米国版のiPhone XSでは、米国で始まる
電波が飛びやすい600MHz帯のバンド71に対応
iPhone XSのiPhone XRに対するメリットは、有機ELディスプレイで解像度がより高いこと、6.5インチという大画面、もしくはもう少しコンパクトな5.8インチが選べること、望遠カメラがあること、そして4x4 MIMOをサポートしギガビットLTEに対応する事です。
そのため、iPhone XSにはフレームの上下に新たなアンテナラインが追加され、底面のスピーカーとマイクの穴は非対称となってしまいました。これもギガのためです。
しかしスペック表で新しい項目として、バンド71への対応があります。これはT-Mobileがオークションで競り落とした600MHzの新しいLTE向け帯域のことです(https://www.t-mobile.com/news/600-mhz-update-puerto-rico)。
T-Mobileのウェブサイトでも、iPhone XSシリーズが600MHz帯域をサポートしていることが確認できます(https://www.t-mobile.com/coverage/coverage-phones-700)。
同社では700MHz帯域とともに、これを「Extended Range LTE」と呼んでいます。日本では700MHz帯域のLTEバンド28が用いられていますが、バンド71はさらに低い周波数帯域になります。
T-MobileはSprintを抜いて米3位の携帯電話ネットワークに成長し、メインブランドは月額料金制(Post-pay)のユーザーを集めながら、それまで強かったプリペイドを「○○ by T-Mobile」というブランドのMVNOで展開し、勢力を拡大しています。
しかし依然としてVerizon、AT&Tではエリアや加入者数、投資能力の面で遅れを取っており、より遠くまで届く600MHz帯域の活用は、T-Mobileにとって非常に重要な武器になるのです。
600MHzの基地局は5Gに対応できる?
T-Mobileが今投資している600MHzのエリアは、現在の4G LTEのサービス充実だけでなく、5Gの展開にも活用されるそうです。T-Mobileによると、モバイル環境での5Gを2019年からスタートするそうです。
これまで5Gはより高い周波数を活用して、これまでの10倍以上の高速通信を実現しようというアイディアでした。しかし超高速通信が可能なエリアは限られ、これまでのLTE通信とは異なる使い勝手が想定されています。
T-Mobileもこの高周波数帯の5Gに取り組んでいます。その一方で、新たに獲得した600MHz帯域でも5G通信を展開することで、限られた場所以外でも、これまでのLTEより高速な通信を米国の各所のより広いエリアで実現しようとしています。
またT-Mobileは第4位のSprintとの合併を目指しています。iPhoneの大前提となる米国の通信業界の変化は、Appleが今後、iPhoneにおいてどんな通信機能とサービスを盛りこんでいくのかを測る上でも重要な視点となっているのです。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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