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香港版iPhone XS Maxを実際に購入 DSDSだからこその注意点あり

2018年10月09日 22時30分更新

 香港でiPhone XS Maxを購入し、技適マークがないので現地であれこれ使ってみた。もちろん、お目当ては、物理的に2枚のプラスティックSIMカードが入るDSDS機能を試すためだ。DSDSは、Androidスマホではいまさら珍しくないが、iPhoneで使えるとなると話は別だ。

中国や香港で売られているバージョンに限られるものの、SIMフリーのAndroidスマホでは当たり前になったDSDSがついにiPhoneにも!

中国・香港版でのiPhone XS Max/XRでDSDS対応
1つのトレイで表裏にSIMが収納できる

 この秋、アップルは新型iPhoneを発売しているが、世界で売られているすべての、iPhone XS/XRでDSDSに対応している。もちろん、日本で売られているのもDSDS対応だ。しかし、それらはプラスティックSIMカードとeSIMとの組み合わせとなっている。実際、日本で販売されているiPhone XSを海外に持ち込むと、eSIMの存在が見えたりすることもある(プラスティックSIMカードのキャリアによって異なると思われる)。

 一方、中国、香港、マカオで販売されているiPhone XS Max、ならびに10月26日発売のiPhone XRは、プラスティックSIMカードが物理的に2枚刺さるDSDSだ。

トレイの表と裏でSIMを挿す

 実際にSIMカードトレイを見てみると、iPhone XSと比べてやや厚くなっている。これは、2枚のSIMカードを表裏で重ね合わせて収納する機構となっているからだ。そのため、香港版iPhone XS MaxのSIMカードトレイを日本で売られているiPhone XS Maxに挿入しようとしても刺さらない。SIMカードトレイの裏面にはバネがついており、SIMカードを装着しても落ちない機構となっている。

 実際に2枚のSIMカードを挿入すると、通信状態を選ぶメニューが出てくる。「主回線をデフォルト回線として使用」「副回線をデフォルト回線と使用」「副回線をモバイルデータ通信にのみ使用」といった具合だ。前者2つはどちらも電話やSMSを受けられるが、どちらをメインで通信するかを選ぶイメージだ。最後の選択肢は、海外旅行先などで、2番めのSIMをデータ通信のみに使うというパターンとなる。

回線の利用方法を3パターンから選ぶ。また画面内の表示を手動で変更できる

 前者2つの場合は、2つの電話番号で、電話の着信やSMSを受信することができる。その際、「主回線」「副回線」といった表示がされるので、どちらの番号で対応したかを確認できる。これは着信履歴などでもどちらの回線か確認可能だ。もちろん、電話の発信やSMS、iMessageの送信においても、2つの番号を選択できるようになっている。

 この「主回線」と「副回線」という表示は、名称を「個人」「仕事」「旅行」「モバイルデータ通信」という表示に切り替えることができる。また、自分で設定することも可能なので、キャリア名をつけてしまうのもいいだろう。

 実際に使ってみると、DSDSならではの注意点も存在する。

 たとえばiPhoneの場合、MVNOのSIMカードで使おうとすると、APNのプロファイルなどをダウンロードしてインストールしなければならないときがある。DSDS対応iPhone XS Maxの場合、プロファイルを設定することは可能だが、2枚のSIMカードに適用されてしまうため、場合によっては、うまく通信ができなくなる可能性を秘めている。

 ちなみに主回線にキャリアのSIMカード、副回線にAPNプロファイルが提供されているSIMカードを入れた状態で通信したが、主回線/副回線とも問題なく通信ができた。

 今回は問題なく通信ができたが、APNプロファイルによっては何かの影響が出る恐れがあるという点だけは注意しておこう。ちなみに、APNプロファイルを必要としない大手キャリア系列同士の組み合わせであれば問題ないはずだ。

DSDVではなく、DSDSなので制限が生じる可能性も

 一方、ちょっと厄介そうなのが、VoLTEだ。

 DSDSであるため、どちらか片方しかデータ通信はできない。そのため、仮に「auのSIMカード」と「NTTドコモやソフトバンクのSIMカード」という組み合わせで、NTTドコモやソフトバンクのSIMカードをデータ専用として使う場合、au側はモバイルデータ通信をしない状態になってしまう可能性が高い。このときにauのVoLTE音声通話はデータ通信が流れない状態となるため、「圏外」と表示されてしまい、まったく使えなくなってしまう恐れがあるのだ。

 VoLTEは、LTEのデータ通信で音声通話をするために仕方ない。

 将来的に、アップデートされることにより、DSDSからDSDV(デュアルSIM、デュアルVoLTE)になれば、解消されると思われるが、注意が必要だ。海外に渡航した際は、VoLTEの音声通話でなくなるので問題なく使用できるだろう。また、2番めのSIMカードをデータ専用にしなければ、auのVoLTEも問題なく利用可能なはずだ。もちろん、NTTドコモとソフトバンクは3Gでの音声通話もできるので問題は発生しなさそうだ。

 一方、Apple Payに関しては、モバイルSuica、iD、QUICPayともにインストールが可能だ。このあたりは日本で売られているiPhoneと同等である。

 データ通信に関しては、ちょっとクセがあるが、2つの電話番号を持てて、同時に着信、発信できるというのはかなり便利だ。今後、日本でもキャリアがeSIMに対応し、iPhoneでDSDSが使えるようになると、iPhoneの利便性はさらに向上することだろう。


筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。

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