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実のある働き方改革を実現するヒント満載の1万字対談

業務ハッカーはなぜ必要? 沢渡あまね氏とソニックガーデンが語り合う

業務ハッカーは改善意欲だけでなく、クラウドの利用が前提

大谷:業務ハックってやはりエンジニアっぽい響きですね。高木さんの師匠筋にあたる藤原さんとしてはどう定義していますか?

藤原:そうですね。特性として改善意欲があるというのと、なにしろプログラマーということですね。業務ハッカーは改善意欲だけではなく、プログラムも同時に扱うというところが特徴的です。

ソニックガーデン 副社長 藤原士朗氏

ソニックガーデンって全員プログラマーの会社です。だから、創業当初から社長の倉貫とプログラマーがやらないことは、副社長である私のところに全部落ちてきます。かっこよく言えば経営企画室なんですが、結局は総務、人事、経理、営業も含めた何でも屋。しかも対外的に「全員プログラマーの会社」と言っているので、制約としてパートさんとか入れられない(笑)。さらに全員リモートワークなので、データを全部クラウドに挙げ、セルフサービス化する必要がありました。

大谷:全員プログラマーとか、全員リモートワークといった点は、ソニックガーデンがややキワモノ扱いされる所以ですよね(笑)。ほかのスタートアップでも確かに藤原さんのような役割の人はいるのですが、やっぱり人を入れたり、役割で組織が分割しますからね。

藤原:そうなんです。うちの場合、パートさんや総務専任の方を雇用しないことが前提条件なので、ITを使って、業務ハックするしかなかったんですよね。

たとえば、経費精算の場合、今までは社員の領収書を僕が入力して税理士さんに渡していたのですが、やっぱり面倒くさすぎる。だから、領収書を自分自身で撮影して、登録して、自分で税理士とやり取りしてもらうようなシステムにしました。いま、目の前でまさに倉貫が領収書を撮影している気がするんですけど(笑)、あれを当初は自分がやっていたんです。必要に迫られてこうした業務ハックをしてきたのですが、今ではリモートで間接業務が回るようになりました。

沢渡:なるほど。よく日本のバックオフィスって生産性が低いと言われますけど、自分の中での結論としては、あれってエンジニアを活用できないからなんですよね。実際、10人の事務職が業務改善しましょうという話になっても、小手先の技に行きがち。押印処理は要らないだろうみたいなワークフローの見直しじゃなく、Excelのショートカットを覚えるとか、単なる時短の発想から抜け出せないんですよね。

でも、こういう組織に1人エンジニアを入れてみたところ、3時間の作業が10秒に短縮されたという事例を見ました。要らない処理を削って、自動化を進めた結果、たった10秒ですよ(笑)。これがエンジニアの価値だと思うんです。私もインフラ系のエンジニア組織を束ねた経験ありますが、やはり現場では工夫して楽しようぜ、自動化しようぜという発想になるんですよね。こういうエンジニアと事務職がお互いをリスペクトして価値を出していくのが、これからすごく重要になると思います。

大谷:2年前にサイボウズのイベントで倉貫さんや藤原さんと業務ハッカーの話をしましたが、既存のコンサルティングとどこが違うか質問したところ、やはりITを使いこなせる資質が必要と言っていましたね。システムがあること前提、もっと言うとクラウドがあること前提だと。

藤原:紙とかExcelのツラいところは、書いたり、記録した後に、別途報告や共有の作業が発生すること。メールで来た内容を印刷して、FAXで送って、それをPCで打ち直すみたいな無駄は今でもけっこう多い。

これに対して、クラウドでは記録と共有が同時に行なえます。会議録にしろ、報告書にしろ、短期的に見れば記録するという時間自体は短くならないのですが、共有するという後工程が早くなるし、検索や再利用も楽になります。クラウドなら長期的には業務が効率化されます。テクノロジー前提に立って、業務全体の流れを見ながら、改善を進めていくのが、業務ハッカーの役割だと捉えています。

業務ハック勉強会を始めたきっかけ

大谷:高木さんは業務ハック勉強会を主催していますが、そこに至る経緯を教えてください。

高木:私が関わった会社で、社内の業務ハッカーとして業務改善を進めていた方がいらっしゃいました。その方はkintoneも使えるし、Excelのマクロも組めたので、外部から私がいろいろやらなくても自分でいろいろできます。でも、その人はなんでも屋さんとして1人で社内業務ハッカーをやっていたので、悩みを相談できる人がいなかった。自分でいろいろ調べてやっているけど、本当にこれでいいのか?という不安と戦っている。その時の私の役割はそんな彼女の相談相手だったと思います。

「孤独な業務ハッカーが世の中にいっぱいいるんだろうなと」(高木さん)

そんな経験を経て、こういう孤独な業務ハッカーが世の中にはいっぱいいるんだろうなと感じました。こういった方のための勉強会を開いて、外で学んだことを中に持ち込めるようにする必要があるのではないかと思い、開いたのが業務ハック勉強会です。、知見を共有するという目的もあるのですが、孤独な業務ハッカーが悩みを相談できる場所を作り、勉強会で情報やノウハウを取り入れるというエンジニア文化を業務改善の分野に広げていくという目的も大きかったです。

大谷:なるほど。エンジニアの素晴らしいのは、システムなり、業務なりをハックしていくマインド、そして自身でも学びつつ、知見を外にも共有していくカルチャーですからね。

沢渡:DevOpsもシステムのフレームワークと思われがちですが、実際は開発と運用が一体になってビジネスに価値を出していくムーブメントであり、まさにカルチャーです。非ITの人たちでも通じるような協調ワークやチームビルディング、アイスブレイクなど、さまざまなアイデアにあふれているんですよね。最近ではアジャイル開発やリーンスタートアップの手法を学んだり、実践するような自治体だってありますからね。

大谷:業務ハック勉強会にはどんな方が来ているんでしょうか?

高木:いろいろな方が来ています。今までと違うやり方を知りたいというExcel職人のような方も来ますし、今までセキュリティ業務だけやっていたんだけど、実際は社内の困りごとを解決したいという社内SEの方とか勉強会ではお会いします。抽象的な言い方ですが、基本的には「ボランティア精神の高い」「面倒見がいい人」が多い印象です。

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