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自覚症状がない緑内障の診断が手軽にできるヘッドマウント型視野計

2018年10月18日 07時00分更新

先端領域での国内スタートアップは数々ある。ライフサイエンスとテクノロジーが交差する現在において、未踏に挑む国内HealthTechスタートアップを紹介する。

検査時間の短縮など緑内障患者の検査負担を解決する
ヘッドマウント型視野計を提供

 厚生労働省研究班の調査によると、国内における失明原因の第1位を占めている「緑内障」。中高年に起こる代表的な病気のひとつであり、日本の社会において大きな問題として考えられている。

 緑内障は自覚症状がないため、約400万人近い潜在患者が国内に存在しているとされている。こういった人々のスクリーニングという新たな市場確立を目指すベンチャーが、クリュートメディカルシステムズ(CREWT)だ。

クリュートメディカルシステムズ(CREWT)

 CREWTは、医療分野、眼科で主に「緑内障」の診断に用いられる視野計に関する新しいコンセプトを持つ医療機器の開発・製造販売を手がける企業だ。2016年からは、ヘッドマウント型視野計「アイモ」を市場投入している。

 検査の方法および正確性は従来機器と同等だが、検査時間の短縮や、座ったままの楽な姿勢で受診可能であったり、パッチによる片眼遮蔽がないなど患者負担を軽減する。そもそも従来緑内障の検査をする場合、据え置き型機器で、検査場所には固定された暗室が必要だった。アイモは可搬型かつ暗室不要で場所を選ばず検査可能としている。これにより訪問診療、遠隔診療などにも使用できる。

 現時点の顧客は、眼科クリニックおよび大学病院・大手病院の眼科だ。病院側としては、暗室利用のために予約をとって時間を決めての検査に課題があるようだ。アイモを導入することで、予約をとる必要がなく、検査ニーズのあるときにすぐに対応できたり、待ち時間に検査を入れることによって回転数を上げるといったソリューションが提供可能となる。近い将来は、人間ドックや検診施設への導入もはかっていきたいという。

ヘッドマウント型視野計「アイモ」

 2018年8月には、アイモの新たな検査プログラムとしてコントラスト感度検査を搭載。 今後は、人間ドック・検診で使用可能な検査プログラムの開発や、視機能検査プログラムの開発を予定している。

 資本面では2018年2月には芙蓉総合リースとの業務提携を結び、いろいろな形態のファイナンススキームを計画中。さらに、米NASA・SANSチームよりアイモのデモ依頼を受けてデモンストレーションを実施も進めている。SANSチームとしては、将来的に国際宇宙ステーションで使用できる視野計を探しているとのことだ。

 代表取締役の江口哲也氏は、「緑内障は現時点では治療方法がなく、点眼処方などで進行を遅らせるために経過観察が必須となっている。眼科医は、検査結果を画像情報で経時配置して変化の差を視たり、結果数値の平均値の経時変化を観たりしながら経過を判断している。ここにビッグデータ解析によるAIが応用できる。またアイモは、可搬型としては世界初の視野計になり、今後、訪問診療に活用されるときにはデータをネット経由で送信し、遠隔地にてデータ蓄積、解析がなされるようになると想定している」と述べる。

本連載「ASCII HealthTech:Edge Startups」では、国内のアカデミアやライフサイエンス関連のスタートアップ・ベンチャー企業による記事情報提供を募集しています。詳しくはこちらのフォームまでご連絡ください。

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