11月7日・8日、サイボウズは年次イベントの「Cybozu Days 東京 2018」を開催している。初日のプロダクトキーノートに登壇したサイボウズの青野慶久社長は、サイボウズの近況とクラウドを中心に据えることで好調なプロダクトの最新動向を披露した。
3年目の幕張メッセ 今年のイメージは「サーカス」?
都内のホテルから幕張メッセに会場を移して3年目となる東京のCybozu Days。今回の会場のイメージは「サーカス」で、会場に入ると日常と遮断された不思議な空間に一気に引きずり込まれる。照明を極力落とした幕張メッセの広大なスペースは、まるで屋台のようにパートナー各社がブースを出し、さまざまなセッションが同時多発的に行なわれている。狭いスペースと廊下に人がひしめき、殺気立った雰囲気の都内のホテルとはまったく異なる、なんだかリラックスした空気が流れるITイベントだ。なかなか得がたい体験だ。
7日のプロダクトキーノートに登壇したサイボウズ 代表取締役社長の青野慶久氏は、今回の「楽しいは正義」というテーマについて、「日本どこに行っても働き方改革ブームだが、ちっとも楽しくない。単なる残業代削減になっている。せっかく働き方を見直すいい機会。僕たちが今考えなければいけないのは、どうして楽しく働けるかではないか?」と問いかける。
まずはサイボウズの近況。1997年設立以来、一貫してグループウェアの開発と販売を続けてきたサイボウズは、昨年に設立20周年を迎え、すでに従業員数も734名(派遣社員を含む)まで拡大した。国内外の拠点も増え、「最近はリモートワークも増え、イタリアのナポリから在宅勤務しているメンバーもいる」(青野氏)とのことだ。
「チームワークあふれる社会を作る」をミッションにグループウェアを手がけるサイボウズは、中小企業向けの「サイボウズ Office」、エンタープライズ向けの「Garoon」、業務アプリ構築クラウド「kintone」、メール共有システム「メールワイズ」の4つの製品を提供している。これらの製品はスモールビジネスから大企業まで業種・業界も問わずに幅広く導入されている。
たとえば昨年、kintone hiveグランプリに輝いた岩手県一関市の京屋染物店は、従業員から「社長にはついて行けません」と言われるブラックな企業だったが、蜂谷社長がビジネスを作り直し、kintoneでの情報共有を進めた結果、社員の働きがいと生産性の向上を両立させることに成功した。また、島根県益田市が地域ぐるみでkintoneを導入した事例。空き屋や獣害、自治会の運営などの情報をkintoneで共有することで、質の高い生活を維持するインフラを築いている。
こうしたグループウェア製品のグローバル展開も進めており、先週サンフランシスコでは「Kintone CONNECT」というイベントも開催された。また、ツールの導入のみならず、組織の運営から変えていくための「チームワーク総研」の事業も進めており、中小企業の経営者が集まる「チームワーク経営塾」もスタート。現在、0期生となる6社とチームワークを高めるための議論を行なっているという。
サイボウズ Office、Garoon、メールワイズ、それぞれの成長の背景とは?
近況に続いては、プロダクトの最新情報が披露された。まず主力製品のサイボウズ Officeだが、11年連続で中小企業向けグループウェアとしてシェア1位となり、導入社数も6万社を突破したという。
サイボウズ Officeは発売から20年以上経っても伸び続けるというロングセラー製品だが、クラウド版の提供で伸びは加速しているという。サーバー不要で5分で始められ、柔軟にユーザー数を調整でき、バージョンアップやバックアップで悩まないでいい。こうしたクラウドならではのメリットにより、現在は情報システムのない会社にもサイボウズ Officeが導入されるようになったという。「日本の中小企業の味方として、安心して使えるグループウェアを目指して参ります」と青野氏は語る。また、Cybozu Liveの終了に対応して創設された「チーム応援ライセンス」についても紹介され、300ユーザーで年額9900円という料金設定やフローレンスやビッグイシュー基金などNPOの事例もアピールされた。
続いてGaroon プロダクトマネージャーの池田陽介氏から、Garoonの最新動向について説明された。社内ポータルのカスタマイズや詳細なアクセス権限、多言語対応などエンタープライズ向けの機能を持つGaroonだが、実際のユーザーは50名程度から数万人規模まで幅広い。また、Cybozu.comのようなクラウドの他、既存のIaaS上のサーバー構築やLGWAN内での利用も可能。こちらも発売から16年を経て、4800社・200万人と導入企業を伸ばしており、現在は「ざんねんな情報共有ずかん」というテーマでユニークな広告展開をしている。
現在、注力しているのは他社サービスとの連携。たとえば、IBM Watsonを使った学習済みAIを提供するJBCCの「CLOUD AIライト」やL is Bの「direct」と連携することで、Garoon上の空き時間検索や予定の登録などをチャットから調べることができる。また、リモートワーク時に顔写真を撮ることで出社登録とメンタルヘルスを同時に行ったり、残業の把握や部門ごとの行動分析なども可能になる。グループウェアのデータを分析し、より業務に積極的に使っていこうという方向性だ。現在300社以上のパートナーが連携ソリューションを展開しているという。
クラウド版が好調で7500社まで導入を伸ばしている「メールワイズ」に関しても、営業本部 伊藤英高氏から最新動向が披露された。今まで1対1での利用が当たり前だったメールをチームで共有するメールだが、従来のサポート部門での利用のみならず、営業部門での利用も増えているという。実際、メールワイズを導入したサイボウズの営業部も、最初はメールの共有に抵抗感があったが、誰かが対応してくれるという安心感とおせっかい文化が徐々に芽生え、結果として「きちんと帰れる」「ちゃんと休める」といった効果が得られたという。
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