ライブをいっぱいやるには、この方法しか思いつかなかった
大谷:一応、みなさん会社に来るんですか?
シモセニアン:明大前にオフィスがあって、ヒラノとOKDはだいたいいますが、菊永と私は自宅から作業することも多いです。
大谷:やぼな話ですが、勤怠管理とかやってるんですか?
シモセニアン:はい。バンドメンバーじゃない社員が1人いて営業部長をやっているのですが、今は彼が仕事の確認や勤怠のチェックもしています。
大谷:そもそも、どういったお客様相手の商売なんですか?
シモセニアン:メインのお客様はいわゆる街のクリニックです。クリニックさんって、Webサイトに力を入れてるところが多いので、そういうクリニックさんのホームページの制作や運用をやっています。いわば何でも屋ですね。
お医者さんって個性的な方が多くて面白いんですよ。そういうお医者さんが本業に専念できるよう、ネットやIT系のところをやる感じです。年間で200社くらいの取引がありますが、あくまで自分たちでできる範囲です。
大谷:バンドメンバーが同じ会社にいるというメリットは? みなさんに聞いてみましょう。
菊永:確認したいことがすぐに確認できることですかね。
OKD:スケジュールは圧倒的に合わせやすいですね。
ひらの:会社でも、スタジオでも、けっこう顔を合わせているので、関係は濃くなっている気がしますね。でも、諸刃の剣かなー。顔合わせすぎという気もします(笑)。
大谷:最近、働き方改革界隈では、仕事とプライベートっていっしょに考えようみたいな話になっていて、ワークライフバランスじゃなくて、ワークライフシナジーとか、ワークライフインテグレーションとか言われますからね。
シモセニアン:へえー。確かに週何回かスタジオ入って、あとは知らないとか、誰かが曲を作って、それを単に練習して終わりとか、そういうことはないですね。お互い密に連携しているし、曲を作る経緯の過程と部分とかまで理解し合っている気がします。
大谷:じゃあ、新曲の話とかも会社でするんですね。
シモセニアン:いや。曲作ってる雰囲気って一緒にいる時間が長ければ嫌でも感じとれますし、会社ではどっちかというとツアーのスケジュールとか、宣伝をどうやっていこうとか、もっと運営的な話です。
大谷:練習終わったあとに、スタジオの待合室でやるような話ですね。
シモセニアン:そうそう。ああいった話がスタジオだけだと密にできないので、会社でやってます。実際に、多少時間がある人が割り食って、誰か一人が調整を請け負っているバンドってけっこうあるけど、僕はそういうのいやなんですよ。
大谷:じゃあ、バンドの中でもけっこう役割があるんですよね。
シモセニアン:菊永は集客ですね。やっぱりボーカルですし。OKDは会社では制作担当ですが、バンドのミュージックビデオも作ってもらっています。ヒラノはライブハウスとの調整。設備や条件が全部違うし、たとえば今回のツアーだと短期間に30箇所とかあってけっこう大変なんで、助かってます。
ひらの:得意のメールでやってます(笑)。
大谷:なるほどー。確かにライブハウスとの調整とか、事務所がやるようなことも、自分たちでやらないといけないですしね。
シモセニアン:20代の頃は事務所やレーベルに所属したいと思っていたんですが、われわれくらいの年齢になると、なかなか相手にされづらくなる。やっぱり若い方が良いと思うんですよ。この状況でバンド活動を積極的にやるなら、メンバー間の関係性を強化するしかないし、それなら同じ会社で働くのも効率的かなと。
変な話、うちの会社の売り上げを調整すれば、時間は捻出できます。僕らはとにかくライブをいっぱいやりたかったので、この方法しか思いつかなかったんですよ。仕事を上手くやりくりしているバンドマンも多いですけど、不器用でそれができないので。
大谷:とはいえ、IT系の仕事だからできるという点もありますよね。
シモセニアン:僕がこの会社立ち上げたとき、移動しながらでもできる仕事という点を重視しました。とにかく時間と場所に縛られずに、生活も好きなことも担保できるのはどうしたらよいかをすごく考えたんです。
その点、僕らのお客さんであるお医者さんって、ほとんどがクリニックのお昼休みにしか話を聞いていただけないので、ツアー中でも昼間に僕が車を運転すれば、彼らは仕事ができます。夜はヒラノが運転すれば、僕が仕事できる。また、多くのクリニックって水曜日や木曜日が休みなので、そういうときにも気軽にライブ入れたりできますし。
大谷:時間と場所に依存しないで仕事しているって、まさに最先端ですね。
シモセニアン:前の会社でWeb広告の事業をやっていときに、これだって思ったんです。あくまでバンド中心で、そのためにどうすべきかが僕の考え方です。ITによって、仕事やめなくても本気で音楽活動できるようになったので、ミュージシャンにとってはいい時代になったと思います。
大谷:「人生100年時代」とか言われて、これからの若者って、死ぬまで働かなければならないじゃないですか。だったら老後に好きなことをとっておくのではなく、若いときから仕事も好きなこともいっしょにやればいいし、実際にそういう時代になると思います。
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