼ぐ」という明確な意思表示をするのだろう。


筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。

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