Mr.Children、椎名林檎、井上陽水、松任谷由実など大物アーティストが続々と登場
Mr.Children、椎名林檎、井上陽水など、これまで様子見だった大物アーティストのストリーミング配信も続々とスタートしていることが、それを物語っている。9月には、松任谷(荒井)由実の全424曲配信も主要なサービスで一斉にスタートした。彼女ほどのビッグネームと楽曲数であれば、今後継続的に累積されるストリーミング数は、膨大なものになるであろう。ステイクホルダーの面々は、新旧の楽曲から得られるサブスク系サービスによるストックビジネスの醍醐味を、堪能しているのではないだろうか。
そのような状況だけに、音楽を供給する側からすると、販売のチャンネルが増えるれば増えるほど、売上的には有利になる。チャンネルが増えたからといって提供コストが増加するわけではないからだ。サービス事業者のサーバーに置いておけば、チャリンチャリンと将来的な売上が見込める。従って、YouTube Musicのような有名サービスが新たにローンチすることは、基本的には歓迎なのだ。実際、筆者のレーベルの音源も、YouTube Musicに対し、喜んで追加の許諾を出した。
かつて筆者は、「サブスク系のストリーミングからの売上は、パッケージメディアやダウンロード販売として50分の1になる、いや、100分の1だ!」などと危機感を感じそのような記事を書いた。iTunesにおけるダウンロード販売の場合、150円の楽曲が売れると60〜80円の収入がある。一方、サービスの全売上を総ストリーミング数で按分し、それを各楽曲のストリーミング数に応じて分配するApple Musicの場合、1ストリーミングあたりの収入が0.4〜0.6円前後という、めまいすら覚える数字に愕然としたからだ。
だが、今から思えば、ダウンロードとストリーミングは、配信形態がまったく異なるだけに単純比較はできない。ユーザー目線で考えても、クリックで課金が発生するダウンロード配信と、課金抵抗感のない聴き放題では、音楽に対するアプローチもまったく異なる。いまさらながらに、当時の心痛が杞憂だったことに安堵する。
dヒッツやレコチョの利用率が低迷すればレーベルは潤う?
サブスク系のサービスにおける単価について、やじうま的余談を披露しよう。全売上を総ストリーミング数で按分するサブスク系のサービスでは、1ストリーミングあたりの単価について面白い現象が起きる。インプレス総合研究所が2018年3月に調査したサブスク系サービスの利用動向調査(https://www.impress.co.jp/newsrelease/pdf/20180330-01.pdf)がある。利用率に注目すると、Prime会員を有するAmazon系が47.6%とダントツで、Apple Musicの10.6%、LINE MUSICの8.1%と続く。
一方、350万契約(2017年3月)を誇るNTTドコモ系の、dヒッツが5.1%、レコチョクが1.3%と低迷している。Apple MusicやLINE MUSICよりはるかに多いユーザー数を擁するNTTドコモ系の利用率がなぜここまで低いのか。理由は、レ点営業にある。その多くは、NTTドコモのショップ店頭での抱き合わせ契約で獲得したと思われるユーザーだけに、皆その存在を忘れておりサービスの利用率が上がらないのだ。
一部のNTTドコモ系サービスの場合、そこまで単純ではない面もあるのだが、他のサービス同様、基本的には全売上を総ストリーミング数で按分する形になることから、売上が多く、総ストリーム数が少ない状態だと、1ストリームあたりの単価が上昇する。そうなると、ランキングの上位に位置するストリーム数の多い楽曲は、他のサービスと比較してかなりの利益を得ることになる。もしかしたらその単価は、ダウンロード販売以上に上昇する可能性もあるわけだ。メジャーレーベルからすると、NTTドコモ系サービス様様といったところであろう。
全米レコード協会の収益レポート(https://www.riaa.com/wp-content/uploads/2018/09/RIAA-Mid-Year-2018-Revenue-Report.pdf)によると、音楽産業の総収入の75%がストリーミングサービスから得ているという。日本においては、1,707億円のCD生産額に対し、ストリーミングからの売上は、約263億円(CD比約15%、広告収入を含む)とまだまだ物理メディアへの依存が高い(日本レコード協会の資料 https://www.riaj.or.jp/f/pdf/issue/industry/RIAJ2018.pdf より)のだが、CDが右肩下がりのトレンドにあることは事実だ。いつのの日か、ストリーミングの売上がCDを抜き去る日が来るのであろうか。
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