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「IPナレッジベース」コミュニティーイベント in 大阪レポート

スタートアップの成長に向けた知財利活用の課題と実例

2019年03月18日 07時00分更新

 2019年1月21日、特許庁とASCII STARTUPの共催で、スタートアップの知財戦略を支援するセミナーイベント『「IPナレッジベース」コミュニティーイベント in 大阪』を、大阪のインキュベーション施設「大阪イノベーションハブ」で開催した。このイベントは、海外企業に比べてその取り組みが遅れていると言われている知財の利活用のための情報提供と、企業の成長や資金調達に必要不可欠な知的財産権の取得に向けたスタートアップと知財専門家のマッチングを目的としている。

 経済産業省特許庁 企画調査課 ベンチャー支援班 課長補佐の貝沼憲司氏、特許庁のスタートアップ支援プログラムで知財メンターを担当しているiCraft法律事務所 弁護士・弁理士の内田誠氏に加え、実際にベンチャー企業で知財の利活用を推進する株式会社Be&Do 代表取締役/CEOの石見一女氏、あっと株式会社 代表取締役の武野團氏、株式会社Momo 代表取締役社長の大津真人氏らの登壇により開催されたイベントの内容を紹介する。

特許庁がスタートアップ向け知財関連支援を加速する

 第1部は2018年7月に特許庁で立ち上げられたベンチャー支援班の班長を担当している貝沼氏が、その支援策の概要を紹介した。

経済産業省特許庁 企画調査課 ベンチャー支援班 課長補佐 貝沼憲司氏

 起業して間もないスタートアップには、信用力も資金力もない。そのような状態で海外を含む他社と競っていくための武器が破壊的な技術やアイデア、すなわち知財であり、それだけに知的財産権の確保・保護には十分な注意を払う必要がある。

 米国のベンチャーの間では起業時から知財を確保することが常識となっており、ほとんどの企業が創業後10年以内に10件以上の特許を保有している。一方で日本のスタートアップ、特にIT系の企業では10年経過してもまったく特許を持っていないところも少なくない。特許庁が行なった 「スタートアップが直面する知的財産の課題および支援策の在り方に関する調査研究(2018年3月)」では、スタートアップが知的財産を経営戦略に組み込むタイミングが遅いことが課題に挙げられていた。

 スタートアップが立ち上げ期を乗り越え、成長期に向かおうとした時に初めて知財と向き合うのでは、せっかく作り上げてきた製品やノウハウが潰されてしまうリスクもある。そのような事態を避けるためにも、まず知財の重要性を知ってもらうことが重要。そのためのさまざまな施策に取り組んでいると貝沼氏は語る。

 たとえば2018年4月に、国内10社、海外8社のベンチャー企業の知財戦略事例をまとめた「一歩先行く国内外ベンチャー企業の知的財産戦略 事例集」(リンク先PDF)を公表した。そこでは、One Tap BUY、セブン・ドリーマーズ・ラボラトリー、FLOSFIAなどの例を挙げ、知財担当者などの社内体制や知財専門家(弁理士)の活用法を解説している。

 また、スタートアップにとって、特許審査にかかる時間・費用は非常に重い負担となっていた。たとえば従来特許を申請してから一次審査が完了するまでに約9.3ヵ月、最終処分が決まるまでには約14.1ヵ月がかかっていた。これをベンチャー企業に対しては、それぞれ約0.7ヵ月、約2.5ヵ月で完了する「スーパー早期審査」を2018年7月に開始した。

 費用の面でも、通常は約15万円(国内審査請求料・特許料)、約27万円(国際出願に係る手数料)を、一定の条件を満たすスタートアップに対しては、それぞれ約5万円、約9万円と、3分の1に軽減している。4月以降は自社がスタートアップに該当するかどうかも自己申告で済むようになる予定である。

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