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「CEOが語る知財」:メトセラ代表取締役Co-Founder&Co-CEO野上健一氏インタビュー

勝てる特許取得こそゴール メトセラを強化した知財アクセラレーション

2019年03月01日 07時00分更新

技術に理解のあるVC、弁理士との出会いが創業につながった

 共同創業者として野上氏は、知財に関してどのような方向性で取得を進めていくのか、戦略を研究者とともに考える役割も持っている。大元の発想、課題の発見は、岩宮氏を中心に研究開発のメンバーから上がってくる。だが、最初の特許出願時は、まずチームで知財制度そのものから学ぶ必要があったという。

 「研究は論文を書くのが目的。研究上のゴールと、特許を出すうえでのゴールは違う。最初のうちは頭を切り替えるのが非常に大変でした」(野上氏)

 研究では、明確な有意差が出なければならないが、知財は、一定の新規性・進歩性があれば権利化が可能だ。最初はベンチャーキャピタル(VC)が紹介した弁理士に入ってもらい、国内外の制度を学び、社内でも共有しながら、徐々に特許戦略を固めていった。

 とはいえ、特許の出願には、費用がかかる。創業前の大学発スタートアップで資金もない。いったいどのように工面したのか。

 「弊社の場合、投資に向けたデューディリジェンスの一環で特許の調査費用をVCが負担してくれたことで大変助かりました。特許調査だけでも相応の金額がかかっていたと思いますが、そこでいい結果が得られた。また、特許の明細書作成もVCが手伝ってくれたので、創業へ向かって行けました」

 メトセラのように、知財に理解あるVCを見つけることは、バイオなどの知財の有効性が高い産業領域においては必須といえるだろう。ここには「大学発新産業創出プログラム(START)」といった創業前の技術シーズを起業へつなげるプログラムをうまく活用してもいい。

 「僕らはたまたま運よく、基本特許を幅広く取れましたが、じつはボタンをひとつ掛け違えたらここまで取れなかったかもしれません。メトセラが取得している特許では、『線維芽細胞集団』がクレーム(編注:特許の請求項で定められる権利範囲)とされています。じつは当初、『細胞集団』という文言は入っていなかったのですが、弁理士の先生方のアドバイスでうまく仕上げていただけた。細胞集団としたことで、原案よりも強いクレームに仕上がりました」

 弁理士によっては、将来の権利強化・保護にそこまで気を配ることなく、そのまま進めてしまうこともあるという。当時を振り返った現在、理解ある弁理士を見極めるポイントを聞いてみた。

 「技術に対する理解度はもちろん、クライアントに対して厳しいことが言えるかどうか。耳あたりのよいことを言ってくれる弁理士さんとは顧問としての関係は続けやすいかもしれないが、厳しく突っ込んでくれる方は貴重です」と野上氏。

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