シフト制で24時間受け付けの復旧ラボ
──実際にどうやってデータ復旧を試みているのか、復旧工程をご紹介ください。
まずはRAIDシステムを丸ごとお送りいただいて、故障箇所の検証をします。移動させるのが難しい場合などは、弊社のエンジニアがお邪魔して実機を検証することになります。地方の方でも出張費などはいただかず、見積もりだけなら無料で対応させていただいています。
実はRAIDシステムの場合、RAIDを構築している筐体側の故障というケースが多いのです。この場合は同じ型番の筐体を調達して、ディスクを入れ替えれば問題なく動くことが多いです。
問題がハードディスク側にある場合は、物理的故障かどうかを確認します。論理故障の場合はデータだけ吸い出せば解決しますし、物理故障の場合でも、たとえばモーターの故障であれば、ファームウェアを書き換えることで直せるケースもあります。ディスクに傷がついてしまった場合は通常のメーカー修理サービスでは対応できないケースがほとんどだと思いますが、弊社は国内でほぼ唯一、傷のついたディスク面の修復技術を持っています。このため、深刻なディスク故障であっても対応できるのです。
ディスクが修復できたら、同じ型番のドライブにデータをコピーしてクローンディスクを作成します。そして最後にRAIDを再構築すれば完了です。
──火災や水没といった場合にも対応は可能なのでしょうか?
被害の程度にもよりますが、対応可能です。実際に火災や水没したドライブも修復してきました。
──特に対応が難しいケースというのはあるのでしょうか。
意外かもしれませんが、ディスク自体に傷がついてしまうケースでも、データ面よりも、ディスクのファームウェアが書き込まれている部分が傷ついてしまうほうが厄介なことがあります。
──復旧までにはどのくらいのコストと期間がかかるのでしょうか?
コストについてはケースバイケースということもあってお答えしにくいのですが、修復については論理的なトラブルであれば、ドライブが2本で組まれているRAID/NASの場合で当日から翌日、およそ48時間以内には修復完了できます。ドライブが4本組の場合は3~4日かかりますし、何十TBもあるようなシステムでは時間がかかりますが、約80%のお客様が48時間以内に復旧完了しています。
物理的な問題、特にディスクに傷がついてしまった場合は軽いケースでも1~2週間、中には数ヵ月かかった場合もあります。
──これは故障とはちょっとかけ離れてしまいますが、昨年から今年にかけて話題となったランサムウェアによる暗号化などの被害についても対応可能なのでしょうか?
ランサムウェアは、解除用ツールなどが公開されているケースが多いので、大抵の場合は対応可能です。実際ご相談いただいた際にツールの存在をお教えして、ご自分でも対応可能ということをお伝えするようにしています。
機密保持についても配慮
──もうひとつ気になるのは、復旧したデータの取り扱いについてです。企業の機密データなどを扱う場合は、受託前に機密保持契約などを結んだりするのでしょうか?
はい、実際にデータの復旧を行う前には、必ず機密保持契約等を結びます。
お客様からの依頼があれば特定のデータだけを復旧するということも可能ですが、基本的にデータの復旧はストレージ内の全データを対象とすることになります。最近は亡くなった方のドライブの中にあるデータがどうしても必要で、パスワードがかかっているので、これを救出してほしい、というような依頼をご遺族からいただくこともあります。
──データ復旧サービスにも多くの企業が参入していますが、デジタルデータリカバリーが競合他社と比べてここは自信がある、というところをお聞かせください。
やはり物理的な損傷については、日本では弊社が唯一といっていいレベルの修復技術を持っていますから、自信があります。100%というわけにはいかないかもしれませんが、ディスクのスクラッチ程度であれば、ほぼデータを救出できます。
また、他社が使用している復旧ツールよりも、弊社で使用しているツールのほうが高度に検証と修復できると自負しています。これは特定の機器のケースですが、QNAPの「TS-ECx80」というエンタープライズ向けのNASシリーズがあります。このシリーズではRAIDのディスクにデータを書き込む際に、通常のRAIDでは順番に書き込むところを、ランダムに書き込むようになっているため、通常のデータ復旧サービスが使っているツールではデータを取り出しできないケースがほとんどです。弊社のツールはQNAPのRAIDデータも読み出せますし、過去にサーバー管理の経験があるスタッフもおりますので、QNAPが用意しているコンソール上でデータを抽出するといったこともできます。
それから、見積もりの早さにも自信があります。ほとんどのケースでお見積もりは機器が到着して検証を始めてから1~2時間でお出ししますし、お見積もりよりも実際の損傷が深刻だった場合でも、お見積もり以上の金額はいただきません。これはディスクの状態や動作音などから判断できるトラブルの内容を細かくマニュアル化して、弊社のエンジニアであれば高精度で診断できるようにしているからです。他社では見積もりまでに数週間かかるケースもあるようですが、弊社ではそのようなことはありません。
──さまざまな経験のあるスタッフがいるからこその高い修復率なわけですね。実際、修復に際してはどのような研究などを行なっているのでしょうか。
先ほど挙げた修復ツールなどは自社開発ですが、お客様と同じ環境を整えて実機で検証を行うというのが大きな研究になっていると思います。また、修理に際して基本的にお客様と同じ機器を揃えているのですが、これは研究設備という扱いにしていますので、修理代金には反映されません。常に新しい機器も取り入れることでレベルアップを図っているわけです。実際、やったことのある機器を修復するよりも、初めて触る機器に取り組む方がワクワクします(笑)。
──実践で鍛えているということですね。最後に、RAIDを運用する上で気をつけた方がいいことなどがあれば教えてください。
RAIDの場合、RAID情報さえ正常であれば問題ないのですが、たとえばファームウェアを新しくしたら書き込みタイミングが微妙にずれてしまい、書き込む場所もズレてしまった、というようなこともあります。こうなると書き込みは正常に行われているのに、RAIDとしては壊れている状態で、再構築できなくなってしまいます。
基本中の基本ですが、使用するドライブは同じ種類・容量に統一して使用すること、バックアップをきちんと取って、定期的にRAIDに使うドライブのセットも更新することです。
中小企業や学校の教員室などでNASを共有しているところにお伺いしてみたところ、NASが誰でも触れる不安定な棚にポンと置いてある、というケースもしばしば見かけます。こうなるとNASが倒れたりしてディスクの物理障害などにつながりやすいですから、ルーターやハブ、サーバーなどを納めてカギをかけておけるサーバー収納ボックスの利用をお勧めしています。
また、調子がおかしいからと再起動したら直った、というケースも多いのですが、この時点で何か問題が起きているわけですから、そのうち修復が難しい状態で動かなくなる危険性が高いです。エラーが発生したら、すぐにご相談ください。診断だけでも構いません。ディスクのクローンさえ作れればほぼ100%修復が可能です。
実際に修復作業を行なっているラボを見学させていただいたが、常時10人前後が送付されてきたドライブを検証・分解し、パーツレベルでの交換と読み取り、クローンディスクの作成を黙々とこなしていた。話をうかがったところ、1日に受ける件数は予想よりもかなり多い。それだけトラブルで困っている人がいるというわけだが、企業の命運を左右しかねない重要データを一刻も早く修復するため、デジタルデータリカバリーでは365日・24時間体制で受け付けを行い、日々修復に当たっている。
困ってから頼りにする最後の砦
スマートフォンやタブレットの普及に代表されるように、社会のデジタル化は進み、会社内のペーパーレス化も盛んな昨今。業務上の資料をデータに置き換えるのは、利便性を高め、作業効率が上がる反面、データ管理部分が大きなトラブルに見舞われると、すべての業務に支障を来たす諸刃の剣となっている。
特にRAIDのトラブルのように、複雑な技術を使っている場合は、社内の人間だけではどうにもならないケースもしばしばだ。そんなときでも、信頼でき、頼りになる存在がいることを知っておこう。そうすることで、より安心してデジタル化の恩恵を享受できるのだ。
(提供:デジタルデータソリューション)
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