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立体的な音像に感激

PCオーディオならVECLOS、想像を超える音

2018年12月07日 12時00分更新

ステンレスボトルを思わせる「シリンダー形状のスピーカー」から雑味のない音

 まずはSSB-380Sのスペックをおさらいしてみる。本機の真空エンクロージャーは、見た目からしてまさにステンレスボトルの本体部分。ステンレスボトル同様、二重構造のシリンダー形状で、真空層の最薄部は1mm以下と、サーモスが魔法びん製造で長年培った金属プレス加工技術が活かされている。ステンレス自体の薄さも含めて、エンクロージャーの厚みを限りなく薄くすることで内部の容積を最大限に確保。一方で171mmの奥行きを確保したことで、コンパクトな外見ながらも低音がしっかりと響き、厚みが感じられる音作りに成功している。

 真空層は1000万分の1気圧以下の高真空状態になっており、外気との圧力差により内筒と外筒に高い張力が発生してエンクロージャーの剛性が高くなるとともに、優れたダンピング特性(制動力)を発揮するとのこと。

 この結果、スピーカー筐体が余計な振動、共振を引き起こさず、雑味のないクリアなサウンドを再現できるのだ。

Audirvana Plusで確認したところ、768kHz/32bit対応の機器として認識された。

 スピーカー部には、パイオニアの技術協力のもとで独自開発した、直径52mmのフルレンジユニットを採用している。振動板には軽量ながら高剛性のピュア・アルミを採用、広帯域再生技術「HSDOM」を採用することで金属振動板固有の音を抑え、伸びやかで透明感のある音を再生するとのこと。さらに、USB DAC部はDSD:11.2MHz、PCM:768kHz/32bitまで対応。現在出回っている音源であれば、ほぼすべてに対応できる仕様と言える。

Audirvana PlusでMQAファイルを再生中。右下を見ると「88.2kHz」のハイレゾ音源として出力されているのが分かる。

 MQAのデコードには対応していないが、Mac版に加え、最近Windows版も登場したAuridvana Plusを使えば、MQAファイルを96kHz/24bitのハイレゾ音源として再生できる。ソフトとの組み合わせで、環境を改善できる点はPC再生の強みだろう。

ニアフィールド再生ならではの明確な定位感

 では実際にパソコンにセットしてみよう。左右のスピーカーをつなぐケーブルと電源ケーブルは必要だが、パソコンとの接続はUSBケーブル1本なので、頻繁にノートパソコンを持ち運ぶユーザーにも便利だ。スピーカーは机にセットしておき、持ち運ぶ際にはケーブルを外し、帰ってきたらまた差すだけだ。なお、右スピーカーの重量は約907g、左スピーカーは約833gとそれほど重くはないので、置く位置を家の中で変えたいといった場合でも大きな負担にはならない。

 実際に音楽を鳴らしてみると、まずそのクリアなサウンドに驚かされる。

 ここは、真空二重構造による高い剛性と制振性が生きている部分で、雑味のないクリアで伸びやかな高音、たるみのない締まった低音が楽しめた。エンクロージャーのストロークが長いこともあり、低音もしっかり響く。

 特に、シンプルな女性ジャズボーカルの曲を聴くと、この効果がはっきりと体感できた。ブレス時のかすかな息つかい、ビブラート、ロングトーンのわずかな揺れなど、歌い手の些細な表現までもはっきりと聴き取ることができる。正直、小型のスピーカーでここまでピュアな音を聴かせてくれるとは思いもよらず、想像を超えた音に驚いた。

 そう感じる理由は、音の出るスピーカーとリスナーの距離が近い、ニアフィールドリスニングであることも関係している。イヤホンやヘッドホンの音がいいのは、鼓膜に近い位置で音が鳴るためだが、同じことはスピーカーにも言える。近距離で聴くことで、細かな情報量や低域のパワーが途中で失われず、ダイレクトに耳に届くのだ。

 一方でイヤホンやヘッドホンにないスピーカーの特徴、つまり定位感の良さも感じられた。具体的には、ボーカルがノートパソコンの画面の前で歌い、バックバンドはパソコンの後ろあたりで演奏しているように聞こえてくる。

 このバックバンドの定位はギターやベースの位置はもちろん、スネア、タム、ハイハットなどドラムセットの微妙な配置さえも把握できるほど、緻密だった。

 オーケストラの演奏でも、第一バイオリン、第二バイオリン、チェロ、トランペット、トロンボーンなど演奏者の位置が感じ取れる。まるで演奏しているホールの指揮台に立っているかのような臨場感。良い音楽をただ漫然と聴くだけでなく、その楽曲を録音した時の空気感を一緒に楽しむとともに、音を一つ一つ拾って新しい発見ができる、それがニアフィールドリスニングの醍醐味だ!

 SSB-380Sのスピーカーは、角度を0°から最大45°まで5°刻みで変えられるので、自分のデスク環境に合わせてリスニングポイントを調節できる。より厳密に調節することで、ニアフィールドリスニングがより圧倒的なリアリティを持ったものになると思う。

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