グーグルは2018年10月10日に米・ニューヨークで開催されたイベント「Made by Google 2018」で、Androidスマートフォン「Pixel 3」、2in1マシン「Pixel Slate」、ディスプレイ付きのスマートスピーカー「Google Home Hub」の3製品を発表しました(関連記事)。
どの製品も魅力的でつい買ってしまいそうになるものばかりですが、なかでも、個人的に気になるのはディスプレイ付きのスマートスピーカー「Google Home Hub」です。
Google Homeのようなスマートスピーカーは音声だけで操作が可能な「AI(人工知能)を搭載した据え置き型のスピーカー」ですが、これに一歩先へ進んだ、今回の「Google Home Hub」のようなディスプレイが付いたスマートスピーカーは「スマートディスプレイ」と呼ばれます。
スマートディスプレイも、スマートスピーカーと同じように「音声で操作」することが基本ですが、最も大きな違いは「音声で応答してくれる」だけでなく「画面でも応答してくれる」ことにあるように感じます。
いままでのスマートスピーカーは、料理のレシピを尋ねると、音声で教えてくれました。しかし、スマートディスプレイになれば「音声だけでなく、画面を表示して、テキストや画像、さらには動画でも手順を教えてくれる」ようになるかもしれません。
また、これまではスマートスピーカーでは音楽やラジオなど、音声のコンテンツしか流せませんでした。ところが、スマートディスプレイならリクエストに応じて自分に合った「YouTubeの動画を見せてくれる」なんてことも当たり前のようにできるようになるのでしょう。
スマートディスプレイによって「本格的な動画の時代」がやってくる
スマートディスプレイ「Google Home Hub」によって、リクエストに応じて自分に合ったYouTube上の動画やライブ配信を見せてくれるようになれば、テレビのように“ながら視聴”をすることが多くなると思います。
これによって、スマートフォンで動画を見るのが当たり前となった子どもたちだけでなく、大人たちも、昔BGM代わりにテレビを点けっぱなしで、ながら視聴していたときと同じように「動画やライブ配信をスマートディスプレイで見る(ながら視聴する)のが当たり前」の時代となると確信しています。
「子どもと暇な人が見るもの」を揶揄されるYouTubeは、動画やライブ配信を見るには視聴している人を「拘束」し、その分の時間を「消費」します。それゆえ、時間に余裕がある人(=子どもと暇な人)はYouTubeで動画やライブ配信を見るけれども、忙しい大人たちはこれまで動画やライブ配信を見なかった(見られない)人も多かったはずです。
YouTubeは、これまでパソコンやスマホを操作して能動的に(自分から進んで)動画を検索して視聴していました。しかし、これからは音声でスマートディスプレイへリクエストすると、動画を見せてくれるだけでなく、人工知能によって自分に合ったオススメ動画コンテンツを選んでくれます。
さらに、テレビを点けっぱなしでながら視聴していたのと同じように、スマートディスプレイがYouTubeの動画やライブ配信を連続再生して絶えず流し続けてくれるような動画視聴のスタイルへ変わることで、スマホの普及によって「これからは動画の時代」と単純に言われていた時代から、スマートディスプレイによって「本格的な動画の時代」へと変わるきっかけにもなるはずです。
いまさらスマホではなく、スマートディスプレイで動画を見るのか?
しかし、スマホで動画を見るのが既に当たり前となっている時代。「いまさらスマートディスプレイで動画を見る?」と考える人も多いはずです。正直、私自身もそのように感じていました。
ただし、この連載でも既に挙げているように、いまやスマホは「高価格化」の時代です。動画をスムーズに見るためにはある程度のスペックも必要でしょう。その一方で、スマートディスプレイはとても安価です。
今回、グーグルが発表したスマートディスプレイ「Google Home Hub」の価格は149ドル。1ドル113円で換算すると日本円で1万6837円です。動画を見るために高いスマホを買うより、スマートディスプレイのほうが圧倒的に安く手に入れることができます。
テレビを一家に一台ではなくいくつかの部屋に一台置くように、スマートディスプレイを一家に一台ではなく、それこそ「部屋ごとに一台」ずつ置き、どの部屋にいても、それぞれの部屋にあるスマートディスプレイで動画を見ることになるでしょう。もちろん、そのスマートディスプレイで家電を操作することも。
さらに言えば、スマホより少し大きなスマートディスプレイの画面で動画を視聴できるメリットもありますし、動画を見るために自分のスマホを専有されてしまうこともありません。
外にいても、家にいても「スマホで動画を見ていたスタイル」は、これからは、家へ帰ってきたら動画の続きはスマホではなくスマートディスプレイへスイッチ。動画のために専有されることがなくなったスマホは別のことに使うことができます。
つまり「スマートディスプレイでYouTubeの動画やライブ配信を見ながら、スマホでソーシャルメディアをチェックするという“ながら視聴”スタイル」へ変わる、というわけです。
それを裏付けるかのように、Google Home Hubには広告なしで、オリジナル作品の配信や音楽ストリーミングサービスを提供する有料サービス「YouTube Premium」の6ヵ月分が付いてきます。グーグルもやはり「スマートディスプレイで動画をテレビのように見るスタイル」をスマートディスプレイによって推しているように感じるのです。
日本にも1日でも早く発売されることに期待
既にメディアでも報じられているように、スマートディスプレイ「Google Home Hub」は10月22日に発売されるものの、発売国はアメリカ、イギリス、オーストラリアで、日本での発売はもう少し先の話となりました。
Google Home Hubが日本で発売されることに期待をしていた人たちは少し裏切られてしまう結果になりましたが、1日でも早く日本でも発売されて手に入れることができるようになることを期待したいところです。
今回のグーグルの「Google Home Hub」だけでなく、他のメーカーからもスマートディスプレイがこれから順次登場してくるはず。スマートディスプレイが日本でも広がっていけば、結果的に子どもたちだけでなく、大人たちも動画やライブ配信に触れる機会が多くなります。動画やライブ配信を視聴する人がさらに増えていくこれからの広がりに、大きな期待をしたいです。
ライブメディアクリエイター
ノダタケオ(Twitter:@noda)
ソーシャルメディアとライブ配信・動画メディアが専門のクリエイター。2010年よりスマホから業務機器(Tricasterなど)まで、さまざまな機材を活用したライブ配信とマルチカメラ収録現場をこなす。これらの経験に基づいた、ソーシャルメディアやライブ配信・動画メディアに関する執筆やコンサルティングなど、その活動は多岐にわたる。
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