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ブロックチェーンでおいしいビールを醸造する?

2018年10月12日 12時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

トラブルの際に威力を発揮する

 こうした管理のメリットは、品質に問題があった際に発揮されます。

 たとえばピザ屋で出したビールの味が変だとクレームが入った場合。その樽の原材料に至るまでを、ソフトウェアでふりかえることができます。そして、配送中の温度管理に問題があったことを突き止めます。これにより、課題を解決し、取り扱いをより注意するなどの改善ができるようになると言います。

 確かに「最高のビールを造る」のは職人技かもしれません。しかしその前後の材料や製品の流通で、その技を台無しにしてしまう可能性があります。さらに、職人技という属人性が高すぎる場合、その人がいなくなれば、ビールの味は変わります。ブロックチェーンの活用は、あらゆる変数を一定に保つ上で、重要な役割を担っていくことになるでしょう。

 ベイエリアはテクノロジーに限らず、スタートアップの宝庫で、ビールだけでなくコーヒーやチョコレートなどの食のスタートアップも盛んとみられてきました。しかしそれは3年ほど前までの話で、昨今はスモールビジネスが買収されたり、廃業されるなど壁にぶつかっています。

 あの有名なお店が、あのお気に入りのブランドが、おいしいレストランが、次々にビジネスを閉めている背景には、物価と賃金の上昇によって、小規模でビジネスを維持することができなくなったり、拡大しながら品質を諦める判断をしなければならなくなる、といった事情があるからです。

 今回のAlpha Acidの事例は、必ずしもブロックチェーンがそうしたスモールビジネスを助けるところまでは踏み込んでいないと思います。しかし、材料調達や配送などの効率化を、複数の醸造所で一緒に取り組むことは、スモールビジネスの共通部分の統合が進み、小さなビジネスを守る可能性も、開けるかもしれません。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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